クラスDアンプは市場に数多く出回っており、選定に迷う設計者も多いのではないでしょうか。
そこでご紹介したいのが、オーディオ業界で実績豊富なアナログ・デバイセズ社のクラスDアンプです。
同社はDSPやオーディオコーデック、アンプなどのソリューションを幅広く展開しており、クラスDアンプについてもオーディオメーカーから高い評価を受けています。
ここでは、その中でも特に人気の高いクラスDアンプを紹介します。
Plug & Play クラスDアンプとは?
はじめに紹介するのは、簡単に使えるPlug & Play機能を備えたクラスDアンプです。
次の特長があり、手間のかかる設定を省いて、効率的な開発プロセスを実現できます。
Plug & Play クラスDアンプの特長
・I2Cレジスタ設定不要
煩雑なI2Cレジスタ設定が不要です。ソフトウェア開発の工数を大幅に削減できます。
・デジタルインターフェース採用
デジタルオーディオ入力は高い拡張性をもち、周辺機器と柔軟に接続できます。また優れたノイズ耐性を実現します。
・ビア不要で基板実装が可能
ビアを使わずに基板を実装できるため、製造コストを削減できます。また内側のピンを外側に接続できるTIPTOP WLPパッケージを採用しています。
Plug & Play クラスDアンプの設定方法
ゲインやチャンネルは、設定ピンやデジタルオーディオ信号の接続によって調整できます。
・ゲイン設定
設定ピンの固定方法によって増幅レベルを選択できます。
・チャンネル設定
デジタルオーディオ信号の接続ピンにより、チャンネルの選択が可能です。
各種のPCMおよびTDMクロック方式を自動的に認識します。
そのため、I2Cレジスタ設定が不要で、アナログアンプのように、シンプルに使用することができます。
Plug & Play クラスDアンプの人気製品
Plug & Play クラスDアンプから、2つの人気製品を紹介します。
【MAX98361】小型でコスト効率に優れたクラスDアンプ
MAX98361は、出力3.2W(4Ω、5V時)に対応。小型ポータブルBluetoothスピーカーやIOT機器、Li-ion 1セル動作の小型機器などに最適な製品です。
・特長
-I2Cプログラミング不要
-サンプルレートとビット深度を自動で設定
-クロックモニターによる故障検出
-エッジレート制御 (AEL) やスペクトラム拡散 (SSM) により、出力フィルターが不要
-コストの要因・パット内のビアが不要になるWLPパッケージ
・主な仕様
-単一電源動作 : 2.5V~5.5V
-出力:3.2W(4Ω、5V時)
-自己消費電流:2.2mA
-ダイナミックレンジ:110dB
-THD+N:0.009%(1kHz時)
-高効率:92% (RL = 8Ω、THD+N = 10%)
-サンプルレート:8kHz~96kHz
-9ピンWLP(1.35mm × 1.44mm、0.4mmピッチ)
Part |
Turn-on/off Volume ramp |
Turn-on Time (ms) |
Data Format ( LRCLK : Duty Cycle 50% ) |
Data Format |
MAX98361A |
Disabled |
1 |
I2S / Rising |
TDM / Rising |
MAX98361B |
Disabled |
1 |
Left-justified / Rising |
TDM / Falling |
MAX98361C |
Enabled |
13 |
I2S / Rising |
TDM / Rising |
MAX98361D |
Enabled |
13 |
Left-justified / Rising |
TDM / Falling |
型番が「MAX98361A/B/C/D」と4種類あります。違いは、電源投入時の音の立ち上がり特性や接続するオーディオ信号フォーマットなど。求める機能に合わせて適切な型番を選択すれば、ピンや配線の設定だけでシステムが組めるため、非常にシンプルに設計することが可能です。
【MAX98365】小型でコスト効率に優れた14VクラスDアンプ
MAX98365は、出力13.8W(8Ω、14V時)、17.6W(6Ω、14V時)に対応。より高出力が求められるBluetoothスピーカー、スマートスピーカーなどに適しています。
有名オーディオメーカーのスピーカー製品にも採用され、音質面でも高い評価を得ています。
・主な仕様
-広いアンプ電源範囲 : 3.0V~14V
-出力:13.8W(8Ω、14V時)
-出力:17.6W(6Ω、14V時)
-ダイナミックレンジ : 111.5dB
-THD+N:-85dB (1kHz)
-高効率:92.7%(7.0W、RL = 8Ω、VPVDD= 12V時)
-サンプル・レート:8kHz~192kHz
-12ピンWLP(1.21mm × 1.78mm、0.4mmピッチ)
Part |
Turn-on/off Volume ramp |
Turn-on Time (ms) |
Data Format ( LRCLK : Duty Cycle 50% ) |
Data Format |
MAX98365A |
Disabled |
1 |
I2S / Rising |
TDM / Rising |
MAX98365B |
Disabled |
1 |
Left-justified / Rising |
TDM / Falling |
MAX98365C |
Enabled |
13 |
I2S / Rising |
TDM / Rising |
MAX98365D |
Enabled |
13 |
Left-justified / Rising |
TDM / Falling |
その他の基本的な仕様はMAX98361と同様です。求める仕様に合わせて4種類の型番から選択することで、シンプルにシステムを設計できます。
簡単に使える評価環境
MAX98361シリーズ、MAX98365シリーズは、それぞれの型番に評価ボードが用意されており、PCとのインターフェースボードが併せて提供されます。
USB経由でPCに接続するだけで、簡単に音声再生が可能です。
電源用・スピーカー用のジャックも用意されており、保有の機器を用いて直ちに性能評価をおこなうことができます。
MAX98361 評価基板モデルと製品番号
評価基板 Model |
デバイス Part number |
MAX98361AEVSYS#WLP |
MAX98361A |
MAX98361BEVSYS#WLP |
MAX98361B |
MAX98361CEVSYS#WLP |
MAX98361C |
MAX98361DEVSYS#WLP |
MAX98361D |
MAX98365 評価基板モデル と 製品番号
評価基板 Model |
デバイス Part number |
MAX98365AEVSYS# |
MAX98365A |
MAX98365BEVSYS# |
MAX98365B |
MAX98365CEVSYS# |
MAX98365C |
MAX98365DEVSYS# |
MAX98365D |
クラスD/Gアンプとは?
