“車載製品” の設計・開発において、SoCCPUといった従来のIC よりも “FPGA” が有効に働くケースが増えてきています。

以前の記事では、車載製品のトレンドにおいて、FPGA の特長がどう活きるかを紹介しました。
特に “画像処理” を必要とする車載製品において、メリットを発揮できる場面が多くあります。

車載製品をあつかうメーカーにおいても、FPGA を検討材料の一つとして持つことが求められつつあるのではないでしょうか。


しかしながら、実際に FPGA の検討から導入までをおこなうとなると、具体的にどうすればいいのかわからない方も多いと思います。
FPGA は、従来のICとは設計・開発方法が異なるため、詳しい開発者が自社にいないケースがほとんどでしょう。

そこで、マクニカでは FPGA の検討・導入におけるサポートを無料でおこなっています。

お客様からのご要望をもとに、最適な FPGA を選定し、具体的な構成案を作成。より FPGA のメリットが活かせるご提案もさせていただきます。

今回の記事では、 『マクニカでの FPGA 検討・導入のサポート』 について紹介します。

お客様の工数を最小限に抑えられるような流れで進めていますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。

マクニカでの FPGA 検討・導入のサポート

まずは、FPGA 検討・導入のサポートについて、簡単に紹介します。大きく分けて以下 1-5 のステップでサポートを進めていきます。
お客様の方でご用意いただくのは、「1」で必要になるご要望をテキストで簡単にまとめたものだけです。
1-5 のステップにおいて、費用はいっさいかかりませんので、負担なくサポートをお受けいただけます。

■ FPGA 検討・導入サポートの流れ

 1.  実現したい機能・既存システムの課題をヒアリング(期間:約12週間)

 2.  FPGA で実現する具体的な構成案をマクニカから掲示(期間:約12週間)

 3.  FPGA の長所を活かしたメリットが得られる処理などを提案(期間:約12週間)

 4.  FPGA の型番確定および概算価格の掲示(期間:約12週間)

 5.  FPGA 設計開発費用・期間の掲示(期間:約2週間~1カ月)

1-4 については、それぞれ約12週間のお時間をいただいております。については内容により必要期間は大きく変わりますが、一般的には約2週間~1月で対応可能です。

ステップ1. 実現したい機能・既存システムの課題をヒアリング

最初に、実現したい機能、解決したい課題をお聞きします。ご要望を簡単に箇条書きでまとめたテキストや、パワーポイントの図をご提示いただくなどで構いません。

実際には、下記のようなご要望をメール・お問合せフォーム(リンク付ける)を通じて送っていただいております。まずは気軽な相談からというケースがほとんどです。

■ テキストでのご要望送付例

 ・ カメラのMIPIインターフェース3ch1chにマージしたい

 ・ SoCMIPI インターフェースをディスプレイに合わせてOpen-LDIに変換したい

■図でのご要望送付例

ステップ2. FPGA で実現する具体的な構成案をマクニカから掲示

次に、ご要望を実現するために必要なリソースをマクニカで検討します。検討すべきリソースはさまざまありますが、下記3つが主となります。

 ・ IPIntellectual Property)の選定

 ・ LUT (Look Up Table)の規模

 ・ I/0(InputOutput)ピンの数

おおよそのリソースが決まった段階で、FPGA 内部の回路構成案を作成していきます。まずは大まかな構成案を用意し、必要に応じて追加のヒアリングをしながら詳細を
つくり込んでいきます。できるだけ周辺ICを取り込み、シンプルな構造になるように工夫します。

初期の構成案例

オレンジ色の部分が FPGA 内部の回路構成案になります。緑色の吹き出しのような内容をお客様に追加ヒアリングしながら作成を進め、最終的にはお聞きした内容を
すべて実現できる構成案を数パターン提示します。

ステップ3. FPGA の長所を活かしたメリットの追加提案

さらに、周辺ICの取り込みだけでなく、FPGA のメリットが活きる追加処理も提案いたします。使用予定の車載製品に沿う形で FPGA の性能を最大限に活かし、
導入によるコストメリットが出るようにサポートいたします。メリットを追加提案した構成案についても、数パターン作成し提示いたします。

