商業施設をはじめ、駅・空港などでは、セキュリティーのさらなる向上と不慮の事故を防ぐための安全対策の強化が求められています。そのためには、「人検知」の装置・システムをさらに進化させていく必要があります。開発の課題が解決できれば、その進化のスピードを一段と上げていくことができます。

商業施設などの「人検知」、目的を理解して課題解決

「駅・空港・商業施設」における「人検知」の目的は、セキュリティー対策と事故防止の両面があります。不特定多数の人たちが行き交う「駅・空港・商業施設」では、人ごみにまぎれて不審者が侵入してくるリスクがあります。不審者には、窃盗犯や麻薬・金塊などの運び屋だけでなく、テロリストが侵入してくる危険性もあります。また、「駅・空港・商業施設」には、危険なエリアや注意を要するスポットがあります。

そこに、人が故意または不注意で侵入してしまう恐れもあります。こうした侵入検知も重要なミッションとなっています。具体的には、「生体認証情報確認センサー・システム」「レーザースキャン・システム」「画像センサー・システム」「人感センサー(赤外線センサー)」「行動検知ソリューション」などの装置・システムが導入されています。

【解決すべき課題1】生体認証センサー・システムの開発

入館や決済などの認証は、スマートカードや暗証番号、パスワードなどが一般的ですが、カードの盗難や暗証番号漏えいなどの危険性があります。生体認証には、その心配はありませんが完全一致がむずかしいという課題があります。例えば、顔認証では、顔の特徴の経年変化やメガネの有無、目の充血などによって判読できない場合もあります。声や指紋認証にも同じような問題があります。

各生体認証ではこの問題を解決するために、スキャンされたサンプルからノイズや一時的な要素をすべて排除し、認証に使える特徴だけを残す努力を重ねています。それでも中程度のセキュリティーシステムでは、1 万回のうち1 回のミスがあります。この確率を限りなく100%に近づけ、「完全一致」を実現していくことが、「生体認証センサー・システム」の課題となっています。

【解決すべき課題2】レーザースキャン・システムの開発

レーザースキャン・システムは、スキャナーから照射されたレーザーによって、対象物の空間位置情報を取得する計測システムです。安全に離れた位置から非接触、ノンプリズムで、ごく短時間に大量かつ「面」的な「3 次元空間の点群座標」が取得でき、商業施設や空港の重要施設への不審者の侵入を防止します。

高精度検知方法で、物体の大きさ、移動距離、速度などのデータから、侵入者の入ってきた位置を特定します。位置情報をPTZ カメラに伝送することで、追尾することも可能です。レーザースキャン・システムは、3D 化も進み、技術的にはほぼ確立されています。これからのフェイズでは、3D レーザースキャン・システムを、どのような機器・装置に組み込み、どのような現象を補足していくのかなど、アプリケーション領域の拡大が課題です。

【解決すべき課題3】画像センサー・システムの開発

画像センサーによって、複雑な人の動きから移動方向を認識し、不審な人間を探知できるのが画像センサー・システムです。今後は、電力の供給が限られている環境での活用が見込まれており、低電力化が必要です。中でも、普段は低電力モードで画像確認をしていて、注意が必要な時に高解像度で見ることができる、というようなスケーラブルな低電力化が求められています。

また、クラウドとの密接な連携のためには、見たいものに即座にフォーカスできるリアルタイム性が、ますます重要となってきます。さらに、画像センサー・システムの膨大な画像デーをAI が解析することで、人がものを見る時に使えていなかった情報もクローズアップされ、人が見過ごしていたような映像情報が得られる可能性もあると期待されています。

【解決すべき課題4】人感センサー(赤外線センサー)開発

人感センサー(赤外線センサー)は、熱源(人体)から発生する赤外線を計測し、これによりエリア内の人体数、人体位置、人体移動を検出します。人体が停止している状態でも検知が可能で、滞在時間も計測できます。赤外線センサーの世界では、ToF(Time of Flight)化が課題となっています。ToF 技術では3次元の情報を得ることができるからです。

例えば正面から人が歩いてきたら自動ドアを開けるが、横方向から歩いてきてドアのそばを通過するだけであればドアを開けない。といったことが可能となります。さらに、人が走ってドアに近づいてくるのか、人がゆっくり歩いて近づいてくるのかで、ドアの開閉スピードをコントロールすることも可能となります。また、そこに何人の人がいるのか、人数を瞬時にカウントするときにも、ToF センサーは威力を発揮します。

【解決すべき課題5】行動検知システム開発

行動検知システムは、カメラ映像からリアルタイムで不審な行動・侵入者を自動検知。それを追尾して、危険な行動を効率的に監視することができます。インテリジェント・ビデオ解析システムを活用すれば、監視カメラ映像から行動や特徴をリアルタイムに解析し、異常検知でアラートを発することができます。これにより、トラブルや事故を抑止することができます。

今後は、ますます膨大な映像データの取得が可能となってきますが、その時に、映像データを受信するサーバー側の蓄積容量の膨大化や、解析に要する計算処理負荷の増加によるコスト高、大量の高精細映像を通信することによるネットワークの負荷増加といった課題が想定されています。必要最小限の特徴抽出映像情報と特徴情報を解析サーバーへ送り、最終的に「行動理解・予測」を低コストで高速に行うことのできるシステムが求められています。

まとめ

商業施設や駅・空港を人々が安心して利用できるようにするためには、事故や犯罪を未然に防止するための「人検知」装置・システムは不可欠です。万全な安全確保のためには、「人検知」装置・システムのさらなる精度向上、処理スピードのアップ、応用範囲の拡大などが求められています。商業施設や駅・空港の「人検知」装置・システムの開発には、エンジニアにとってチャレンジのしがいのあるフロンティアが広がっています。

センサーなどの詳細情報

今まで挙げたシステムに、活用できそうなセンサーなどの記事が公開されています。詳細情報にご興味がありましたら、ぜひ記事をご覧ください。

お問い合わせ

本記事に関しましてご質問がありましたら、以下よりお問い合わせください。