次に紹介するのは、高効率と大音量を実現するクラスD/Gアンプです。クラスD/Gアンプとは、2つの電源電圧を信号レベルにより切り替える機能を組み込んだクラスDアンプです。音量が小さいときは低電圧で、音量が大きいときは高電圧で動作し、電力消費を最適化します。これにより、待機時や低音量時の消費電力を低く抑えながら、大音量での再生を実現できます。特にスマートスピーカーではニーズの高い仕組みです。
クラスD/Gアンプの特長
・信号レベルにより電源電圧を切り替え
信号レベルに応じて電源電圧を切り替えることで、待機時の消費電力を大幅に削減。省エネルギー性能と大音量再生を両立できます。
・リアルタイムIVセンシング
IVセンシング回路内蔵。スピーカー電流と電圧をリアルタイムにモニターすることが可能です。これによりスピーカー保護や、音響効果の改善等をシステム上で実現することができます。
・Hi-Fi音質
110dB以上の高ダイナミックレンジ、そして低ノイズを実現し、微細な音から迫力ある音まで、忠実な再現を可能にします。高音質機器に求められるスペックを満たしています。
クラスD/Gアンプの人気製品
クラスD/Gアンプから、2つの人気製品を紹介します。
【MAX98396】広い電源範囲、超音波対応、IVセンシング付き20VクラスD/Gアンプ
出力20W(8Ω、19V時)、19W(4Ω、14V時)、ピーク出力60W(4Ω、19V時)に対応。ハイレゾ再生と超音波の出力に対応しています。スマートスピーカーや小型オーディオに最適な製品で、市場での採用実績も豊富です。超音波出力によりスマートスピーカーなどの在室検知やジェスチャー操作機能を実現することができます。
・特長
-Class DGアンプ アーキテクチャー(電源レール VBATとPVDD)
-再生およびIVセンスパスの広帯域フィルター
-超音波アプリケーションを実現
-ブラウンアウト 防止エンジン (BPE)
-回路テスト用のトーンジェネレーター
-出力のレート制御 (AEL) とスペクトラム拡散変調 (SSM) によるEMI低減、フィルターレス動作を実現
-電源変動時に動的にヘッドルームを最適化 (DHT)、コンプレッサーとリミッター機能を提供
・主な仕様
-広い入力電源範囲:3V~20V
-出力電流制限:6.2A (min)
-自己消費電力(DGモード)
-12.7mW (VPVDD= 12V , VVBAT= 3.8V)
-18mW (VPVDD= 19V, VVBAT= 5.0V)
-サンプルレート:8kHz ~ 192kHz
-出力
-60W peak (4Ω, VPVDD=19V)
-20W (8Ω, VPVDD=19V)
-19W (4Ω, VPVDD=14V)
-出力ノイズ:15.5μVrms, A-weighted(DGモード)
-超音波信号のためのオーディオプロセッシングバイパス
【MAX98397】28V対応、IVセンシング、ブラウンアウト防止機能付きクラスD/Gアンプ
クラスD/Gアンプの最新モデル(2024年9月時点)。出力42W(8Ω、19V時)、26W(4Ω、16V時)、ピーク出力100W(8Ω、28V時)に対応可能です。ハイレゾ再生および超音波の出力に対応しています。
基本的な構成はMAX98396と共通ですが、より大きな出力を実現できます。サウンドバーなどの立体音響スピーカーや、より本格的なオーディオ製品にも適用可能な製品です。
・主な仕様
-広い入力電源範囲:3V~28V
-自己消費電力 (VVBAT=3.8V, VPVDD=20V):21mW
-出力ノイズ:21.5μVrms, A-weighted
-出力電流制限:8.0A (min)
-効率
-83% (1W/8Ω)、 93%peak (8Ω, VPVDD=24V)
-81% (1W/4Ω)、 90%peak (4Ω, VPVDD=24V)
-出力
-100W peak (4Ω, VPVDD=28V)
-42W (8Ω / VPVDD=28V / THD+N = 1%)
-26W (4Ω / VPVDD=16V / THD+N = 1%)
-サンプルレート:8~192kHz
比較表
クラスD/Gアンプの主な仕様の比較表です。最適な製品を選定するために、参考にしてください。
Parameter |
MAX98397 |
MAX98396 |
MAX98395 |
Configuration |
Mono |
||
Architecture |
Class-DG |
||
IV-Sense |
Yes |
Yes |
Yes |
Supply Range |
