全体損失が低減でき、並列接続を容易にするSiC FETシリーズ

全体損失が低減できる低ON抵抗のSiC FET

Qorvo社は、非常に特徴的なカスコード接続されたSiC FETを提供しております。実際のデバイスの内部の簡易回路図は、図1になります。見ていただくとわかる通り、SiC-JFETSi-MOSFETがカスコード接続されていることが分かります。このような接続をすると、ユーザー様からはSi-MOSFETをつないでいるように見えるため、使い勝手が非常に向上します。

また、SiC-JFETはノーマリーオンといって、ゲートなどがOPENになると、ONしてしまい危険なモードに入るのですが、カスコード接続することによって、ノーマリーオフにすることができます。Qorvo社だけが、このようなSiCを現在開発しています。

図1:カスコード接続 図1:カスコード接続
図1:カスコード接続

Qorvo社のSiC FETのデバイスが単位面積あたりのオン抵抗が低い理由

図2は一般的なSiC MOSFETQorvo社のカスコード接続したSiC FETの簡易的な断面構造になります。電圧を印加したときのオン抵抗を分析していきますが、R_DriftR_JFETというパラメーターはSiC MOSFETでもSiC JFETでもほとんど同じになります。しかしながら、SiC MOSFETにはチャネル抵抗というものが存在しており、この値は非常に高い値となっています。Qorvo社のSi MOSFETの値にくらべて一般的なSiC MOSFET10倍ほど悪い値となり、たとえば650Vを印加した状態では、チャネル抵抗が全体のオン抵抗の50%以上を占めます。

Qorvo社のSiC FETを見ると、SiC MOSFETのようなチャネル抵抗はJFETにありませんが、Si MOSFETのオン抵抗が存在します。このSi MOSFETはQorvo社が独自に設計しており、非常に低いオン抵抗になります。このため、FET全体のオン抵抗 に対して10%以下の値となって、結果的に合計のオン抵抗が低くなります。

図2:標準的なSiC MOSFET/Qorvo SiC FET 構造の違い
図2:標準的なSiC MOSFET/Qorvo SiC FET 構造の違い


Qorvo
社の最新世代750V Gen 4シリーズは、従来の製品よりも400Vまたは500Vのバッテリー/バス電圧アプリケーションの設計マージンが確保できるようになりました。Gen4デバイスは、定格電圧が上昇しているにもかかわらず、高度なセル密度を採用しているため、単位面積あたりのRDSon)を低減することができ、業界で最も低いオン抵抗の製品をすべてのパッケージで提供します。

さらに、高い電流定格は、高度な焼結ダイアタッチ技術によって達成され、改善された放熱性能を提供します。図3は、新しい750V製品の単位面積当たりのオン抵抗を650V定格の他社製品と比較しています。全温度範囲で大幅に低い値を示しています。

図3:750V Gen 4 のQorvo社 SiC FETと 650V定格の競合他社のSiCの単位面積あたりのオン抵抗の比較
図3:750V Gen 4 のQorvo社 SiC FETと 650V定格の競合他社のSiCの単位面積あたりのオン抵抗の比較


Qorvo社は、画期的なGen 4 SiC FETポートフォリオを拡充し、TO-247 4リードパッケージの750V/6mΩ SiC FETD2PAK-7L表面実装パッケージのオン抵抗9mΩまでの製品を拡大しました。図4を参照ください。

図4:750V Gen4 Qorvo SiCFETの低オン抵抗UJ4SC075006K4Sと、同様の650V~750Vクラスの競合SiC MOSFETとの比較
図4:750V Gen4 Qorvo SiCFETの低オン抵抗UJ4SC075006K4Sと、同様の650V~750Vクラスの競合SiC MOSFETとの比較

Qorvo社は、業界最高のオン抵抗 x 面積 (RDS(on) x A) を活用して、幅広い電力レベルとパッケージ オプションにわたって第 4 世代 FET ポートフォリオを拡大し、クラス最高の性能指数を提供します。750V SiC FETは、TO-247-3LおよびTO-247-4Lスルーホールパッケージで、6mΩ60mΩのオン抵抗および高電圧対応6.7mmの沿面距離を持つ低インダクタンスの表面実装D2PAK 7Lパッケージで9mΩ60mΩで提供しています。

図5は、スルーホール デバイスと表面実装デバイスの両方で 8 つのオン抵抗を備えた拡張 750V ポートフォリオを示しています。これにより、設計者は、限られた選択肢で妥協することなく、効率、熱管理の複雑さ、コストを考慮してシステムを最適化することができます。

また、750V デバイスの完全な選択肢により、設計者は製品範囲をカバーするために複数の異なるメーカーの SiC コンポーネントを使用して設計するのではなく、Qorvo社 が提供する同じベンチマーク テクノロジーを使用して多くのアプリケーションと電力レベルに対応することができます。 低オン抵抗オプションはケルビンソース接続パッケージ (TO-247-4L および TO-263 7L) で提供され、ユーザーはよりクリーンなゲート波形で高速な大電流スイッチングをおこうなうことができます。

一方、低消費電力の SiC FET (18mΩ60mΩ) は、ケルビン接続および従来の TO-247-3L オプションで提供されます。

図5:RDS(on) およびディスクリート パッケージ タイプ別の 750V Gen4 Qorvo社SiC FET 製品 図5:RDS(on) およびディスクリート パッケージ タイプ別の 750V Gen4 Qorvo社SiC FET 製品
図5:RDS(on) およびディスクリート パッケージ タイプ別の 750V Gen4 Qorvo社SiC FET 製品

さらに、Gen 4 SiC FETで表面実装型TOリードレス(TOLL)パッケージの製品ポートフォリオを拡充しております。

TOLLパッケージ製品の詳細内容は以下をご覧ください。

並列接続を容易にするオン抵抗の正の温度係数

オン抵抗が正の温度係数をもっているカスコードSiC FETは、温度が高くなるとパワーが取れなくなることを意味します。高温下でのシステムを設計する際には、温度上昇や放熱などに注意が必要となります。

一方、この正の温度係数は、カスコードSiC FETを並列接続した場合、メリットとなります。複数個を並列接続したカスコードSiC FETのうち1つが発熱したとき、そのデバイスのオン抵抗が大きくなり、その結果デバイスに流れる電流値が減ります。したがって消費電力が減り、温度が均一化する方向に作用します。

図6:MOSFETと比較したカスコードSiC FETのオン抵抗依存性 図6:MOSFETと比較したカスコードSiC FETのオン抵抗依存性
図6:MOSFETと比較したカスコードSiC FETのオン抵抗依存性

まとめ

Qorvo社のSiC FETは、他社と比較してもより低いON抵抗製品を提供していることから、高い電力密度のアプリケーションに対してモジュールではなくディスクリートでの開発を可能にします。また、モジュールからディスクリートに置き換えることでコスト低減も可能になります。

また低ON抵抗製品であることから、並列接続をしても発熱を抑えることができ、他社と比べても並列接続を容易にすることが可能です。Qorvo社のSiC FETは、高い電力密度要求を満たすことができる製品になります。

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