はじめに

SiC半導体を使用するアプリケーションは2000年代に始まり、PFC(力率改善)アプリケーションにSiC JBSダイオードが採用されました。その後、PV(太陽光発電)業界でSiCダイオードとFETが使用されました。今後は、EV車載充電器とDC-DCコンバーターに関連するアプリケーションの最近の急増がSiC半導体の成長を牽引していくものと思われます。 EVインバーター向けの650Vデバイス、およびサーバー電源と5Gテレコム整流器への早期の採用は、SiC半導体の今後の急成長を確約するものです。この記事では、現在のSiテクノロジーに対する急成長が見込まれるSiC半導体の利点について述べます。

SiC半導体の利点

IGBTよりもSiC FETを使用する利点は十分に実証されています。 4H-SiCのより広いバンドギャップにより、ユニポーラシリコンデバイスよりも100分の1程度低い抵抗で電圧遮断層を形成することができます。また、SiC半導体はシリコン半導体の3倍の熱伝導率を持っています。SiC MOSFETは、プレーナ構造とトレンチ構造の両方で650〜1700Vで利用できるように性能が向上してきましたが、依然としてSiC-MOSFETチャネルの移動度が不十分です。

それに対して、SiC JFETベースのカスコードFETは、SiC JFETチャネルのバルク移動度が高いため、チップサイズが小さくなるようなSiC-JFETが採用されています。この記事の残りの部分では、区別する必要がない限り、SiCトランジスターをSiC FETと呼びます。これは、ほとんどの場合、SiCトランジスターとSiC FETが、互換的に使用できるためです。 

1200V以上では、IGBTがMOSFETに取って代わり、高負荷電流での導通損失が低くなりますが、導電度変調の結果、導通損失が低いですがスイッチング損失が悪化します。 IGBTは通常、逆並列高速リカバリーP-i-Nダイオードと共に使用されます。これは、ダイオードがオフ状態の電圧に遷移する前に、ダイオードに蓄積された電荷を除去する必要があるためです。このこともスイッチング損失に影響を与えます。

図1aは、UnitedSiC FETのオン状態特性を標準的な200A、1200V IGBTと比較しています。 200A未満のすべての動作条件で、特にニー電圧がない場合、SiC半導体を使用すると導通損失を低減することができます。

図1bは、Si FRD (First Recovery Diode)、UnitedSiC FET、およびSiC MOSFETでSi FRDの逆並列で使用しない場合またはSiC半導体のショットキーダイオードを使用しない場合の第3象限特性を比較しています。SiC MOSFETに逆並列ダイオードまたはSiCショットキーダイオードが集積されていない場合、SiC MOSFETの導通損失は、IGBTと共に一般的に使用されるFRDの導通損失よりもはるかに高くなります。 SiC MOSFETとCascode FETはどちらも、低QRRで動作します(多くの場合、Si FRDよりも10倍低い)。したがって、SiC FETはIGBTに比べてはるかに速くスイッチングできますが、過度第3象限の導通損失を回避するには、同期整流である事が不可欠です。

第1象限伝導におけるSiC FETとIGBTのオン状態の電圧降下
図1a:第1象限伝導におけるSiC FETとIGBTのオン状態の電圧降下
SiFRD、UnitedSiC FET、および典型的なSiC MOSFETで使用されるSi FRDの逆並列ショットキーダイオードを使用しない場合の典型的な第3象限導通特性
図1b:SiFRD、UnitedSiC FET、および典型的なSiC MOSFETで使用されるSi FRDの逆並列ショットキーダイオードを使用しない場合の典型的な第3象限導通特性


SiCダイオードは、PFC回路とブーストコンバーターに広く使われています。これは、400Vのバス電圧での650VスーパージャンクションMOSFETでも、600-1500Vのバス電圧での高速IGBTでも、SiCダイオードは蓄積された電荷がないため、Low側FETのEON損失が大幅に減少するためです。実際、SiC JBSダイオードを使用する利点は、電圧とともに増加します。メインスイッチングデバイスとしてSiC FETを使用しなくても、これらのダイオードは効率の向上と動作周波数の向上に貢献します。これらの製品の市場規模は、現在でも100億円(1億ドル)を超えます。

ハードスイッチ回路におけるSiC半導体の利点

表1は、ハードスイッチングアプリケーションのスイッチテクノロジーを評価するときに必要なデータシートパラメーターを示しています。重要な点をいくつか見てみましょう。

サーバー電源ですが、400Vのバス電圧で動作するテレコム整流器と車載充電器、トーテムポールPFCトポロジー、または3相アクティブフロントエンド整流器が、電力レベルに応じて使用されます。電力密度を改善してBOMコストを削減するには、インダクターのサイズを小さくするために、より高いスイッチング周波数が必要です。High側FETのEON損失が大きいと、スーパージャンクションFETを連続導通モード(CCM)で使うことはできません。

