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SiCカスコードJFETのスイッチング時の温度特性と性能

オンセミ社SiCカスコードJFETスイッチング時の温度特性と性能

オンセミ社のSiCカスコードJFET製品のラインナップは、高電圧のノーマリーオンSiC JFETと、低電圧のノーマリーオフSi MOSFETをカスコード構成で組み合わせたコアテクノロジーに基づいて構築されております。図1は、一般的なSiC MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの簡易的な断面構造になります。

図1:一般的なSiCMOSFETおよびオンセミ社のSiCカスコードJFETの概略断面図

図1:一般的なSiCMOSFETおよびオンセミ社のSiCカスコードJFETの概略断面図

パワー回路のスイッチング損失で問題になるのは、ボディー・ダイオードに導通するたびに発生する「逆回復損失」となります。導通により、ボディー・ダイオードには、電荷Qrrが蓄積されます。その後、逆バイアスされるときに、蓄積電荷Qrrを放電するリカバリ電流が流れ、損失が発生します。このボディー・ダイオードの動作により、スイッチング周波数が高くなるにつれて大きなピーク電力が消費され、効率が低下します。

Si MOSFETの場合、スイッチングによる損失が非常に大きくなる可能性があります。例えば、連続導通モード(CCM)で動作する一般的なトーテムポールPFCなどの一部の回路では、損失の大きさのため、Si MOSFETは実際には使用されません。蓄電電荷Qrrは、デバイスの耐圧にも依存します。同程度の定格で、オンセミ社のSiCカスコードJFETと、あるSi スーパージャンクションMOSFETを比較したのが、図2です。ボディー・ダイオードの逆回復波形を比較すると、オンセミ社のSiCカスコードJFETの方が逆回復時間が小さいのがわかります。

図2:SJ MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの逆回復時の電流波形比較

図2:SJ MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの逆回復時の電流波形比較

オンセミ社のSiCカスコードJFET特長①:逆回復時間が小さい

SiC MOSFETの蓄電電荷Qrrは、Si MOSFETよりも10(1/10以下になっている)優れています。しかし、オンセミ社のSiCカスコードJFETは、それよりもさらに優れています。これはカスコード構成となっているSiC JFETの出力容量が小さく、ON/OFFを担っている低電圧のSi MOSFETのボディー・ダイオードの蓄積電荷が少ないためです。

3に、SiC MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの逆回復時間を比較した波形を示します。SiC MOSFETの蓄積電荷はQrr220nCです。SiC MOSFETのボディー・ダイオードは順方向降下電圧VFが高いので、VFが高すぎる場合はSiCのショットキー・バリア・ダイオードを並列に接続します。そのときのQrr275nCです。一方、オンセミ社のSiCカスコードJFETのボディー・ダイオードのQrr105nCと低く、スイッチング損失の低減に寄与します。

オンセミ社のSiCカスコードJFET特長②:温度が上がっても逆回復損失が増えない

3のデータは、150℃、800V、11Aで測定しています。オンセミ社のSiCカスコードJFETのボディー・ダイオードのQrrは温度を変化させてもあまり変わらないのが特長で、25℃から150℃に変化してもQrr10%しか増加しません。その理由は、オンセミ社のSiCカスコードJFETのQrrはほとんどがSiC JFETの出力容量Cossから発生しているためです。容量性の電荷であるため、温度によって増加しません。Qrrの一部はSi MOSFETのボディー・ダイオードから発生し、温度とともに増加しますが、全体的にみるとわずか10%の増加でとどまります。

図3:SiC MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの逆回復時の電流波形比較

図3:SiC MOSFETとオンセミ社のSiCカスコードJFETの逆回復時の電流波形比較

オンセミ社のSiCカスコードJFET特長③:ミラー容量がほとんどない

オンセミ社のSiCカスコードJFETを構成するSiC JFETは、ドレイン-ソース間容量Cdsがほとんどありません。厳密にいえば電極が対抗しているので、完全にゼロではありませんが、限りなくゼロに近い値になります。オンセミ社のSiCカスコードJFETとしてのゲート-ドレイン間容量Cgdを図4で考えると、SiC JFETのドレイン-ソース間容量Cds_sicSi MOSFETのゲート-ドレイン間容量のCds_siが直列で接続されているため、合成結果のCdsは非常に小さい値になります。

これは、帰還容量Crss(=Cgd)が小さいことを意味し、同期整流方式で同期FETとして使用したとき、スイッチ・ノードの急峻な立ち上がりによる誤ONを招く危険性が非常に小さくなります。

図4:オンセミ社のSiCカスコードJFETTの寄生容量

図4:オンセミ社のSiCカスコードJFETの寄生容量

FETには、図5に示すような寄生容量があります。ドレイン電圧が急上昇すると、CgdとCgsの容量の比によりゲートの電位が変化します。特に、ドレイン電圧が高い場合に影響が大きくなります。ドレイン電圧がゼロから600Vに変化したとき、Cgs/Cds比が1/100ならゲート電位は6V変化する計算です。ゲート・ドライバーの出力インピーダンスが高い場合には、注意が必要となります。

図5:オンセミ社のSiCカスコードJFETの寄生容量

図5:オンセミ社のSiCカスコードJFETの寄生容量

1は、実際のオンセミ社のSiCカスコードJFET(UJ4SC075006K4S)のデータシートから抜粋した寄生容量の例となります。この例ではCgs/Cds比は4/(8374-4)=1/2092となり、600Vのドレイン電圧の変化に対してゲート電位は0.3V以下の変動となるので、誤ONする可能性はとても低くなります。

Parameter

Symbol

Test Conditions

Value
Typ

Units

Input capacitance

Ciss

VDS=400V、VGS=0V

f=100kHz

8374

pF

Output capacitance

Coss

362

Reverse Transfer capacitance

Crss

4

表1:オンセミ社SiCカスコードJFETのUJ4SC075006K4Sの寄生容量

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