ToFセンサーによる荷物サイズ計測 | 宅配料金を自動計算

コロナ禍やデジタル技術の進展もあって、ネット通販需要が拡大し、物流の取扱量が増加傾向にあります。その一方で、荷受けをする窓口では人手不足が課題となっており、“料金計算のための計測”も手作業で手間がかかっています。荷受けの窓口だけでなく、通販事業者、高速鉄道や航空事業者など、労働人口が減少していくなかで、物流のさまざまな運用の合理化が求められています。

これらの問題を解決するべく、“荷物サイズを瞬時で計測し料金を自動算出する” 端末の試作機を開発しました。センサーによって手軽に荷物のサイズを計測することで、物流現場や荷受け窓口の運用負担軽減が期待でき、エラーの可能性も減らします。このイノベーションがどのように可能になったのかをご紹介します。

宅配便の増加と、店頭での荷受・物流における課題

コロナ禍以降、日常生活におけるオンラインサービスの活用が進展し、物流事業に大きな影響を与えています。特に宅配便についてはネット通販やフリマアプリによる個人間売買などで需要が拡大しました。国土交通省の調査では、20201月〜20225月の宅配便取扱個数は、2019年の同月と比較して100%〜120%以上で推移していることがわかりました。

多くの宅配便を受け付ける窓口となっているコンビニエンスストア(コンビニ)では、人手不足やオーナー自身による長時間労働などの課題もあります。経産省が2018年に行った調査では、「従業員が不足している」と答えた店舗は61%となっています。今後労働人口が減少するなか、少しでも負担を減らす方法が求められています。

宅配便の料金は、荷物のサイズと発着地によって変化します。このためコンビニで荷受けをする際には、メジャーを使って荷物の外形三辺のサイズ(長さ・幅・深さ)を計測し、発着地を設定するなどのオペレーションが発生します。この荷受け作業は長い間業界の標準でしたが、レジで精算を待つ顧客の列ができることもしばしば見られます。

このオペレーションの課題を解決するべく、光の到達時間を計測して対象物までの距離計測ができるToFTime of Flight)センサーを使って、外形三辺の計測を手軽にできると考え、『荷物サイズ計測&料金自動算出端末』を開発しました。

ToF(Time of Flight)センサーとは

ToFセンサーは、光が物体から反射して戻ってくるまでの時間を測定することで、物体までの距離を計算します。つまり、ToFセンサーは物体のサイズと位置を正確に計測するのに非常に役立ちます。

ToFセンサーは、荷物サイズの瞬時計測における大きな可能性を秘めています。ToFセンサーを使用すると荷物のサイズを瞬時に正確に計測できます。これは人間がメジャーで計測するよりもはるかに高速で、しかも計測誤差も少ないのです。また、非常に高い精度と信頼性を提供します。これにより、運送会社など使用する側は自信を持って料金を計算し、顧客はその正確さを信頼することができます。

具体的な原理と仕組みは、以下の記事に詳しく記載されています。
人数カウントも可能なToFセンサーの原理とリファレンス・デザインの紹介

ToFセンサーを応用し、荷受け業務を効率化する「荷物サイズ計測&料金自動算出端末」

手動での計測は時間がかかるだけでなく、間違いの可能性もあります。従来のメジャーを使う方法では、大きな箱を測るのは非常に手間がかかり、作業者による計測誤差も生じます。こうした問題を解消するために、計測と料金計算のプロセスを自動化する必要があります。これにより時間と労力を節約し、より正確で信頼性のある結果を得ることができます。

今回開発した「荷物サイズ計測&料金自動算出端末PoC」は、ToFセンサー、OCRカメラ、LCDモニタ、HDMIWi-Fiのインターフェースなどで構成されており、上記の課題を解決できるものです。

荷物サイズ計測&料金自動算出端末

荷物サイズ計測&料金自動算出端末の試作機

ORAT-0092(OMS)
※ Infineon IRS2381Cチップ搭載
※ USBドングルも使用

配送元の設定

1. LCDモニタ画面上の配送元ボタンをタッチ
2. 地図により配送元を選択
3. 決定ボタンをタッチ
4. 配送元が設定されたことを確認

配送元の設定(LCDモニタタッチパネル)

配送先の設定

OCRカメラがあるのは、伝票に書かれた郵便番号を読み取って荷物が到着する地域を設定するためです。発送元の店舗の地域は決まっているので、システム上で事前に設定しておきます。

郵便番号のスキャンによる配送先設定

郵便番号のスキャンによる配送先設定の様子

サイズ測定

1. 箱の3辺が画面上に入るように端末を調整
2. シャッターボタンまたは画面にある測定ボタンで箱のサイズを測定
3. 画面に表示されたサイズおよび配送料を確認

ToFセンサーによる荷物サイズ測定

外形サイズの計測をする場合、端末を荷物にかざしシャッターボタンを押すと、ToFセンサーによって瞬時に計測します。荷受けする人は、LCDモニターで、計測結果のサイズを確認できます。発着地と外形サイズが確定したら、配送料を自動計算して画面に表示します。取得したデータはWi-Fi経由でPC等に転送して連携できます。

荷物サイズを瞬時に自動計測

荷物サイズ計測の様子

マクニカで行ったPoCでは、従来の手作業による荷受けに3分かかったのに対して、本端末による荷受けは10秒と大きく短縮されました。なお、今回のPoCの端末は汎用マイコンを使用しているため、より高い性能の機器構成では、読み取りやサイズ測定速度のさらなる短縮が見込めると考えています。

重量の計測も別システムで可能。ネット通販事業者や航空・鉄道の現場にも応用可能

宅配サービスによっては、重量の計測が必要な場合もあります。こういったケースでは以前、店舗運営最適化をサポートするソリューションとして開発した「AIスマート棚」を連携することができます。

これらのシステムによって、様々な物流の現場の効率化をサポートできると考えています。たとえば、日々たくさんの荷物を出荷する“ネット販売業者”では送料の見積作業の簡素化に役立てることができるでしょう。“航空会社” や “高速鉄道”では、乗客の荷物に応じて追加料金が生じる場合があり、荷物サイズの計測は顧客に委ねられる場合があります。システム化によって、交通サービスを利用する顧客の負担軽減も期待できます。

様々な現場へ幅広く応用が可能です

マクニカでは、センサーなどのデバイスと、ソフトウェアやAIなどのテクノロジーを活用し、様々なビジネス課題に対するソリューションを具現化しています。

自動化とデジタル化の進化は、更なる可能性を秘めています。IoTAIの融合により、荷物の追跡と管理がさらに効率的になります。データ分析と予測モデルの進歩により、将来的な需要の予測や物流管理の改善が可能になるでしょう。

今回は、コンビニでの荷受けにおける店舗と顧客双方のストレスを軽減するべく、宅配便の外形サイズ計測に活かした端末を開発しました。これはあらゆる物流の現場での従業員の運用負担を軽減するとともに、顧客体験の向上も期待できるソリューションです。

運送会社、空港の手荷物、工場での検品、靴のサイズ測定など、ほかにも様々な場所での活用が期待できます。マクニカものづくりコンサルティングではこの技術を応用し、それぞれのお客様に応じた端末やシステムの構築が可能です。ご関心のある方はぜひお問い合わせください。

ものづくりコンサルティングサービス

ものづくりコンサルティングサービス詳細は以下ボタンよりご参照ください