過度の損失と回復特性のために、QRRを減少させるため耐圧を下げた場合、寿命を悪化させます。United SIC社のSiC FETソリューションは、優れた低QRR特性をもつダイオードを使用しており、その結果、EON損失が大幅に削減されます。 TO247-4L、D2PAK-7L、DFN8x8などのケルビンソースパッケージで提供されており、設計者はシリコンで得られるよりも2〜3倍高いハードスイッチング周波数を実現できます。また、すべてのUnited SiC社のSiC FET製品は、オプションで低いTCR(抵抗温度係数)特性をもつ製品を提供しています。低TCRの製品使うと、温度によるオン抵抗の増加が少なくなります。

ハードスイッチングのテクノロジーを評価するのに役立つ主なパラメータ
表1:ハードスイッチングのテクノロジーを評価するのに役立つ主なパラメータ

ソフトスイッチ回路におけるSiC半導体の利点

サーバーの電源とテレコム整流器、及びEV車載充電器とDC-DCコンバーターにおいては、DC-DC変換用の位相シフト・フルブリッジとLLC回路が広く使われています。一般にワイドバンドギャップスイッチの価値、特にこれらのアプリケーションにおけるSiCベースのFETの価値は、いくつかの主要な特性に由来します。

第1に、SiC FETはCossが低いため、ターンオン時に高速のVDS遷移が可能になり、高いスイッチング周波数または広い入力/出力電圧範囲を使用できるようになります。

第2に、ソフトスイッチングによるターンオフ損失は、測定されたハードスイッチングターンオフエネルギーから出力容量に保存されたエネルギーを差し引いたものとして推定でき、EOFF-EOSSとして表されます。また、図2に示すように、UnitedSiC社のUF3C120040K4SなどのSiC FETのターンオフエネルギーは非常に低くなります。

第3に、低いRDS(ON)値と高電圧定格を組み合わせることにより、800VでDC-DCコンバーターの動作が可能になります。

第4に、SiC FETは、100〜200 V / nsの範囲で非常に高い電圧スルーレートと、小さい逆回復電荷特性を備えています。これにより、キャリアの寿命を短くすることなく、dv / dtに起因する障害が実質的に解消されます。

最後に、特にUnitedSiC社のFETは、ボディーダイオードの電圧降下が通常1.5Vで、SiC MOSFETおよびGaN HEMTの3〜5 Vと比較して大変低い値になっています。周波数が上昇すると、ボディーダイオードが導通する時間の割合が増加し、デッドタイム中のダイオードの導通損失がさらに大きくなります。

さまざまなSiC FETオプションの実効ターンオフ損失(EOFF – EOSS)。
図2:さまざまなSiC FETオプションの実効ターンオフ損失(EOFF – EOSS)。


50A、800Vで100µJの損失は、デバイスがその電流でPSFBにおいてで使用された場合、100kHzで10Wのターンオフスイッチング損失を発生することを意味します。小電流では、これらの低損失により最大500kHzの周波数が可能になります

EVトラクションインバーターにおけるSiC半導体の利点

ハードスイッチングにおいてUnitedSiC社のSiC FETの損失が少ないことは、EVトラクションインバーターに利点をもたらします。また、モータードライブの動作周波数が低い場合には、電動導通損失が少ないことが利点になります。

これは、図1aと1bにすでに示されています。これは、単位チップ面積あたりの抵抗が低いためであり、IGBTとは異なり、順方向の導通でのニー電圧の欠如に加えて、同期整流による逆導通の可能性も起因しています。 EVアプリケーションに必要なスイッチの重要な特性は、さまざまなタイプの短絡故障に耐えることです。これには、スイッチが全体のバス電圧(400Vの場合には650Vデバイス、800Vの場合には1200Vデバイス)に耐え、同時に流れる大電流に耐える事です。この大電流は、ゲートが完全にオンのときに流れますが、これはブランキング時間の0.5〜2µs後、2-6µsの間に流れる大飽和電流を、非飽和検出回路が短絡状態を見つけるまで流す必要があります。

次に、ドライバーはスイッチを速やかにオフにしようとします。この間、スイッチの温度上昇は数µsで300〜500°Cになる可能性がありますが、それでも安全にオフにする必要があります。さらに、スイッチはデバイスパラメーターをシフトさせることなく、最大100または1000のこのようなイベントを処理する必要があります。 この特性はIGBTでは満たされますが、SiC MOSFETとGaN HEMTでは同じレベルの堅牢性を満たすのに苦労しています。 UnitedSiC社のカスコードFETは、チップサイズまたはオン抵抗のトレードオフを最小限に抑えながら、繰り返される短絡を安全に処理する能力をもっています。この製品はバルク導通デバイスであり、劣化するゲート酸化膜がなく、SiC MOSFETよりも高い温度と電界のピークに耐えることができる、ノーマリーオンのJFETの固有の特性に起因しています。

