WDMの伝送不良も予防可能な光信号評価ソリューション

昨今、通信量の増大化に伴い光通信にWDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重)技術が使われるようになってきました。

光信号の測定をされる方や、光トランシーバーモジュールを使用される方の中で、特に、WDMに関する以下の課題をお持ちの方もいらっしゃると思います。

  • WDMを使用した通信を検討中
  • WDM伝送の通信不良が起きている


そこで、今回の技術記事では光通信初心者向けに、WDMとは何かと、伝送不良が起きた場合におすすめできる評価ソリューションをご紹介します。

WDMとは

WDM(Wavelength Division Multiplexing)とは、複数の波長を使ってさまざまな情報を1本の光ファイバーで同時に伝送する技術です。波長分割多重とも呼ばれています。この技術によって、伝送速度を上げることができます。

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WDM技術イメージ図

WDMの伝送不良原因

WDM技術を使った伝送の通信不良が起きた場合、原因として以下が考えられます。

  • 波長ごとのパワー不足
  • 波長間の干渉 
  • 送信側と受信側で波長が合っていない


このような原因の解析及び未然に防ぐためには、次にご紹介する光信号評価ソリューションがおすすめです。

WDMを使った通信にも利用できる光信号評価ソリューション

本ソリューションでは、II-VI(旧Finisar)社が提供している製品を利用して、評価をおこなうソリューションです。

光信号評価ソリューションが持つ2つの特長

  1. 実際に通信不良が起きた際、光信号スペクトルの状態を確認するアプローチからの原因解析が可能
  2. 問題が起こってからだけでなく、伝送距離やコネクタの数から光の損失を推し量ることもできる。

使用する製品 (1):Waveshaper

光技術応用製品の研究開発や製造試験アプリケーション向けの、プログラマブルな光フィルター、光スイッチとして幅広く使用できます。また、フィルター特性を細かく調整することができるため、中心波長、帯域幅、スペクトラム形状、光の減衰率を調整可能です。

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Waveshaperにてできること

使用する製品 (2):Waveanalyzer

非常に高い解像度でリアルタイム計測に対応した光スペクトラムアナライザーで、主に光技術応用製品の研究開発や工場での量産試験に最適です。光トランシーバーで実績のあるII-VI(旧Finisar)社 内製レーザーを使ったCoherent detection技術により、ピコメーター解像度スペクトラム分析と最大10Hzのリアルタイム測定を可能にします。

※測定可能波長帯はC-bandです

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Waveanalyzerにてできること

活用例:数km分の光ファイバーを用意せずに検証

本ソリューションを活用すれば、Waveshaperを使用して伝送路の損失を模擬的に付加することで、数kmという光ファイバーを用意することなく事前に検証をすることができます。これから起こり得る問題を防ぐことにも役立ちます。

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伝送路の損失を模擬的に付加する場合の構成図

実際に使ってみた(1) ASP光源の確認

ASE (Amplified Spontaneous Emission)光源の出力にWaveshaperでFilterを掛け、Waveanalyzerでスペクトラム確認をおこないました。スペクトラムは以下の3パターンを作成しました。

  1. Center 193.5THz, bandwidth 0.5THz
  2. Gaussian 0.5THz Step (7 pulse)
  3. Gaussian 0.5THz Step custom(7 pulse & 194THz帯のみ減衰 )

装置構成

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装置構成

結果

下記の図をご覧いただくとわかるように、3パターンとも、それぞれ設定した通りに動作させることができました。

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ASP光源の確認結果

実際に使ってみた(2) 光トランシーバーの出力測定

次に、光トランシーバーモジュールの出力を測定しました。

装置構成

先ほどおこなった試験のASE source部分を光トランシーバーモジュールに変更するだけの構成です。

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装置構成

結果

先に光トランシーバーモジュール(SFP Module)の光出力をWaveanalyzerで測定してみました。

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試験イメージ図

今回のSFP Moduleの光源の特性はCenter 193.3566THz、光出力は-0.71dBmでした。

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SFP Moduleの光源の確認結果

さらにSFP Moduleの光出力に10dBのAttenuationを掛けてみました。光出力は-15.37dBmとなり、設定通りに減衰させていることがわかります。

次に、Waveshaperを使用して光スペクトラムを操作してみます。

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試験イメージ図

下記の図は単純にWaveshaperを間に入れたスペクトラム波形です。この時のBand Pass Filterは193.38THz Centerの0.5THz bandwidthです。その際の、光出力は193.3853THz centerで-5.24dBmでした。

この結果からWaveshaperのInsertion Lossがスペック通り4.5db(typ)であることが確認できました。左がWaveshaperの設定画面、右がWaveanalyzerの測定画面です。

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光スペクトラムを操作した場合の結果

ご紹介したソリューションの貸し出しも実施中

今回は、WDMを使った通信にも利用できる光信号評価ソリューションをご紹介しました。本記事で紹介した機能の他に、変調時のスペクトラムを再現させる機能や複数の波長を合成する機能など 、多くの機能を備えています。

詳しいスペックを確認されたい方は、こちらからご覧ください。

Waveshaper
Waveanalyzer

お問い合わせ

また、製品の導入を実際の使用感で決めかねている方には、ソリューションの貸し出しもおこなっています。ご興味のあるお客様は、ぜひ以下のフォームよりお問い合わせください。

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