はじめに
ここ数年、特にコロナ禍で半導体部品が逼迫していたとき、それまではテレビやラジオで流れるニュースで半導体の言葉を聞くことは希でしたが、コロナ禍以降は「半導体」の言葉をほぼ毎日のように聞くようになったと感じます。
半導体業界に身を置いている側としてはこのように注目されるのは嬉しくも思いますし、この半導体に注目される世の流れが一過性のものではなく今後も続くことを祈っています。
ところで、「半導体」について、皆さんはどれだけ理解していますでしょうか?
ダイオード、トランジスターやパソコンなどに使われる CPU といったものを「半導体」と考えている方が多いのではないでしょうか?
いま挙げられたものは厳密には「半導体」ではなく「半導体素子」もしくは「半導体デバイス」と呼ばれるものになります。
「半導体」とは何か?
よく動画配信サイトやさまざまなメディアでこのような説明がされているのを目にした、耳にしたことがある人は多いと思います。
・半導体とは電気伝導性が導体と絶縁体との間である物質
・極低温では絶縁体になる物質
古くから販売されている辞書や大手のオンライン辞書にも同じような内容が書かれています。
ですが、この説明は今となっては間違いです。
例えば、ダイヤモンドは一昔前までは絶縁体として説明されてきましたが、半世紀以上前から半導体としての研究が進められてきた 5.5eV のバンドギャップを持つ半導体です。*[1]
セラミック材料で有名な窒化アルミニウム (Aluminium Nitride、AlN) は単結晶では 6.2eV のバンドギャップを持つ半導体であり、こちらも次世代のパワー半導体デバイスや深紫外 LED への応用に向けて幅広く研究が進められています。*[2]
また、「極低温では絶縁体になる物質」についても、例えば窒化インジウム (Indium Nitride、InN) は 0.65eV のバンドギャップを持つ半導体ですが、極低温(ヘリウム温度)では電気抵抗がほぼゼロになる超伝導特性を示す物質としても知られています。*[3]
このように「導体と絶縁体の間である物質」や「極低温で絶縁体になる物質」では説明がつかないことがあります。
改めて「半導体」とは何か?
では改めて、「半導体」とは何か?
これまでの説明の中で何度か出てきている言葉があるかと思います。
それは「バンドギャップ」です。
バンドギャップとはある物質における価電子帯と伝導帯のエネルギーレベルの差を指し、より詳細な説明は大学の講義1単位分にも及ぶため省きますが、半導体に必ずあるものです。これらのことから
半導体とはバンドギャップを持つ物質
と説明するのがより正解に近いです。ただし、
本当に近年になってナノテクノロジーの進歩によって「一次元半導体デバイス」と呼ばれるものが出てきており、この「バンドギャップ」の有無だけでは説明しきれないときがいずれやってくるかと思います。
そのときはそのときで新しい定義を考えれば良いので、そこは後の世の方々にお任せします。
引用
[1]Characterization of conducting diamond films(https://doi.org/10.1016/0042-207X(86)90279-4)
[2]〔窒化物の合成と物性〕AlNの合成と物性 (https://doi.org/10.11470/oubutsu1932.42.1222)
[3]Electronic structure of superconducting InN (https://doi.org/10.1016/j.stam.2006.06.004)
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