さらに、自己発熱によるチャネルコンダクタンスの低下により、デバイスの電流が急速に減少し、加熱速度が低下するので、デバイスが故障するまでの時間を長持ちさせることができます。 SiCデバイスは、これらの縦型デバイスが体積内の熱を吸収するため、このモードでは一般的により堅牢です。一方、GaN HEMTは、極薄の2次元電子ガスで熱を発生させる横型デバイスです。

リニアモードアプリケーションでのSiC半導体の利点

図3は、ノーマリーオンのSiCJFET、SiC MOSFET、およびSi MOSFETの正規化されたVTH対温度特性を示しています。ノーマリーオンのSiC JFETのみが、温度によるVTHの低下を回避していることは明らかです。

デバイスが電流源として使用されている場合や、または故意にゆっくりと切り替えられるソリッドステートブレーカーに使用されている場合、小電流、低| VGS-VTH |の領域でも、費やされた時間によっては、デバイスが電流フィラメント形成の影響を受けやすく、負のVTH温度係数をもつようになり、予想よりもはるかに低い電圧で障害が発生する可能性があります。この事はUnitedSiC社のSiC JFETでは起きないということが実証されています。したがって、United SiC社のSiC JFETは、電流源や電子負荷などを形成するのに非常に役立ちます。定格のブレークダウン電圧に至るまで破壊することなく、小電流高電圧損失の領域でバイアスをかけられます。

Si MOSFET、SiC JFET、Si MOSFETの温度によるVTHの正規化された変化。
図3:Si MOSFET、SiC JFET、Si MOSFETの温度によるVTHの正規化された変化。


負の勾配では、高VDSで低| VGS-VTH |と動作が不安定になる。この問題は、ノーマリーオンのSiCJFETには存在しません。

回路保護におけるSiC半導体の利点

VTHが温度とともに低下しないという事実、SiC JFETの優れた電流制限および短絡機能、および破壊に至るまでシリコンデバイスよりも4倍高いエネルギー散逸に耐えるSiC JFETデバイスの能力により、これらのデバイスは回路ブレーカー、突入電流リミッター及び負荷スイッチとして非常に役立ちます。JFETは、所定のチップサイズで最も低いRDS(ON)を提供し、繰り返しの過大ストレスイベントに耐えることができ、すなわちデバイスの堅牢性を損なうことなく、動作時の導通損失を低減します。

フレキシブル高電圧FETへの新しいアプローチ

UnitedSiC社は、高電圧FETへのスーパーカスコードアプローチを実現しました。これは、低電圧Si MOSFETと独自のバイアスネットワークを使って、多くのノーマリーオンJFETを直列に接続することによって実現した非常に高電圧なスイッチです。この製品は複合デバイスで3端子スイッチとして使うことができます。 開発中の200A、6500Vハーフブリッジモジュールには、5段の1700V JFETが直列に接続されています。デバイスは、Qgが低い0〜12Vの単一ゲートドライブでスイッチすることができます。

IGBTやSiC MOSFETを直列接続した場合に必要とされる各段のゲートドライブを用意する必要はありません。小電流スイッチの別のデモでは、スーパーカスコード技術を40kVの単一スイッチに適用しました。低電圧のJFETテクノロジーは成熟しており、材料のコストが安いため、設計者が高電圧に対してこれまで達成できなかった低コストソリューションを提供することができます。また、所望の電圧または電流クラスに対するデバイスが入手できない場合には、UnitedSiC社のカスコードとJFETデバイスを使って簡単に構築することがきます。

 

この記事では、幅広いアプリケーションを対象としたUnited SiC社のSiC FETおよびSiC JFETベースのソリューションによる利点を簡単に説明しながら、多くの基礎をカバーすることを試みました。これらのテーマの詳細については、UnitedSiCのWebサイトおよび出版物を参照してください。

UnitedSiC社のSiC FETは、高周波DC-DCおよびAC-DCアプリケーションの設計を向上させることができるだけでなく、幅広いゲートドライブ動作範囲により、既存のシリコンベースの設計にドロップイン・リプレースメントすることができます。 EVインバーターにおけるUnitedSiC社のSiC FETの利点は、低い導通損失から堅牢な短絡処理までを説明しました。特に高電圧と高電力用のアクティブモードおよび回路保護アプリケーションは、SiC JFETテクノロジーにしかできない領域であり、低電圧JFETを積み木を重ねる様に使用して、柔軟な高電圧大電流スイッチを構築することができます。これらのアプリケーションについてはすでに公開されております別の記事でも説明させていただいております。そちらも併せてご参照をお願いします。

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