はじめに
以前からスマートフォンのようなデータ通信量が多いデバイスでは2x2 MIMOに対応していましたが、最近IoTのクライアント側のデバイスでも2x2 MIMOという話を聞くようになってきました。
2x2 MIMO自体は11nより導入されており新しい技術ではありませんが、今回は改めて1x1と2x2 MIMOのスループットの違いを実際に比較してみようと思います。
MIMOとは
MIMOとはMultiple Input Multiple Outputの略になります。日本語に訳すと多入力多出力になります。
2x2であれば入力出力を2本のアンテナを使用し実行するということになります。そのため、単純に速度が2倍になります。
※11a/gまでは、2本のアンテナがあるAPの場合でも実際には1本のアンテナでの送受信でした。
※ほかにもアンテナが2本あることの利点としては、アンテナダイバーシティーやDBSなどがあります。
テスト環境
今回使用するのは、QualcommのQCA6174Aのリファレンスボード(m.2 Ekey)です。
QCA6174Aは2x2のチップのため1x1/2x2それぞれの送信レートに固定して計測します。
QCA6174Aのスペックはこちらをご確認ください。
ドキュメントやSDKはqualcomm.comより入手可能です。SDKによってドライバー・FW・supplicantが準備されます。
これらを使用してスループットを計測します。
環境としては、QCA6174AとAP(2x2以上:11n 20MHz/11ac 80MHz)を無線で、APとiPerfのサーバーを有線で接続します。

計測
QCA6174Aの送信レートを固定するために以下のコマンドを使用します。
iwpriv wlan0 set11NRates <value>
iwpriv wlan0 set11ACRates <value>
今回は1x1と2x2のスループットの傾向のみの確認ですので、計測するのはUDPのアップリンクとしています。
クライアント側
iperf3 -c <IP address> -u -i 1 -t 30 -b 1000M -w 4M -p 9001
サーバー側
iperf3 -s -p 9001
それぞれ11n/11acの最低レートと最高レートで比較します。
結果
バンド幅 | ストリーム | MCS | スループット |
11n HT20 | 1x1 | MCS0 | 4.36 Mbps |
11n HT20 | 2x2 | MCS8 | 8.64 Mbps |
11n HT20 | 1x1 | MCS7 | 37.6 Mbps |
11n HT20 | 2x2 | MCS15 | 70.1 Mbps |
11ac VHT80 | 1x1 | MCS0 | 26.0 Mbps |
11ac VHT80 | 2x2 | MCS0 | 53.5 Mbps |
11ac VHT80 | 1x1 | MCS9 | 354 Mbps |
11ac VHT80 | 2x2 | MCS9 | 667 Mbps |
どの帯域においても概ね1x1に対して2x2は2倍のスループットとなりました。
11n 20MHz 最低レート 1x1 vs 2x2 : MCS0 vs MCS8 : 4.36 vs 8.64
11n 20MHz 最高レート 1x1 vs 2x2 : MCS7 vs MCS15 : 37.6 vs 70.1
11ac 80MHz 最低レート 1x1 vs 2x2 : MCS0 vs MCS0 : 26.0 vs 53.5
11ac 80MHz 最高レート 1x1 vs 2x2 : MCS9 vs MCS9 : 354 vs 667
まとめ
どのレートにおいても概ね2倍のスループットが記録されました。
このように、ホストとのインターフェースにもよりますが、2x2のデバイスを使用することで1x1のデバイスの2倍のスループットを実現可能です。
今、1x1の11n/11acデバイスをお使いで性能に満足していないようでしたら、2x2のデバイスを検討してみるのはいかがでしょうか?
こちらのリンクよりQualcommのWi-Fi製品のラインナップがご確認いただけます。
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