■追加提案例

 ・ Freeze detection機能の組み込み

 ・ ローカルディミング機能の組み込み

 ・ レーテンシーの改善

 ・ フレームレート向上

ステップ4. FPGA の型番確定および概算価格の掲示

ステップ「2」「3」で作成した構成案に合う FPGA を選定し、FPGA の概算価格を算出・提示いたします。その際に、使用予定の FPGA の型番、スペックもお伝えします。

構成案は、低コスト重視のもの、低消費電力重視のもの、追加提案の多いもの、小サイズなものなど、さまざまなバリエーションを用意します。
使用予定の車載製品に合うもの、予算などを考慮して、最適なデバイスを選定いたします。ちなみに、IPと設計ツールの使用で費用が発生するケースもあります。
その場合は、そちらの値段も合わせた概算価格をお出しします。IPと設計ツールの使用は無料で済むこともあり、構成案ごとに費用が発生するかどうかが違うのでご注意ください。

 

ステップ5. FPGA 設計開発費用・期間の掲示

ステップ「4」でお選びいただいた構成案を最終決定版とし、提携しているFPGA受託開発ベンダーと協力しながら詳細を詰めていきます。
そのうえで、FPGA 設計・開発にかかる全費用の見積もりと、FPGA 納品までの期間をご提示します。
“見積もりの内容” としては、最終的に使用する FPGA と必要リソースの見積もりに加えて、消費電力の見積もり、FPGAの設計・開発にかかる費用の見積もりを合わせたもの
となります。ご提示の見積もり、期間で合意いただけましたら、下記のフローでFPGAの設計・開発を進めていきます。

契約内容次第ではありますが、シミュレーション検証だけではなく、お客様の実機をお借りして、実機での動作確認・検証もFPGA受託開発ベンダーでお引き受けしておりますので、安心してお任せください。また、納品後のアフターサポートもご用意しています。

■ FPGA の設計・開発フロー

 [1] 仕様書策定

 [2] 仕様書作成

 [3] ロジック開発

 [4] 論理シミュレーション検証

 [5] 実施検証(オプション)

 [6] 成果物納品

マクニカでのFPGAの選定と構成案作成におけるポイント

最後に、マクニカがどのように最適な “FPGA” の選定をし、付加価値を追加した構成案をつくりあげているのかポイントをご紹介します。

FPGA は、IPと自作回路を組み合わせることにより、お客様のご要望を満たすオリジナルな IC を比較的少ない工数・コストで実現できるというものです。
どのFPGA を使い、どのような組み合わせの構成案にするかは、設計者の腕の見せ所でもあります。お客様のご要望をくみとり、知識と経験を駆使してつくりあげていきます。

 

画像処理に関する付加価値を含めたFPGA構成案の例

  オレンジ色の部分:FPGA の回路構成

  紺色の回路ブロック部分:IP部分

  灰色の回路ブロック部分:オリジナルのロジック回路部分

  緑色の回路ブロック部分:マクニカから提案する付加価値の部分

  例えば、上記のような構成案を作成するまでには以下の [1]~[6] もの過程が必要であり、どの過程においても丁寧な検討・確認が欠かせません。
  FPGA の検討・導入サポートにおいて、実際にマクニカではどのようなことをおこなっているのかも参考に、ご相談いただくか検討いただければと思います。  

[1] FPGA入出力I/Fの詳細仕様の検討と実現可否を検討

まずは、最適な FPGA を選ぶにあたり、入出力I/F部分の詳細仕様とマクニカであつかっている FPGA のスペックとを照らし合わせ、そもそもお客様のご要望が実現可能か検討
します。 FPGA は型番数でいうと数百もの種類がありますので、豊富な知識・経験が求められる作業です。

また、その際に FPGA 用のIPの用意があるか、あるいはオリジナルのロジック回路を設計する必要があるのかも確認します。

[2] 必要電源系統数とI/Oピンのアサインを検討

次に、電源系統数、電源電圧の確認をおこないます。入出力I/Fによって、供給すべき電源電圧は異なりますので、I/Oピンの数に不足が無いか、I/Oのスペックがお客様の仕様を満たせるものか。こちらも丁寧に確かめながら使用する FPGA を絞り込んでいきます。

