オペアンプに求められる性能

近年、広がる IoT 化によってトリリオンセンサー(1 兆個のセンサー)で社会が繋がる時代を迎えようとしており、モバイル機器をはじめ、自動車や産業機器、医療機器など、さまざまなアプリケーションで、機能拡張や、より高度な制御を行うためにセンサーの搭載が進んでいます。センサーは、環境や物理的変化を電気信号に変換するデバイスであり、センサーを利用したアプリケーションがオペアンプに求める要求性能は年々高精度化しています。

下の図は、環境や物理的変化をシステムに取り込む一般的な流れを示したものです。
光・温度・衝撃・圧力など、微弱な環境変化を信号化するセンサの出力は微小なアナログ信号であることが多く、信号を高精度、かつ、高倍率に増幅するためオペアンプが持つノイズ削減は必須です。

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環境や物理的変化をシステムに取り込む一般的な流れ

CMOSオペアンプはノイズが大きい?

さまざまな種類のあるオペアンプですが、入力段の差動増幅回路の構成によってデバイスの特性が大きく異なります。入力段の差動増幅回路の構成は一般的にバイポーラ入力、J-FET入力、CMOS入力の3種類に分けられます。

バイポーラオペアンプについてはノイズが小さいというメリットはあるのもの、電流駆動のため入力バイアス電流が大きくなります。これはインピーダンスの高いセンサを増幅するには不利になります。一方、入力バイアス電流や消費電力が小さいCMOSオペアンプですが、ノイズが大きいというデメリットがあると一般的にいわれています。

下の表は、それぞれの特徴を比較したものです。センサーにとって重要な特性、入力バイアス電流、入力オフセット電圧、ノイズ(入力換算雑音電圧密度)と低電圧動作、消費電流を比較してみました。
※入力換算雑音電圧密度についてはあとで説明します。

入力段プロセスによる特性比較(一般例)
入力段プロセス ノイズ 入力バイアス
電流
オフセット
電圧
低電圧動作 消費電流
バイポーラ入力
J-FET入力
CMOS入力

○:良い、X:悪い、△:中程度



特性を改善できればCMOSがベスト

インピーダンスの高いセンサー素子用のセンサーアンプには、入力バイアス電流の小さいCMOS構造が適しているのですが、表中の赤枠で囲った特性は劣っています。しかし、ノイズ(入力換算雑音電圧密度)や入力オフセット電圧が改善できればセンサに適したオペアンプであるといえます。

オペアンプから発生するノイズ対策

ノイズ(入力換算雑音電圧密度)の改善については、まず、ノイズの種類から説明します。ノイズにはさまざまな種類が存在しますが、大きく分類すると、外乱ノイズとデバイスから発生するノイズに分けられます。

ノイズの分類

  • 外乱ノイズ

外乱ノイズは IC 外部から照射される電磁波や携帯電話、無線などの電子機器から発せられる電波(RF ノイズ)のことです。余談ですが、電子機器から電磁波ノイズが発生しないように防ぐことを EMI(エミッション)対策といい、電子機器が電磁波ノイズを受け誤動作をしないように対策することを EMS(イミュニティ)対策といいます。

  • カラードノイズ(有色雑音)

一方、オペアンプを構成するトランジスタや抵抗などのデバイスから発生するノイズはカラードノイズ(有色雑音)と呼ばれています。オペアンプ内部から発生するカラードノイズにはピンクノイズ(別名 1/f ノイズ、フリッカノイズ)と呼ばれる周波数に依存するノイズと、全周波数帯に一様に分布するホワイトノイズ(別名サーマルノイズ)があります。この2つのカラードノイズが入力換算雑音電圧密度としてスペックにあらわされています。

カラードノイズを小さくする対策

次にデバイスから発生するノイズ、カラードノイズを小さくする対策です。ノイズの発生原因により対策方法が分かっています。

  • フリッカノイズ(1/fノイズ・ピンクノイズ

電子の散乱により発生するフリッカノイズ(1/fノイズ・ピンクノイズ)は製造プロセスにより改善することができます。半導体中に含まれる不純物による電子の散乱(揺らぎ)が原因で発生すると言われており、電子の半導体中での散乱を抑制し電子の流れをスムーズにすることにより改善できます。

  • サーマルノイズホワイトノイズ

抵抗成分で発生するサーマルノイズ(ホワイトノイズ)は回路設計により改善することができます。抵抗は電荷の移動を阻止するため、電子が不規則に運動してしまうことが原因です。IC内部の抵抗成分、純粋な抵抗、トランジスタ、配線等で発生するので、回路構成、トランジスタサイズを調整し抵抗値を下げることで改善できます。

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カラードノイズ(有色雑音)と改善策

CMOSなのに低ノイズなオペアンプLMR1802G-LB

今回、紹介したいのが ローム社 が提供するオペアンプ LMR1802G-LB です。

このオペアンプは、ローム社独自の回路技術とプロセス技術によりCMOSでありながら低ノイズを実現したオペアンプです。デバイスから発生するノイズをあらわす入力換算雑音電圧密度は、バイポーラの低ノイズオペアンプと比較しても、同等の低ノイズ性能を実現しています。

入力換算雑音電圧密度比較(ローム社調べ)
指標/周波数 入力換算雑音電圧密度
LMR1802G CMOS従来品 J-FET バイポーラ
1kHz 2.9nV/√Hz 19nV/√Hz 7.2nV/√Hz 4.2nV/√Hz
10Hz 7.8nV/√Hz 38nV/√Hz 9.0nV/√Hz 5.0nV/√Hz

入力オフセット電圧も従来比、1/4に改善

また、入力オフセット電圧も従来のCMOS製品と比べ1/4の電圧に改善されています。
もちろん、CMOSオペアンプの特徴である入力バイアス電流もわずか0.5pAとセンサにとって最適な製品です。

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入力オフセット電圧、入力バイアス電流

センサー以外にも、さまざまな用途で使用可能

低ノイズオペアンプLMR1802G-LBは小型、高精度であるため、さまざまアプリケーションに使用できます。

アプリケーション例

  • 産業機器
  • 各種センサーアンプ
  • バッテリ駆動機器
  • 電流検出アンプ
  • ADC 周辺回路、バッファアンプ
  • フォトダイオード周辺回路
  • 各種増幅器
主な特性
主な重要特性 スペック
入力オフセット電圧 5 μV (Typ)
入力換算雑音電圧密度 f=10Hz:7.8 nV/√Hz (Typ)、f=1kHz:2.9 nV/√Hz (Typ)
同相入力電圧範囲 VSS ~ VDD-1.0 V
入力バイアス電流 0.5 pA (Typ)
動作電源電圧範囲 単電源:2.5 V ~ 5.5 V、両電源:±1.25 V ~ ±2.75 V
動作温度範囲 -40 °C ~ +125 °C
パッケージ
W (Typ) x D (Typ) x H (Max)
SSOP5、2.90 mm x 2.80 mm x 1.25 mm



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