以下の「技術基準適合証明取得までの道のり」シリーズの記事で、技術基準適合証明(以降技適)を取ってみるまでの流れを紹介しました。
技術基準適合証明取得までの道のり 第1話「技適を取ろう」
技術基準適合証明取得までの道のり 第2話「書類の準備」
技術基準適合証明取得までの道のり 第3話「試験実施」
技適を取得する前の評価ボードをそのまま使うと電波法に違反してしまうため、これまで技適取得に携わってきたメンバーは、限られた環境でしかワイヤレス通信の評価を行ってきませんでした。そのため、屋外でどのくらいSub-GHz帯の無線通信が飛ぶのか試したことがありませんでした。
今回は、せっかく技適を取得したからには使ってみたい!と感じたエンジニア数名によって、実際にSub-GHz帯の無線通信の飛距離を計測した実験結果を前編と後編でお届けいたします。
Sub-GHz帯通信の測定を準備しよう
測定を行う前に準備について簡単に説明します。
Sub-GHz帯通信の測定概要
送信側を固定して、受信側を移動させ、どれぐらいまでパケットが届くのか確認します。送信側は少しでも飛ぶようにマクニカビルの屋上から電波を出力します。
ソフトウェアの設定
今回の測定では、技適の試験をした時に使用したパケット送信テストをベースに、どこまでパケットが届くのか確認しようと思います。

ハードウェアの準備
せっかく技適取得の際にアンテナも複数申請したので、アンテナの種類で飛距離が変わるのかも気になりますよね。ということで、送信側のアンテナをオンボードのアンテナに固定し、受信側のアンテナを以下のアンテナに変更して、どのくらい通信に影響があるのか確認したいと思います。

TIの評価ボードに接続する各種アンテナ
1. LaunchPad上のオンボードアンテナ
2. Antenna DKのNo.12アンテナ
taoglas社のアンテナ
3. FW.95.B.SMA.M
4. TI.09.A.0111
電源はPCのUSBポートからケーブルをセットして電力を供給します。
手作り感がとてもあって不安が残りますが、ひとまず完成です。右側の写真だと少し段ボールの色が変わっていますが、これには理由があるのです…
想定外!悪天候の中で測定
残念ながら実測当日に雨が降ってしまいました。雨でも測定することは可能ですが、改めてダンボールの工作を見直すと基板がむき出しのままですよね?
基板本体が濡れてショートしてしまったら故障するのは目に見えています。しかし、技適が取得出来たことによる高揚感で測定せずにはいられません。ショートに気を付けて、基板を守るように傘を差して測定に向かいました。
寒空の中(測定日は1月中旬)傘をさしながら、ダンボールとPCを抱えて歩く姿は異様です。

しかし、測定するエンジニアのさびしい姿とは裏腹に距離はどんどん伸びます。想定では飛距離は500mぐらいで通信できなくなると思ったのですが、とどまるところを知りません。
パケットエラーレートに差分がありましたが、どのアンテナでも通信ができなくなることが無く、なんと、ビルから580m離れた場所まで通信を行うことができました。

これ以上は雨の中であること、ハードウェアの故障が心配ですので、今回はここで会社に戻りました。
Sub-GHz通信の計測で学んだこと
残念ながら今回Sub-GHz通信の実力を確かめることはできませんでしたが、少なくとも500m以上は飛ぶことを確認できました。これだけ飛距離が出るなら、様々なソリューションに応用できそうですよね。また、今回の計測で以下の3点を学びました。
1. 評価ボードを内蔵するケースは必須
人が触れることでアンテナの特性に影響を与えることもありますが、突然の雨に対応するためにも防水対策も検討が必要です。
2. ケースの外から触れるボタンが必要
ダンボール工作の写真ではわかりにくいですが、外のアンテナと中の基板は非常に細い線で接続しています。少しでもずれるとアンテナが外れてしまいます。また、ソフトウェアの設定はオンボードのボタンで動作させています。そのため、なるべく箱を大きく開かずにボタンを操作しなければならず、非常に利便性の悪いことがわかりました。
3. 天気は重要
悪天候の中、測定を強行しましたが、基板の心配をしなければならないため、非常にハラハラしながら測定しました。無線通信の測定を行う際は、晴れた日をおすすめします。
悔しいので次回再挑戦します!
今回の反省を踏まえて評価ボードを改良したいと思います。後編は天気に恵まれることを祈って、改良を加えたボードを使った実験結果をお届けします。再挑戦した結果もご期待ください!
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※本評価ボードは国内の技適認証を取得しておりませんので、お客様の判断でお使いください。