[3] FPGA内部回路構成の検討   

PLL、 RAM、 FIFO、その他ロジックをどのように組み合わせて接続するのかも検討していきます。内部回路構成の組み合わせによって、使用するロジック容量が少なく済んだり、
消費電力を抑えたりすることも可能です。FPGA 開発ベンダーと協力し、LUT、RAM、DSPなど FPGA のリソースに応じて複数種類の構成案を考えます。

それと同時に、入出力I/F以外で必要になるIPについてもリストアップ、必要になる内部ロジック容量の概算値を算出しておきます。

[4] 各クロック周波数の確認 

さらに、FPGA の内部回路に必要なメモリ容量も算出します。PLL、 RAM、 FIFO、その他ロジックへの供給クロック系統の検討、
各種クロック周波数を検討します。各種クロック周波数については算出だけではなく、FPGA 内部動作周波数、内部で生成可能の周波数かどうか、実際の設計ツール上でも
確認をおこないます。後から、マクニカで選定した FPGA ではお客様仕様に適した周波数の対応ができない、といったことが起きないためにも入念なチェックが欠かせません。
また、このタイミングで必要であれば、消費電力算出ツールを使用して、概算の消費電力も算出します。

[5] FPGAの選定 

[1] ~ [4] を踏まえて、最適な FPGA を選定します。
ご説明してきた通り、FPGA を選定するにはさまざまな検討・調査が必要になります。具体的には、I/O本数、インターフェース対応可否、ロジック容量、内部メモリ使用率、
内部動作周波数対応可否、車載品質対応可否、IP提供可否、実績有無の確認、消費電力算出、などが最低限必要です。
お客様のみでおこなうには膨大な時間と工数がかかってしまいますので、それらすべてをこれまでの実績・経験をもとにマクニカでサポートさせていただいております。

 

[6] 付加価値・付加機能の検討 

FPGA の選定ができましたら、使用する FPGA のメリットを最大限に活かせるように、お客様のご要望に合う付加価値のご提案をさせていただきます。

例えば、上の図では緑色の回路ブロック部分が付加価値の部分になります。 FPGA 内部ロジックの使用していない領域で、画像処理(isp)、画像が正しく伝送出来ているか診断する安全機構回路(Freeze detection)、Local dimmingを追加しました。
これまでのサポート経験から付加価値・付加機能をご提案させていただくとともに、事前に課題などをお伺いできれば、ケースに応じて課題解決につながる提案も可能です。
マクニカでの無料サポートについて、ご理解いただけたのではないでしょうか。

どのステップにおいても大事にしているのは、お客様の課題と仕様実現に向き合い、一貫した視点で検討をおこなうことです。例えば、消費電力を抑えたいのか、設計期間を
早めて早期導入を目指したいのか、付加価値・付加機能により機能を向上させたいのか。何を重視するかによって各ステップでの検討内容は変わってきます。

お客様のご要望を第一に、よりメリットが出やすい提案例の制作を常に考えます。

また、協業パートナーやIPベンダーからも情報を取得することにより、提案例に幅を持たせられることもマクニカの強みです。

まとめ

今回の記事では、マクニカが無料でおこなっている FPGA 検討・導入のサポートについて紹介しました。サポートは下記 1-5 のステップで進んでいきます。
「お客様の方でご用意いただくのは、ステップ1 で必要になるご要望をテキストで簡単にまとめたもの」 だけです。サポートはお客様の工数を最小限に抑えられるような流れで進めています。

 ステップ1 実現したい機能・既存システムの課題をヒアリング

 ステップ2 FPGA で実現する具体的な構成案をマクニカから掲示

 ステップ3 FPGA の長所を活かしたメリットの追加提案

 ステップ4 FPGA の型番確定および概算価格の掲示

 ステップ5 FPGA 設計開発費用・期間の掲示

また、マクニカがどのように “最適な FPGA の選定” をし、“付加価値を追加した構成案”をつくりあげているのかポイントもご紹介しました。どのステップにおいても、お客様の課題と仕様実現に向き合い、よりメリットの出やすい提案例を考えることを大事にしています。また、外部からの情報収集も欠かさず、幅広い提案例を提示できるのもマクニカの強みです。

FPGA の検討・導入でお悩みや不安があれば、ぜひ、お気軽にマクニカにご相談ください。

本記事に関してご質問がありましたら、以下よりお問い合わせください。