技術基準適合証明取得までの道のり 第3話「試験実施」

第2話「書類の準備」では、申請に必要な書類・資料について紹介しました。今回は技術基準適合証明(以降技適)の試験を行うために準備したソフトウェアとハードウェア、そしてテュフ ラインランド ジャパン株式会社 様で行った試験の様子を紹介します。

技術基準適合証明取得までの道のり 第1話「技適を取ろう」
技術基準適合証明取得までの道のり 第2話「書類の準備」
技術基準適合証明取得までの道のり 第3話「試験実施」

まずはハードウェアの準備

評価ボードの技適を取得するまでは、アンテナから電波を出力することはできません。そのため、RF入出力をアンテナからコネクタに変更する改造を行います。購入した時点では、アンテナにコンデンサで繋がっていますので、このコンデンサを外します。そして、コネクタ側のパッドと接続します。

評価ボードの加工箇所
評価ボードの加工箇所

技適を取得するボードは全て改造が必要ですので、今回申請する25枚という台数の基盤を、一気に改造を行いました。
改造後は、下記図のようなSMA変換ケーブルと合わせて使用することになります。

SMA変換ケーブルを接続した状態
SMA変換ケーブルを接続した状態

無線仕様を決めてソフトウェアの準備

続いては、ソフトウェアの準備に入ります。
プログラム作成の前に、無線仕様を決めなければなりません。今回は、以下の無線仕様としました。

無線仕様

中心周波数 922.5MHz, 925.1MHz, 927.7MHz
占有帯域幅 400kHz
通信速度 20kbps, 50kbps, 100kbps
変調方式 2GFSK
送信出力 12dBm
通信フォーマット ※CC1310の基本パケットフォーマットを使用
  • Preamble:010101・・・010101(4bytes)
  • Sync word:0x930B51DE
  • HeaderはLength(1byte)のみ
  • Payload:1byteから50bytesまで可変

技適試験に必要な機能を実装

通信機能としては、技適試験に必要な、次の機能を実装します。

連続送信
  • 変調あり / なしが選択できること
  • 変調ありの時の送信データは、PN9とすること
パケット送信
  • Payloadデータは、CC1310のTRNG(True Random Number Generator)を使用すること
  • パケット送信間隔は、100msecから100msec単位に1000msecまで変更できること
  • 送信前のキャリアセンスを行うこと
パケット受信
  • パケットの正常受信した回数と、受信電波強度、CRCエラーの発生回数を表示すること

また、これらの機能と詳細なパラメータは、UARTで表示し、Launchpadのボタン操作で変更できるようにします。

無線設備用の標準規格 ARIB STD-T108 に対応させる

ARIB STD-T108とは、一般社団法人電波産業会(ARIB;Association of Radio Industries and Businesses)が規定する標準規格です。正式な規格の名称は「920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備」です。920MHz帯を利用する場合は、この規格に合わせて開発する必要があります。

そのため、ソフトウェアは、Texas Instruments社(以下、TI社と記載)が提供する CC1310向けSimpleLink SDK をベースに上記の仕様と、ARIB STD-T108に対応させるように設計します。

なお、SimpleLink SDKには、パケット送受信や連続送信、キャリアセンスを行うサンプルプログラムが用意されています。それぞれ個々に用意されているため、これらをマージして細かな修正を行います。幸いなことにサンプルプログラムには、UART表示処理とボタン操作処理がすでに組み込まれていますので、非常に簡単に準備することができました。

ソフトウェア動作イメージ
ソフトウェア動作イメージ

いざ技適試験へ

では、ハードウェアとソフトウェア、資料が全て揃ったので、最後の関門であるテュフ ラインランド ジャパン
株式会社 様での試験になります。なお、1話でも説明しましたが、電波法を始め、様々な規格に対する認証や審査は、総務省の登録を受けた登録証明機関で行う必要があります。

試験の前に、技適の試験内容についてミーティングを行い、試験サンプルを抽出します。サンプルの抽出は用意した25台のLaunchpadの中から、無作為に試験対象となる2台を抽出します。今回の試験では、No.08とNo.12を使って行いました。

25台のLaunchpad
25台のLaunchpad

試験室はこのような場所で行います。

試験の準備風景
試験の準備風景

技適の試験項目は8つ

試験項目は周波数毎(今回は3つの周波数)に以下の8項目の試験を行います。

  1. 周波数の偏差
  2. 占有周波数帯幅
  3. スプリアス発射または不要発射の強度
  4. 空中線電力の偏差
  5. 隣接チャネル漏えい電力
  6. 副次的に発する電波等の限度
  7. 送信時間制限装置
  8. キャリアセンス機能

(出典:http://www.soumu.go.jp/main_content/000455446.pdf

はじめは、送信に関するテストを行いました。連続送信による送信出力・周波数偏差・スプリアス発射、パケット送信による送信休止時間の測定など、順調に試験が進んでいましたが途中で問題が発生してしまいました。

キャリアセンス機能の試験で問題発生・・・

キャリアセンス試験では、パルス信号発生器を使って送信可能となる妨害波と送信不可となる妨害波を送信して、試験機が送信しているか確認します。本来なら、送信不可の妨害波を入力させると、試験機からは送信されないはずが、送信してしまっているではないですか!

あわててソースコードの確認しました。ソースコードを追いかけてみると、原因はキャリアセンスを行うための受信設定にある受信フィルタが、パケット受信するときの帯域に設定されており、チャネル全体を測定していなかったのです。

問題の箇所が分かったため、急いでソースコードを修正し、修正したバイナリを試験機に書き込んで再チャレンジ。チャネルの両端に妨害波を入力しても、送信しないことが確認できたため、キャリアセンス機能試験もパスすることできました。

キャリアセンス機能試験時の写真
キャリアセンス機能試験時の写真

最後に、副次的に発する電波等の限度の試験を行い、無事に全ての試験を終えることができました。今回は周波数の帯域を絞り込んだため、午前中から始めて半日程度で終わりました。周波数の帯域が広い場合はもう少し試験に時間がかかるかもしれません。

あとは、申請書類とLaunchpadをテュフ ラインランド ジャパン株式会社 様へ提出して、手続きをしていただくだけです。

技術基準適合証明書が届きました

無事に認証が下りて、証明書が届きました。
これで、実際に技適マークを貼ったLaunchpadでSub-GHzのいろいろな試験が実施できるようになります!

技術基準適合証明書
技術基準適合証明書

どのくらいの距離が通信できるか屋外で測定したいですよね?

今回で技適の取得シリーズは終わりですが、せっかく外で使えるようになったので新横浜とお台場で実験してきました。こちらの実験シリーズも是非ご覧ください! 

お問い合わせはこちら

本記事でご紹介したTI社の開発キットや、Sub-GHz対応製品に関する詳細な情報をお求めの方は、是非こちらからお問い合わせください。

関連情報

おすすめ記事/資料はこちら

技術基準適合証明取得までの道のり 第1話「技適を取ろう」
技術基準適合証明取得までの道のり 第2話「書類の準備」
技術基準適合証明取得までの道のり 第3話「試験実施」

おすすめセミナー/ワークショップはこちら

初心者のためのワイヤレスセミナー ~TIで始める初めての無線製品~<無料>

商品の購入はこちら

LAUNCHXL-CC1310
※本評価ボードは国内の技適認証を取得しておりませんので、お客様の判断でお使いください。

メーカーサイト/その他関連リンクはこちら

CC1310
LAUNCHXL-CC1310
SimpleLink™ Sub-1GHz ワイヤレス・マイコン