SiC FETのボディ・ダイオードの特性と良好なSW特性

Qorvo社 SiC FETのボディー・ダイオードの特性と良好なSW特性

Qorvo社のSiC FET製品のラインナップは、高電圧のノーマリーオンSiC JFETと、低電圧のノーマリーオフSi MOSFETをカスコード構成で組み合わせたコアテクノロジーに基づいて構築されています。

一般的なSiC MOSFETとQorvo社のボディー・ダイオードの違いについてみていきましょう。図1は、一般的なSiC MOSFETとQorvo社のカスコード接続したSiC FETの簡易的な断面構造になります。

図1:一般的なSiCMOSFETおよびQorvo社 SiC FETの概略断面図

図1:一般的なSiCMOSFETおよびQorvo社 SiC FETの概略断面図

まず、一般的なSiC MOSFETのボディー・ダイオードはSiCで作られており、PNダイオードとなっています。ワイドバンドギャップ素材のSiCをつかっているので、VFが高くなり、3.5V以上になります。またQrrの特性もあまりよくなく、温度によって非常に早く値が大きくなってしまいます。降圧電源に使用する場合には、同期整流にするか、並列にショットキー・バリア・ダイオードが必要となります。同期整流にしても、スイッチング周波数が高くなると、貫通電流を避けるために必要なデッド・タイム期間での損失が無視できなくなり、結局は並列のショットキー・バリア・ダイオードが必要になります。また、一般的なSiC MOSFETのボディー・ダイオードは、内部の結晶欠陥から、使用しているうちにVFが上昇していくという不具合が生じることもあります。

しかしながら、Qorvo社SiC FETは、ボディー・ダイオードはSiでできています。電流は低耐圧のMOSFETのボディー・ダイオードを通り、JFETRJFETRDRIFTの二つの抵抗を通ります。よって、SiCJFET自体はただの抵抗のようにふるまいます。カスコード接続されているSi MOSFETは、20~30Vの低耐圧となるのでボディー・ダイオードの特性は非常に良いものになります。図2のグラフにあるとおり、電圧降下が低いため、順方向電圧降下は通常、約1.5Vです。

図2:Qorvo社 SiC FET 第三象限の特性

図2:Qorvo社 SiC FET 第三象限の特性

3の波形で、SiC MOSFETQrr150℃で測定していますが、220nCという高めの値を観測できています。また、SiC MOSFETのボディー・ダイオードは順方向降下電圧VFが高いので、VFが高すぎる場合はSiCのショットキー・バリア・ダイオードを並列に接続しますが、その時のQrr275nCに上昇します。

Qorvo社のSiC FETは、150℃におけるQrrは105nCしかないので、スイッチング損失の低減に寄与することができます。

3の波形データは、150℃800V11Aで測定しています。QorvoSiC FETのボディー・ダイオードのQrrは、温度を変化させてもあまり変わらないのが特長で、25℃から150℃に変化してもQrr10%しか増加しません。その理由として、QorvoSiC FETQrrは、ほとんどがSiC JFETの出力容量 (Coss) から発生しているためです。容量性の電荷であるため、温度によって増加はしません。Qrrの一部はSi MOSFETのボディー・ダイオードから発生し、温度とともに増加しますが、全体的にみるとわずか10%の増加にとどまります。

図3:ボディーダイオード リカバリー特性

図3:ボディーダイオード リカバリー特性

まとめとはなりますが、Qorvo社のSiC FETはソースからドレインに導通する場合、SiC JFETのオン抵抗は非常に低く、低電圧Si MOSFETのボディー・ダイオードの電圧降下も1.5Vと低いため、SiC MOSFETまたはGaN HEMTの電圧降下よりもはるかに優れた、小さい電圧となります。

そのため、降圧電源に使用した場合でも、同期整流回路で同期FETをドライブしないのであれば、並列ショットキー・バリア・ダイオードは必要なく、内部のボディー・ダイオードをそのまま使用できます。しかもこのボディー・ダイオードはSiCではなく、Siなので劣化の心配もありません。

4に示すのは、Siのファースト・リカバリー・ダイオード (FRD)QorvoSiC FETのボディー・ダイオード、SiC MOSFETのボディー・ダイオードの順方向効果電圧VFの比較です。25℃と150℃の場合を載せています。QorvoSiC FETのボディー・ダイオードは、Siのファースト・リカバリー・ダイオード (FRD) と同等であることがわかります。

図4:SiC MOSFETとカスコード構造のSiC FETのボディー・ダイオード順方向電圧降下比較

図4:SiC MOSFETとカスコード構造のSiC FETのボディー・ダイオード順方向電圧降下比較

SiC MOSFETGaN MEMTでは、逆回復損失は十分に低いか、まったくない可能性もあります。しかし、逆方向導通時の電圧降下となると話しは別となり、逆方向導通時の電圧降下により、スイッチングのデッドタイム中に大きな損失が発生してしまいます。

Qorvo社のSiC FETはボディー・ダイオードの特性は非常に良いものとなり、SiC MOSFETSi MOSFETなどに比べてスイッチング損失が小さくすることがメリットとなります。

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