簡単に置き換えが可能なSiC FETの理由

Qorvo社のSiC FET製品のラインナップは、高電圧のノーマリーオンSiC JFETと、低電圧のノーマリーオフSi MOSFETをカスコード構成で組み合わせたコアテクノロジーに基づいて構築されています。

Qorvo社のSiC FETはカスコード接続されているため、駆動が容易となります。図1が一般的なSiC MOSFETとQorvo社のSiC FETの断面構造の簡略図となります。一般的にはSiC MOSFETは完全なオフ状態とするためには、-5Vなどの負電圧が必要となり、完全にオンするためには+15Vなどの高い電圧が必要となります。

また、VGSの絶対最大定格として-7Vまでしか許容できない製品もあります。これは一般的なSiC MOSFETがチャネル構造をとっていることが原因となり、VGSの絶対最大定格に対して、余裕がない状態となっています。

図1. 一般的なSiCMOSFETおよびQorvo社 SiC FETの概略断面図

図1. 一般的なSiCMOSFETおよびQorvo社 SiC FETの概略断面図

図2が各デバイスのVGS推奨動作電圧と絶対最大定格電圧のグラフとなります。

このグラフからもわかるように一般的なSiC MOSFETは余裕がない状態での使用となり、絶対最大定格電圧を超えると、デバイスの寿命にも影響を与えてしまいます。Qorvo社のSiC FETをみてみると、VGS推奨動作電圧としては0~12Vとなっており、絶対最大定格電圧も±20Vとなっているので、一般的なSi MOSFETと同等レベルの値になります。Qorvo社のSiC FETは、SiC MOSFETと比べても非常にロバスト性に優れており、ゲートドライブ回路の選択肢を広げることができます。

図2. 各パワーデバイスのVGS推奨動作電圧とVGSの絶対最大定格電圧

図2. 各パワーデバイスのVGS推奨動作電圧とVGSの絶対最大定格電圧

Qorvo社のSiC FETは従来のパワーデバイスのゲート駆動回路をそのまま使用できるので置き換えが簡単です。

現状からのドロップイン置き換えを検討する際に最も重要なのがゲート駆動電圧です。Si MOSFETやSi IGBTのVGS絶対最大定格電圧は±20Vが一般的です。従来のSi MOSFETの中には負側に-5~-10Vの制約がある品種もあります。また、ゲート閾値電圧はおよそ5Vであり、ノーマリOFFなので負の駆動電圧は必要ありません。ONするためには通常+12V~+15Vを使用します。

一方、一般的なSiC MOSFETのゲート閾値電圧は、約2.2Vと低い値です。誤ったターンONを回避するために、OFF時には負のゲート電圧を必要とします。そして完全なONには+15V~+20Vの電圧が必要となります。

Qorvo社のSiC FETはゲート閾値電圧はSiデバイスと同じ5Vで、ノーマリOFFです。ゲート駆動に負電圧は不要です。Si MOSFETとSi IGBTとの置き換えを考えて、12Vで駆動することもできます。もちろん、負電圧方向にも十分な耐圧があるので、一般的なSiC MOSFETを駆動するための-5V~+20Vまで振れる駆動回路を使用しても、全く問題ありません。Qorvo社のSiC FETは、SiC MOSFET、Si IGBT、Si MOSFETのどれからの置き換えが容易に可能となります。

図3. Qorvo社SiC FETとSiC MOSFETの比較

図3. Qorvo社SiC FETとSiC MOSFETの比較

SiC FETのESD耐性

SiC JFETとSi MOSFETのカスコード構成のSiC FETは、Si MOSFETはパッケージのゲート端子とソース端子に接続されており、これがESD性能を制限しています。JFETはPN接合であり、MOSFETよりもはるかに多くのESDを処理することができます。Qorvo社のMOSFETはESD保護として集積ダイオードを使用しており、Si MOSFETのサイズと静電容量がESD性能の決定要因になります。

図4. SiC JFETのソースにSi MOSFETのドレインが接続された基本的なカスコード構成(左)Si MOSFETのゲートからソースパッドにバックツーバック・ダイオードが配置されたカスコード構成(右)

図4. SiC JFETのソースにSi MOSFETのドレインが接続された基本的なカスコード構成(左)
Si MOSFETのゲートからソースパッドにバックツーバック・ダイオードが配置されたカスコード構成(右)

Qorvo社のSiC FET製品ラインナップ全体に渡り、JFETのサイズとRDSonに合わせてスケーリングされたMOSFETファミリーを使用しています。最小のJFETには最小のMOSFETが必要であり、これらが、部品のESD定格を制限します。これは、MOSFETのみをESDテストすることにより、そのMOSFETを使用するすべての製品のESD定格を決定することも意味します。

帯電デバイスモデルでは、すべてのMOSFETのサンプルが±2000Vまでテストされ、パスしました。これにより、パーツはCDMクラスC3(> 1000V)になります。人体モデルのテストでは、すべてのMOSFETのサンプルが、3つの端子の組み合わせのそれぞれで最大±8000Vまでテストされました。すべてのMOSFETは、ドレイン-ソース端子ペアに対して、8000Vまでパスしました。ゲート - ソースおよびゲート - ドレインのテストは、デバイスのサイズによって異なります。最小のMOSFETは、ゲート - ソースで3900V、ゲート - ドレインで3700Vをパスしました。

これにより、すべてのQorvoデバイスは、最小HBMクラスH2(2000V〜 4000V)が設定されています。より大きなMOSFETを備えた、より大きなSiC FETは、H2クラスよりも優れた性能を発揮します。2つの最大のデバイスは、クラス3B(> 8000V)の定格です。

P / N

CDM

HBM

Class

Results

Class

G to S

G to D

D to S

AW1044

C3

±2kV

3B

8kV

8kV

8kV

AW1046

C3

±2kV

2

3.9kV

3.7kV

8kV

AW1048

C3

±2kV

3A

4.9kV

4.6kV

8kV

AW1060

C3

±2kV

3B

8kV

8kV

8kV

AW1065

C3

±2kV

3A

4.8kV

4.9kV

8kV

表1. MSOFETのESD テスト結果

SiC JFETのESD定格

MOSFETと同様に、QorvoファミリーのSiC JFETは、サイズに応じてスケーリングされており、最小のデバイスがESDに最も敏感です。MOSFETとは異なり、JFETPN接合で構成されているため、基本的にESDに敏感ではありません。ラインナップの中で最小のJFETを利用して、帯電デバイスモデルのテストは±1000Vまでおこなわれ、すべての端子ペアの人体モデルのテストは±8000Vでおこなわれました。すべてのJFETは、それぞれC3クラス、H3Aクラスとなります。

図5:(a)ゲート酸化物がないことおよび(b)2つのPN接合(ゲート - ドレインおよびゲート - ソース)をハイライトしたJFET構造のユニットセル

図5:(a)ゲート酸化物がないことおよび(b)2つのPN接合(ゲート - ドレインおよびゲート - ソース)をハイライトしたJFET構造のユニットセル

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