車載ネットワーク技術

最初に車載ネットワークついて簡単に触れたいと思います。車載ネットワーク技術が登場した理由はなぜでしょうか?

色々な答えがあると思いますが、電子技術の発達により自動車で求められる信頼性に耐えうるICを搭載したECUと呼ばれるものが登場、そしてそれらECU間の通信を安価・軽量・信頼性を持って行うため、車載ネットワーク技術が登場し発展してきたと考えられます。

車載ネットワーク技術として代表的なのはCANですが、登場したのは1990年代にさかのぼります。その後多様な車載ネットワーク技術が登場して量産車に搭載されています。主な規格・特徴・用途は以下の通りです。

車載ネットワーク規格名

CAN/CAN FD

LIN

Ethernet

MOST

主な規格団体

ISO

LIN Consortium

ISO

OPEN Alliance

IEEE

MOST Cooperation

ISOに規格移管

帯域

1M(HS CAN)

8M(CAN FD)

20k

100M

(100BASE-T1/100BASE-TX)

25M/50M/150M

(MOST25/MOST50/MOST150)

ケーブル物理層

UTP

 シングルワイヤー

 UTP

UTP/COAX/POF

トポロジー

バス

バス

ポイントゥポイント・スター

リング・ディジー

データータイプ

制御データ

 制御データ

 大容量パケットデータ

 制御データ

 オーディオデータ

 ビデオデータ

 大容量パケットデータ


これまで多種多様な車載ネットワーク技術が登場していますが、現在も発展し続けている背景としては、様々な新技術を取り込んだECUが開発されおり、それに伴って増大するECU間通信を担うためです。最新の自動車ではセンサーノードも含めると100以上のECUが搭載されていると言われています。皆さんが普段乗っている量産車にはこれら多種多様のECU間通信を行っている車載ネットワーク技術が用いられて活躍しており、今後も車載ネットワーク技術は自動車業界における重要な要素技術となります。

MOST®の登場

インフォテインメントという言葉はご存じでしょうか?インフォメーションとエンターテインメントを組み合わせた自動車業界の用語です。具体的に指すとすればカーナビ、ラジオ、CD/DVD/BD、そして後席で音楽やビデオを楽しめるようなエンターテインメントを総称してインフォテインメントと呼んでいます。液晶ディスプレーを用いたメーター・クラスターECUにもインフォテインメント要素は入り込んでいます。

そしてMOSTはインフォテインメント系のECUをターゲットにしたネットワーク技術として登場しました。MOST規格策定にあたり当時コアメンバーとなっていた、BMW、DAIMLER、Audi、HarmanそしてICサプライヤーとしてOASIS Silicon SystemsがMOST規格の策定を主導しました。マクニカで取り扱っていたOASIS Silicon SystemsはMOST対応製品をリリースしていましたが、後にSMSC社により買収。現在はSMSC社を買収したMicrochip社でMOST対応製品を取り扱っています。

MOST規格はMOST25、MOST50、MOST150と現在では3つのスピードグレードを選択することが可能です。またボディー、パワートレイン系ECUをターゲットにしていたCAN/LIN等車載ネットワーク技術とは異なる思想で規格が作りこまれており下記特徴があります。

  1. 制御データだけではなく、インフォテインメントで要求される映像・音声・パケットデータも重畳転送する仕組み
  2. 物理層だけではなく、上位層までも含んだ規格作り
  3. POF、COAX、UTPなど多種多様な物理層のサポート

オープンソースに対するMOST®の動向 AGL/ISO

自動車業界でもオープンソースというキーワードは以前より高まっております。背景として自動車への新技術搭載によりECU規模は年々拡大傾向にあり、そして当然ながらソフトウェア含む開発金額も大きくなっています。他の業界同様、車載に対応したオープンソースOSとしてAutomotive Grade Linux(通称:AGL)が登場して盛り上がりを見せています。MOSTコントローラーICであるINICはすでにAGLにも対応しておりオープンソースに対する動向に追従しています。

また規格に関する動向として、これまでMOST Cooperationにより次々とMOSTに関わる規格が策定されていましたが、現在はより一般的なISO規格によるMOST技術の規格化に向けて活動をしています。これはCANやLINが後にISOで規格化がなされている事と同様、MOSTも車載ネットワーク技術として幅広く浸透してきた証と言えます。

MOST25、MOST50、MOST150のテクノロジーに対応した量産車は200車種以上市場にリリースされています。2002年のMOST25テクノロジー搭載車リリース当初は欧州プレミアムOEM・車種での搭載が目立っておりましたが、2007年のMOST50テクノロジー搭載車登場とともに国内OEM含む幅広いOEM・車種で採用されるに至っております。すでにMOST50対応製品は第3世代の製品がリリースされており、機能拡張の柔軟性、そしてさらに廉価にシステムを構築できるような配慮がなされています。

※₁ ISO 21806-1 Road vehiclesとして規格策定

 

次回に続く

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