これまでインピーダンス測定器といえば、大きくて高価なベンチトップ型でした。「もし、小型で安価なモジュールボード型の測定器があれば、もっと便利に使えるのに」と考えたことはありませんか?
その願いをかなえるモジュールボードが、アナログ半導体の老舗メーカー、アナログ・デバイセズ社から提供されています。
安くて小さく、組み込みや持ち運びも容易な、モジュール型のインピーダンス・アナライザー「ADMX2001B」を紹介します。
アナログ・デバイセズがISS製品の販売を開始。ISSとは?
今回紹介するインピーダンス・アナライザー「ADMX2001B」は、アナログ・デバイセズが新たに展開をはじめたISS製品の1つです。ISS (Instrumentation System Solutions) 製品とは、計測機器市場向けのシステムソリューションのこと。部品単体ではなく、すぐに使えるモジュールとして提供され、製品への組み込みや評価用治具としての活用が想定されています。
ISS製品のラインナップには、インピーダンス・アナライザー以外にも、ソースメジャーユニット (SMU) や超低歪信号生成モジュール (SG) などがあります。
同社はモジュールにも力を入れています。アナログ分野で長年の実績がある同社製品で構成されたモジュールは、手軽さだけでなく性能面でも期待されています。


インピーダンスアナライザーモジュール


ソースメジャーユニット(SMU)


超低歪信号生成モジュール
ISS製品が登場した背景
ISS製品はなぜ登場したのでしょうか。従来のベンチトップ型測定器は、サイズが大きく、価格も数十万円から100万円以上と高額でした。そのため、以下のような課題がありました。
・装置への組み込みや保守現場などへの持ち運びが困難
・予算確保が難しく、社内承認手続きも煩雑
こうした課題を解決するのがISS製品です。小型モジュールとして提供されるため、持ち運びや組み込みなど、これまで難しかった用途にも対応できます。価格が抑えられているため、予算の確保も比較的容易です。
従来のベンチトップ型測定器について、サイズや価格の課題を感じている方は、アナログ・デバイセズのISS製品が有力な選択肢となるでしょう。
次項では、インピーダンス・アナライザー「ADMX2001B」を詳しく紹介します。
10万円台で実現するインピーダンス測定モジュール「ADMX2001B」
インピーダンス・アナライザーとは?
インピーダンス・アナライザーは、抵抗やインダクター、コンデンサーといった受動部品の特性を評価するための測定器です。測定項目はインピーダンス (Z)、アドミタンス (Y) 、抵抗 (R)、インダクタンス (L)、キャパシタンス (C) などがあります。
一般的に、LCRメーターが固定周波数で測定するのに対し、インピーダンス・アナライザーは周波数をスイープして測定することが可能です。
従来はベンチトップ型が基本ですが、ADMX2001Bはモジュールボードで提供されます。

ベンチトップ型が主流ですが、ADIから手のひらサイズのインピーダンス・アナライザーが登場です!
インピーダンス・アナライザー「ADMX2001B」の特長
インピーダンス・アナライザーADMX2001Bには以下の特長があります。
■ 超小型:38mm×63.5mmで組み込みも可能
38mm×63.5mmという超小型サイズ。LCRメーターと置き換えて、装置や検査治具への組み込みが可能です。
■ 高精度:0.05%の精度で特性を評価
基本精度0.05%。理想的な環境を整えることで、高精度で測定できます。
■ 高周波対応:最大10MHzまで測定
一般的な測定器は数MHz程度が主流ですが、ADMX2001は最大10MHzまでの測定が可能です。
■ 低価格:10万円台で導入可能
この性能を備えながら、10万円台で調達可能(2025年10月時点)。インピーダンス・アナライザーとしては低価格で、従来よりも容易に予算を確保できます。

ADMX2001Bの活用例
ADMX2001Bは、製品への組み込みや検査治具の置き換えを中心に、幅広い場面で活用できます。
特に効果的なのが、半導体や電子部品の出荷前検査での活用です。例えば、高価なベンチトップ型測定器を少ない台数でやりくりしている現場では、測定器の順番待ちが発生し、検査効率が低下する場合があります。
ADMX2001Bなら、ベンチトップ型測定器と同じ予算で複数台を導入できるため、検査能力を大幅に向上させて、効率化することが可能です。
その他にも、以下のようにさまざまな応用例が考えられます。
- タッチパネルの出荷前検査
- 静電容量式センサーの検査
- 材料・電池の性能評価(インピーダンス分光法)
- 水質管理
- 生体分析(皮膚インピーダンス測定など)
評価ボードとのセットで簡単に測定
ADMX2001Bは、評価ボード「EVAL-ADMX2001」と組み合わせることで、簡単に測定を始めることができます。