PVDD = 3V-28V, VBAT = 3V-5.5V |
PVDD = 3V-20V, VBAT: 3V-5.5V |
PVDD= 3V-14V, VBAT: 3V-5.5V |
Quiescent Power |
25.3mW (PVDD=24V, VBAT=5V) |
16.5mW (PVDD=12V, VBAT=5V) |
10.6mW (PVDD=12V, VBAT=5V) |
Noise (A-weighted) |
21.5µVRMS (PVDD: 24V, VBAT=5V) |
15.5µVRMS |
11µVRMS |
Output Power, THD+N ≤ 1% |
42W (28V, 8Ω ) 26W (16V, 4Ω) |
20W (PVDD=19V, 8Ω) 19W (PVDD=14V, 4Ω ) |
7.7W (PVDD=12V, 8Ω) 11.7W (PVDD=12V, 4Ω) |
THD+N |
-85dB (3W, 8Ω, fIN = 1kHz) |
-82dB (1W, 8Ω, fIN = 1kHz) |
-83dB (2W, 8Ω, fIN = 1kHz) |
Current Limit |
9A (Typ), 8A (Min) |
7A (Typ), 6.2A (Min) |
6A (Typ), 4.5A (Min) |
Efficiency |
81% (1W, 4Ω, PVDD=24V) |
82% (1W, 4Ω, PVDD=12V) |
81% (1W, 4Ω, PVDD=12V) |
Sample Rates |
8kHz-192kHz (Playback & IVSense) |
8kHz-192kHz (Playback & IVSense) |
8kHz-96kHz (Playback & IVSense) |
Package |
35-WLP (6.3mm2, 0.4mm pitch) |
35-WLP (6.5mm2, 0.4mm pitch) |
28-WLP (4.67mm2, 0.4mm pitch) |
アナログ・デバイセズ クラスDオーディオアンプ製品の全般機能
アナログ・デバイセズのオーディオアンプは、ノイズ低減や音質保護を実現するさまざまな技術を搭載しています。ここでは、その主な機能を紹介します。
ノイズ低減機能
デジタルアンプの特性であるEMI放射を低減しフィルターレス動作を実現する機能です。アナログ・デバイセズのクラスDアンプ全般に備わっています。
SSM(スペクトラム拡散変調)
PWMのスイッチング出力のため内部生成する基準波の周期をサイクルごとに僅かに変化させます。
これによりスイッチング周波数およびその高調波に集中するエネルギーを拡散します。
AEL(アクティブ放射制限)
出力FETの立ち上げと立ち下げ時間を最小にすること効率面では有利ですが、EMI放射の面では望ましくありません。AELは効率を維持しながらエッジレートをインテリジェントに制御して EMI放射を大幅に低減します。
ノイズフィルターが不要となるため、回路設計を簡素化できます。少ない部品でコンパクトな回路を構成でき、製品コストの削減にも効果的です。
安定した音声再生のための機能
デバイスの温度上昇時やバッテリー電圧の変動時に音質を保護する機能として、クラスD/Gアンプを中心に、以下の機能が備わっています。
サーマルフォルドバック
デバイスが設定温度を超えると、アッテネーターが作動して出力レベルを自動調整。デバイスの温度上昇を抑制し、サーマルシャットダウンによる出力停止を回避します。
DHT(ダイナミックヘッドルームトラッキング)
電源電圧の変動に対して、ヘッドルームを自動的に最適化する機能です。バッテリーなど電圧低下時に動的に制御をおこない、出力波形のクリッピングを防止、歪を抑えて安定した音質を維持します。
これらの機能により、安定した音声再生を実現できます。
オーディオアンプ製品ラインナップ
アナログ・デバイセズのオーディオアンプの製品ラインナップを紹介します。ここで紹介したもの以外にも、豊富な選択肢がそろっています。
今回は、アナログ・デバイセズのクラスDアンプ、クラスD/Gアンプの中から、オーディオメーカーに人気の製品をピックアップして紹介しました。
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アプリケーション例
- スマートスピーカー
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