オシロスコープの周波数帯域と信号の立ち上がり時間

周波数帯域と信号の立ち上がり時間

オシロスコープを選択する際に、オシロスコープの周波数帯域と信号の立ち上がり時間との関係をまず考えると思います。
以前から、立ち上がり時間 tr は、帯域 fc に対して、tr=0.35/fcと言われてきました。
この点について少し検証してみます。

図1は、帯域を決める最も基本的なCR積分回路です。

図1. CR積分回路のステップ応答
図1. CR積分回路のステップ応答

この回路の周波数帯域、すなわち、1次LPF(Low Pass Filter : 低域通過フィルター)のfc(cut off frequency : 遮断周波数)は、fc=1/2πCRで表されます。
その伝達関数F(s)は、同図の式(1)のように表されます。
同式で、s=jωとおけば周波数特性が求められます。

ここでは、ステップ信号を加えたときの時間応答を求めます。
同図の式(2)のように、伝達関数F(s)にステップ信号 1/s を掛けます。

式(2)を解くために、図2の式(3)のように部分分数展開をします。

図2. 時間応答(ラプラス逆変換)
図2. 時間応答(ラプラス逆変換)

式(4)のように式(3)の分母を払って、両辺の s の係数を比較して、式(5)を得ます。

式(5)を式(3)に代入して、ラプラス逆変換して、式(6)の右辺の時間関数を得ます。

式(6)を時間軸に対して計算した結果が、図3です。

図3. 立ち上がり波形
図3. 立ち上がり波形

図3の波形の10%の点と90%の点の時間を求めます。

図4の式(7)と式(8)が、10%と90%を表します。

図4. 立ち上がり時間
図4. 立ち上がり時間

これらを整理して、式(9)および式(10)を得ます。
両式を辺々割り算して式(11)を得ます。
式(11)からt2-t1を求めると、式(12)となり、冒頭のtr=0.35/fcを得ました。

実際のオシロスコープのフィルターは、CRの積分回路ではなく、もっと次数の高いフィルターを用いていると思います。
これを7次のベッセルフィルターと想定して、tr と fc の関係を求めた結果については、以下を参照ください。

ラプラス変換を用いたベッセルフィルターの応答

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