下の図では、中央の明るい緑色のボードが、本体であるADMX2001B。その外側にある濃い緑色のボードが評価ボードEVAL-ADMX2001です。本体を評価ボードに差し込み、4端子ケーブルで測定対象を挟むだけで、PC上に測定結果が表示されます。

ADMX2001Bで測定できること
18種類の測定モードを搭載
ADMX2001Bには、0~17までの合計18種類の測定モードが用意されています。一般的なC(キャパシタンス)、R(抵抗)、L(インダクタンス)に加えて、Q(品質係数)など、幅広い特性の評価が可能です。
例えば、
・モード0:直列のキャパシタンス (Cs) と抵抗値 (Rs)
・モード5:直列のインダクタンス (Ls) と品質係数 (Q)
のように、モードを切り替えるだけで、測定する対象を選択できます。
■ ADMX2001Bの18種類の測定モード
モード番号 | モード名 | 表示形式 | 単位(SI) |
0 | 直列等価容量と抵抗 | Cs, Rs | Farads, Ohms |
1 | 直列等価容量と損失係数 | Cs, D | Farads, Dimensionless |
2 | 直列等価容量とQ値 | Cs, Q | Farads, Dimensionless |
3 | インダクタンスと直列等価抵抗 | Ls, Rs | Henries, Ohms |
4 | 直列等価インダクタンスと損失係数 | Ls, D | Henries, Dimensionless |
5 | 直列等価インダクタンスとQ値 | Ls, Q | Henries, Dimensionless |
6 | インピーダンス(直交座標、デフォルト) | R, X | Ohms, Ohms |
7 | インピーダンス(絶対値と位相:度) | Z, deg | Ohms, Degrees |
8 | インピーダンス(絶対値と位相:ラジアン) | Z, rad | Ohms, Radians |
9 | 容量と並列等価抵抗 | Cp, Rp | Farads, Ohms |
10 | 並列等価容量と損失係数 | Cp, D | Farads, Dimensionless |
11 | 並列等価容量とQ値 | Cp, Q | Farads, Dimensionless |
12 | インダクタンスと並列等価抵抗 | Lp, Rp | Henries, Ohms |
13 | 並列等価インダクタンスと損失係数 | Lp, D | Henries, Dimensionless |
14 | 並列等価インダクタンスとQ値 | Lp, Q | Henries, Dimensionless |
15 | アドミタンス(直交座標) | G, B | Siemens, Siemens |
16 | アドミタンス(絶対値と位相:度) | Y, deg | Siemens, Degrees |
17 | アドミタンス(絶対値と位相:ラジアン) | Y, rad | Siemens, Radians |
18 | オフ | None | None |
Tera Termを使い、簡単に測定
ターミナルエミュレーター「Tera Term」を使って、簡単に測定が可能です。周波数や測定モード、印加電圧、平均化の回数など、必要な設定をコマンド入力でおこなうことができます。

GUIツールもリリース
さらに、GUIツールもリリースされています。直感的な画面操作で、スムーズに測定条件を設定し、手軽に結果を確認できます。コマンド操作とGUI画面を、お好みで使い分けることができます。

今回は、アナログ・デバイセズのISS製品から、インピーダンス・アナライザーADMX2001Bを紹介しました。
ADMX2001Bは、高信頼なアナログ・デバイセズの部品を搭載したモジュールボードで、10万円台という導入しやすい価格帯です。精度0.05%、最大10MHzの高周波測定に対応し、従来のベンチトップ型測定器では難しかった組み込みや持ち運びにも活用できます。
これまでサイズや予算の制約でお悩みだった技術者の方にとって、ADMX2001Bは有力な選択肢となるはずです。ぜひ検討の1つに加えてください。
評価ボードとのセットで、すぐにお試しいただくことが可能です。
ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。
商品の購入はこちら
メーカーサイト/その他関連リンクはこちら
お問い合わせ
本記事に関してご質問がありましたら、以下よりお問い合わせください。
アナログ・デバイセズ メーカー情報 Top へ
アナログ・デバイセズ メーカー情報 Top に戻りたい方は、以下をクリックしてください。