失敗しない!USB Type-C コントローラーの選び方

USB Type-Cは現在広く採用され、スマートフォン、デジタルカメラ、スピーカー、ノートパソコンなど、さまざまな製品に搭載が広がっています。

自社製品への採用にあたり、「部品選定のポイントがわからない」「どのメーカーがラインナップを持っているのか知りたい」という技術者も増えているのではないでしょうか。

今回は、USB Type-Cについて、従来規格との違い、代表的な充電アーキテクチャーと課題、アプリケーションに合わせたソリューションの選び方、アナログ・デバイセズ社のソリューションラインナップを紹介します。ぜひ参考にしてください。

USB Type-Cをおさらい~従来規格と何が違う?~

USBは、基本規格として「USB Base Standard1.1, 2.0, 3.1)」が定められ、その補足事項として

-「Type-Cコネクター」
-「Battery Charging(BC) 1.2
-「USB Power Delivery(USB PD) 3.1

などの仕様が規定されています。USB Type-C充電と従来のUSB規格との違いを確認しましょう。

<USB Type-Cと従来規格の違い>

 

従来のUSB充電

(例. Type-A , Micro-B)

USB Type-C 充電

イメージ

   

コネクター ソースとシンクで異なる形状 ソースとシンクが同じ形状
4ピンまたは5ピンコネクター 24ピンコネクター
裏表あり リバーシブル
電流・電圧

・電圧:ほぼ常に5V

・電流:最大1.5A

・供給電力:最大7.5W

※BC1.2により急速充電に対応

Type-C標準規格か、USB PD対応かで異なる

<USB Type-C標準規格>

・電圧:5V

・電流:最大3A

・供給電力:最大15W

<USB PD規格>

・電圧:5-20V

・電流:最大5A

・供給電力:最大100W

USB Type-Cと従来規格の違い① コネクター

従来のUSB規格にはさまざまなコネクターの種類があり、ソース(給電側)がType-A、シンク(充電側)がMicro-Bというように、両端に異なる形状が使われていました。

USB Type-Cでは、ソースとシンクに同じ24ピンコネクターが使われます。プラグ(オス)とレセプタクル(メス)のピン配置が工夫され、裏表を逆にしても同種のピンが差し込まれるリバーシブルな構造になっています。

USB Type-Cと従来規格の違い② 電圧・電流

従来のUSB規格は最大7.5W (5V/1.5A) の電力供給にとどまるため、充電対象はスマートフォンなど小型の機器に限られていました。

USB Type-C
は、標準規格で最大15W (5V/3A) の電力供給に対応し、拡張規格のUSB PDでは、最大100W (20V/5A) までの電力供給が可能になっています。そのため、モニターやノートパソコンなど、幅広い機器に活用できるようになりました。

さて、USB Type-Cは従来規格よりも利便性が向上している一方、充電アーキテクチャーは複雑化しています。
そこで、次は設計者が知っておくべきUSB Type-Cの充電アーキテクチャーと課題を紹介します。

USB Type-Cの充電アーキテクチャーと実装の課題

まずは、USB Type-Cの充電アーキテクチャーをブロック図で示します。主要なブロックとして、BC1.2検出、CCピン検出、MCU、チャージャー、燃料ゲージがあります。

USB Type-Cの充電アーキテクチャー
USB Type-Cの充電アーキテクチャー

 

実際に、どのようなプロセスが必要なのでしょうか?矢印で流れを表してみましょう。

 

