センサーと水面との間に壁(遮蔽物)があっても水面を正しく検知できるか
前回の記事でご紹介した水面センサーを用いて、センサーと水面との間に壁(遮蔽物)があっても水面を検知できるかを調べました。
実験では、水面センサーと水面との間に遮蔽物を置き、水面までの距離を計測できるかを検証しました。実際の環境(たとえば、工業用タンクの薬液残量を確認する場合や、センサーを筐体の中に納める場合など)に近づけた検証をおこなうことで、より具体的なイメージを持っていただけると考えています。
そして、今後の応用可能性についても考察します。

実験の概要
今回の実験では、遮蔽物としていくつかの素材を用意し、水面センサーにどのような影響があるかを調べました。各素材が水面検出に与える影響を比較するため、一定の条件下でデータ収集をおこない、その結果を元に考察しました。
使用した機材と環境

実験に使用した機材および環境条件については、以下の通りです。水面センサーの検知能力に与える影響を調べるため、ビニールマット、木、金属など、様々な物理的特性を持つ素材を選定しました。
機材:
・水面センサー(仕様は前回記事を参照)
・遮蔽物各種(ビニールマット、木、金属、布など、複数の素材を使用)
・水を入れたケース
条件:
・水面までの距離は50cm
・水面のサイズは約20㎝四方
・実験は室内、環境条件を一定に保つ
これらの条件に基づき、遮蔽物の素材を変更して実験をおこないました。
実験結果
各遮蔽物が水面検知に与える影響について、素材ごとに異なる反応が見られました。
ビニールマット | ほとんど影響なく、その先にある水面までの距離を測定できた |
布 | ほとんど影響なく、その先にある水面までの距離を測定できた |
木 | 木に一定の反応は示すが、その先にある水面までの距離を測定できた |
樹脂 | 樹脂に一定の反応は示すが、その先にある水面までの距離を測定できた |
アクリル | アクリルに一定の反応は示すが、その先にある水面までの距離を測定できた |
アルミ | センサーと水面との間に金属があると、その先の水面を検知できなかった |
結果の考察
実験結果から、水面センサーと目標水面との間に別の素材が入り込んだ場合の影響を確認することができました。水面検知にまったく影響しない素材もあれば、逆に水面検知がまったくできなくなる素材もありました。
特に、金属はセンサーの検知性能を大きく妨げることが分かりました。一方、ビニールマットや布といった素材はほとんど影響せず、その先の水面までの距離を計測することができました。
木やアクリルなどは一定の反応を示しますが、水面検知が可能だと確認できました。正確に言えば、木も検知しますし、水面も検知しますので、どちらが水面の計測データなのかをアプリ側で判断する必要があります。
ただし、これらの実験材料が過剰に濡れている状態では、それ自身を水面として検出してしまうケースも見受けられたため、想定される実環境で十分な検証を実施したほうが良さそうです。
壁越しに測距できることのメリット
デザインの自由度が高く、防水性が高い筐体

この水面センサーは、光学センサー特有の窓が不要です。したがって、筐体に穴をあける必要がなく、防水信頼性の高い筐体を作れます。今回使用している水面センサーは、IP67相当の防水性能を備えており、河川や湖沼、水田など屋外環境に設置して、水しぶきや雨、雪の影響を受けても故障せずに稼働し続けます。
さらに、窓がないということは筐体デザインの自由度が高く、様々な設置条件に応じた柔軟なデザインが可能です。製品の見栄えも重視したいというユーザーニーズに応えることができます。
後付けできる
水面センサーと目標水面との間に壁(遮蔽物)があっても水面検知が可能という特性により、様々なユースケースが想定できます。人が容易に入ったり近づいたりすることができず、目に見えない場所の水面を測定できます。また、センサーを後から取り付けて検知可能(対象物を非破壊)という点も特徴的です。
たとえば、プラント工場の薬液タンクや大型の貯水タンクは密閉されていますが、蓋がゴムや樹脂素材でできていれば、水面センサーを蓋の上に設置することで、蓋を透過してタンク内の液面を検知することができます。他にも、船(バラスト水)や洪水監視システムなど、水滴や障害物の影響を受けにくい水面センサーは有効だと考えられます。
取得したデータをLPWA(Low Power Wide Area)でクラウドへ通信し、スマホに警報を通知するという形のIot化も考えられます。また、用途に応じて有線給電、有線通信に対応することも可能です。

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測定可能と思われるアプリケーションであっても周辺の影響を受けるため、実際に測定してみることをおすすめします。Webで仕入れた知識が通用しないことも多々あります。また、対象物を水面に限らずに実験しています。
例)
Q. 積雪は測定できる?
A. 踏み固められた積雪は測定可能。フワフワな新雪は要検討。
雪を測定した事例では「時間の経過で検出精度が変わりすぎてしまう」など、実測してはじめて見えてくる課題もありました。様々なユースケースを想定して導入前検証をおこなうためのサポートをいたします。
ものコン™では本技術にご興味がある方と一緒に実験したいと考えております。データの測定や実験条件についての相談も承りますので、ぜひお気軽にお問合わせください。
※尚、企業様向けサービスのため、該当しないお問い合わせにつきましてはご対応できかねますので何卒ご了承ください。
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