概要
2021年11月1日に経済産業省より「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」が発表されました。
本記事では、新たにガイドラインに追加されたCO2検知原理(光音響方式)と、それに準拠したスイスのセンサーメーカーSENSIRION社のCO2センサーのご紹介をします。
経済産業省発表「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」とは
光音響方式(Photoacoustic)とは
「SENSIRION」スイス発のセンサー専業メーカー、業界で唯一光音響方式(Photoacoustic)のCO2センサーを提供
SENSIRION SCD4xシリーズ 光音響方式(Photoacoustic)CO2センサーの特徴
まとめ
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経済産業省発表「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」とは
新型コロナウイルス感染防止対策として、「換気の悪い密閉空間」を改善することを目的に、十分に換気が行われているかどうかを確認する方法として、二酸化炭素濃度測定器を用いてのCO2濃度計測が推奨されています。一方で、測定器の測定精度は、測定器に用いられる検知原理等により異なるため、正しい濃度計測がおこなわれているかどうかがわからない状況が続いてきました。
今回の経産省のガイドライン発表により、これまで市場に出回っていた、VOCガスセンサーを用いたH₂(水素)濃度からCO2濃度を換算する疑似的な二酸化炭素濃度計測をする機器(機器周辺にエタノールを漂わせると反応し異常値を示す機器)などは市場より排除され、正しい二酸化炭素濃度を計測できる、CO2分子をダイレクトに計測する光学式の検知原理の測定器が、正しく設置され、「換気の悪い密閉空間」の改善のために使用されることになると思います。
機器仕様に新しく「光音響方式」が追加
今回の経済産業省の発表を詳しく見ていくと、ガイドラインにて以下の2つの機器仕様が示されています (経済産業省発表のガイドラインはこちら)。
1. 検知原理が光学式を用いたものであること
光学式とは、NDIR(Non Dispersive InfraRed:非分散型赤外線吸収)や光音響方式(Photoacoustic)など、二酸化炭素分子が吸収する特定の波長光を利用した検知の方式を指します。
2. 補正用の機能が測定器に付帯していること
補正用の機能とは、測定値のズレを自動的または手動により修正する機能を指します。メーカーによっては、校正と呼ぶ場合もあります。
その中で、CO2ガスの検知原理が光学式を用いることとありますが、これまで市場にあったNDIR方式[Non Dispersive InfraRed (非分散型赤外線吸収法)] の検知に加え、新たに光音響方式(Photoacoustic)の検知方法が新たに追加されています。
ここからは、この新たに加えられた光音響方式 (Photoacoustic)の検知原理やメリットを解説します。
光音響方式(Photoacoustic)とは
一般的なCO2センサーは、NDIR方式(非分散赤外線吸収法)の原理に基づいています。これらのNDIR方式のセンサーは光共振器の光学ビーム経路の確保が必要で、その感度は経路長に直接比例するため、感度を上げるとサイズが大きくなってしまいます。さらに感度を低下させずに小型化するのは困難で、低いCO2測定での使用に限られてしまいます。従い、NDIR方式のセンサーは、そのサイズ、感度制約によって、コスト効率の改善が見込めませんでした。
また、光音響を用いた原理はすでに1880年に発明されていましたが、技術的なコンポーネントが不足していたため、一般的なCO2センサーには容易に適応できませんでした。しかし優れた検出性能であったため、実験室規模の光音響測定器には採用されていました。
測定原理としては、まずIRエミッターからCO2分子の吸収帯と一致する狭帯域光を、完全密閉した測定セルの空間に放射します。測定セル内のCO2分子は、照射された光の一部(4.26μm波長)を吸収しますが、その他の分子は放射光のスペクトルのために吸収できません。測定セルに存在する分子が多いほど、吸収されるエネルギーが大きくなります。CO2分子の吸収されたエネルギーが主に分子振動を発生させ、分子の並進運動エネルギーは増加します。測定セルは密閉されているため、セル内の圧力が高まります。光源の調整によって、測定セル内の周期的な圧力が変化し、それをマイクロフォンで測定します。結果的にマイクロフォンの信号が、測定セル内に存在するCO2分子の数の測定値となり、CO2濃度の計算に使用される仕組みとなっています。(図1)

[図1:SCD4xの内部構造と測定原理]
「SENSIRION」スイス発のセンサー専業メーカー、業界で唯一光音響方式(Photoacoustic)のCO2センサーを提供

経済産業省が推奨している光音響方式ですが、業界でこの測定方式のCO2センサーを量産対応にて提供しているのがSENSIRION社の1社のみです。
SENSIRION社は、世界に先駆けて2021年4月に光音響方式CO2センサー「SCD4xシリーズ」を量産開始しています。(図2)
温湿度センサーの小型化開発で培った知識(CMOSens®技術)によって、光音響検出原理に基づいたPASens® 技術を確立し、CO2センサーへの導入を実現しました。また、PASens® 技術の採用により、センサー性能を低下させることなく、CO2センサーは大幅に小型化されました。これは、センサー感度が光共振器のサイズと無関係であるためです。さらに、自社開発のコンポーネントのため構成がシンプルになり、その数が劇的に減ることで、非常にコスト効率のよい光音響方式のCO2センサーを量産することが可能となりました。これにより、市場の多くの装置に搭載が開始しています。

「SCD4x」CO2センサーの国内外の装置メーカーによる採用事例(図3)
・CO2計測モニター機器
・空気清浄および空調制御機器でのIAQモニタリング
・IoTおよびスマートホームでの環境管理
・オフィスビル換気システム
・農業・ハウス栽培の環境管理
SENSIRION SCD4xシリーズ 光音響方式(Photoacoustic)CO2センサーの特徴

SENSIRION社のSCD4xシリーズの特徴は以下となります。
・高精度・長期安定性に優れている、動作保証は10年以上
・最小のモジュールサイズを実現(10.1㎜×10.1㎜×6.5㎜)
・基板に直接面実装可能、自動実装機の使用が可能
・センサー精度を長期で安定させるユニークな
濃度校正アルゴリズム保有
- ASC(自動自己校正)とFRC(強制再校正)
・耐振動性に優れる、ウェアラブル機器への搭載も可能
・最小の部材構成でモジュールを実現、低コストでの提供が可能
このように、従来のNDIR方式の技術課題を完全に解決したセンサーとなります。
まとめ
- 経済産業省発表「二酸化炭素濃度測定器の選定ガイドライン」に、新たに光音響方式の検知原理が加わった
- 光音響方式CO2センサーを業界で量産リリースしているのは、SENSIRION社のみ
- SENSIRION社 SCD4xシリーズは、NDIR方式と同等の高精度測定機能を有しながら更なる機能/性能向上を実現し、これまで機能実現が難しかった機器 への搭載、新たなアプリケーションに最適である
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