【従来のBC1.2仕様】

信号線D+D-を経由してBC1.2を検出し、ポートの対応状況を判断して、MCUでチャージャーを設定します。

レガシーBC 1.2ソース:最大7.5 W
レガシーBC 1.2ソース:最大7.5 W

MCUはBC 1.2検出をポーリングする

BC 1.2検出ブロックは、ポートのタイプ(DCP、CDPまたはSDP)を識別します。

MCUはBC 1.2ポートタイプを読み取る

MCUがチャージャーを設定して有効にする

【USB Type-C標準規格】

USB Type-Cでは、新たに追加されたCCピンを検出して、プラグの向きやソースとシンクの識別、対応する電圧・電流などを判断します。

標準Type-Cソース:最大15 W
標準Type-Cソース:最大15 W

MCUがケーブル接続用のCC検出ブロックをポーリング

CC Detectionはケーブルの向きと電源電流の能力を識別する

MCUはソース電流能力を読み取る

MCUがチャージャーを設定して有効にする

【USB PD対応時】

USD PDに対応する場合は、標準規格のネゴシエーションが完了した後、PDネゴシエーションが必要となります。

USB PD:最大100 W
USB PD:最大100 W

標準CC検出後にPDネゴシエーションがおこなわれる

CC DetectionがPDソースの機能を要求

ソースはPower Deliveryオブジェクト (PDO) をアドバタイズします。

MCUはPDOを読み取り、選択する

CC検出ブロックでPDO選択を確認

PDソースは新しいVBUSレベルを有効にする

MCUがチャージャーを設定して有効にする


このように、USB Type-Cの充電アーキテクチャーは、従来よりも煩雑になっています。課題をまとめると、次のようになります。

<USB Type-Cの実装の課題>

課題① ハードウェアブロックの増加にともなう大型化・コスト上昇

必要なハードウェアブロックが増加しているため、ソリューションサイズの大型化やコスト上昇を招いています。

課題② ソフトウェア制御の複雑化にともなう開発の長期化・市場投入の遅延

各ブロックの制御や通信タイミングの調整、USB仕様のノウハウが必要なため、ソフトウェア制御の難易度が上がっています。

これにより、開発サイクルが長期化し、市場投入遅延の要因となっています。

USB Type-C充電アプリケーション実装の課題
USB Type-C充電アプリケーション実装の課題

  
これらの課題を解決するためには、USB Type-Cを搭載するアプリケーションに応じて、適切な充電ソリューションを選ぶことが重要です。

それぞれのアプリケーションに最適なソリューションの選び方とは

それでは、それぞれのアプリケーションに適したUSB Type-C充電ソリューションを選ぶためには、どのような点に着目すればよいのでしょうか?

有力な方法として、以下の2つの基準に沿って検討することが挙げられます。

<充電ソリューションの選定基準>

選定基準① 求める電力と柔軟性

1つは、求める電力と柔軟性に基づいて選定するという視点です。下の図を参考にしてください。

設計目標と決定ガイド
設計目標と決定ガイド

縦軸は電力を表します。15W以下であれば、USB Type-C標準規格で対応可能です。15Wを超える場合は、USB PD対応が必要になります。

横軸は設計の柔軟性を表します。シンプルな構成を求めるか、柔軟性を求めるかで、選択するべきソリューションが異なります。

選定基準② セル数によるチャージャーのトポロジー

もう1つは、バッテリーのセル数によって、チャージャーのトポロジーの変更が必要になるという視点です。

実装されるセル数に応じて、バッテリーにかかる電圧が異なり、バック、ブースト、バックブーストといったトポロジーの選択に影響を与えます。

セル数による充電器トポロジーの選択
セル数による充電器トポロジーの選択

高集積なアナログ・デバイセズのソリューション

実際に、市場にはどのようなソリューションがあるのでしょうか。

例えば、下図のように15W以下では1チップ、15W以上では2チップに集積したソリューションがあり、設計の簡素化や開発期間の短縮が実現できます。
アナログ・デバイセズは、15W以下1チップソリューションをご提案できます。

USB Type-CおよびPower Delivery充電ソリューション
USB Type-CおよびPower Delivery充電ソリューション

アナログ・デバイセズのUSB Type-C給電充電ラインナップ(15W以下)

それでは、アナログ・デバイセズのラインナップから、対象アプリケーションごとにおすすめのソリューションを紹介しましょう。

【15W以下】手軽に実装できる1チップスタンドアローンチャージャー

まずは、15W以下で、シンプルに構成するアプリケーションの場合です。

<アプリケーション例>
・モバイルバッテリー
・充電ライト

こちらは、最大15Wまで充電できる1チップスタンドアローンチャージャーが最適です。

外付けMCUが不要で、100%ファームウェアフリーです。ソフトウェア設計の必要がなく、シンプルな充電を簡単に実装できます。

最大15Wまで充電可能なType-C
最大15Wまで充電可能なType-C

利点

-Type-CおよびBC 1.2の自動検出
-JEITAプロファイルにより安全な充電が可能
-抵抗またはデジタル入力ピンを使用して作成されたすべての構成
-100%ファームウェアフリー

欠点

-オンザフライパラメーター変更なし
-制限された充電電圧と電流オプション
-Type-Cポートのステータスがほとんど表示されない

 

ソリューションの一例が、MAX77757です。同等の回路を一般的な部品で構成する場合と比べて、およそ33%も小型化できるのが特長です。

また、高い充電効率も魅力となっています。

1チップソリューションでサイズを最小化
1チップソリューションでサイズを最小化

【15W以下】柔軟性が向上する1チップI²Cチャージャー

次に、電力15W以下で、MCUでの制御が必要なアプリケーションの場合です。

<アプリケーション例>
・決済用端末
・ハンディーターミナル

こちらは、最大15Wまで充電できる1チップI2Cチャージャーが最適です。I²CコマンドによりMCUを制御し、電圧・電流を細かく調整できます。

充電状態の監視や設計変更にも容易に対応できます。(型番例:MAX14748MAX77860

柔軟な設計が可能な1チップI²Cチャージャー
柔軟な設計が可能な1チップI²Cチャージャー

メリット

-Type-CおよびBC 1.2の自動検出
-JEITAプロファイルにより安全な充電が可能
-ファクトリーシップモード
-Type-Cポートステータスの完全な可視性
-I²Cによる設定のオーバーライド機能
-最大限の柔軟性を提供

デメリット

-I2Cコマンドのコーディングが必要
-スタンドアローンのソリューションよりも設計が比較的複雑

まとめ

ここまで、アナログ・デバイセズのUSB Type-C充電ソリューションを紹介しました。

小型・高効率で、アプリケーションのスピーディーな市場投入に貢献します。

ソリューションには評価ボードが用意されているため、お客さまご自身で簡単に試していただけます。

ご興味をお持ちの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

アプリケーション例

・スマートフォン、タブレット、ノートパソコン

・ポータブル機器

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