280兆個のセキュリティIDを持つ1線式通信インターフェース「1-Wire」とは?

機器の安全性の担保、知的財産の保護、通信の信頼性確保などに向けて、さまざまな機器でセキュリティ機能や認証機能の組み込みニーズが高まっています。「堅牢なセキュリティ機能を組み込みたいが、複雑なソフトウェア構成は避けたい」「ソフトウェアで組んで脆弱性が出ないか心配」とお悩みの設計者も多いのではないでしょうか。

ここでは、開発する製品にセキュリティ・認証機能を組み込みたい技術者の方に向けて、ハードウェアによるセキュリティ実装のメリットや1線式通信インターフェース「1-Wire」の特長を紹介します。

シンプルかつ堅牢なセキュリティとは ~ソフトウェアよりもハードウェア~

産業用機械、医療機器、コンピュータ機器など、多様な製品で、セキュリティ機能や認証機能の搭載ニーズが高まっています。

 

例えば、次のような例が代表的です。

・印刷機や複合機で、純正カートリッジのみを認識させて本体を保護したい

・医療機器に装着するディスポーザブル部品の使用回数・期限を厳格に管理し、衛生面を確保したい

・半導体製造装置のアクセサリーの認証をおこない、コピー品の使用を制限して安全性を保ちたい

 

こうしたセキュリティ機能は、何よりも堅牢であることが求められます。また、開発期間が短縮されるなか、設計や実装の簡素化も重要です。実現に向けて、ソフトウェアとハードウェアのどちらを採用するか、迷っている技術者の方も多いのではないでしょうか。

 

ソフトウェアによる実装とハードウェアによる実装を比較してみましょう。

 

ソフトウェアによるセキュリティ実装は、さまざまなセキュリティ機能を統合し、テストする必要があるため、実装コストが上がる傾向があります。その割に、改ざんや模倣が比較的容易なため、脆弱性を内包します。

 

ハードウェアによるセキュリティ実装は、特有のIDを持つセキュリティICを組み込むだけで実現可能です。他の機能との統合も容易で、実装コストを抑制できます。改ざんや模倣の難易度も上がるため、堅牢なセキュリティ機能を実現できます。

 

堅牢なセキュリティ機能を搭載したい方、複雑なソフトウェア構成を避けて設計を簡素化したい方には、ハードウェアでの実装がおすすめです。

ソフトウェア

ハードウェアのセキュアエレメント

実装コスト

高い、様々なセキュリティ機能を統合し、テストする必要がある

提供されるソフトウェアとの統合が容易である。フットプリントが小さい。

規格への適合性

低いセキュリティレベル

高いセキュリティレベル

耐侵襲攻撃性、ファームウェア抽出

非常に高い

サイドチャンネル/グリッチ耐性がある暗号

軽減できるが、業績に影響する。

評価が難しい。

非常に高い

セキュアブート

MCU依存

有り

TRNG (真の乱数発生器,鍵の生成とECDSAに不可欠)

通常 PRNG(擬似乱数生成器)

高い品質

パフォーマンス

HW アクセラレーター無では低い

高い

セキュア・アイデンティティー

いいえ、ユニークなIDを注入する必要があり、不変にするのは困難

あり:不変のUID+デジタル署名

プリプログラム

可能だが、安全なキーインジェクションプロセスが必要

チップメーカーにて:非常に安全

ソフトウェアとハードウェアのセキュリティの比較

1線式通信インターフェース「1-Wire」とは

ハードウェアによるセキュリティ実装にメリットの多い技術が、1線式のシリアル通信インターフェース規格「1-Wire」です。

 

従来、一般的に使われてきたI2Cインターフェースは2線式です。マスターとスレーブが、基準となるGNDのほかに、データ信号 (SDA) とクロック信号 (SCL) という2本の通信線でつながれる構成となっています。

 

また、3線式のSPIインターフェースも一般的に使われる通信方式の1つです。GNDのほかに、入力データ信号 (SDI)、出力データ信号 (SDO)、クロック信号 (SCK) という3本の通信線で構成されます。

 

これに対して1-Wire1線式の通信インターフェースです。GNDのほかに、1本の通信線 (DQ) で、マスターとスレーブが接続されます。従来の通信方式と比べて、次のようなメリットがあります。

1-Wireインターフェースの主なメリット

・通信線の本数を低減

 必要な通信線が少ないため、配線コストを低減できます。

 

約500メートルまでの長距離通信

 500メートル程度までの長距離通信をリピーター不要で実現できます。

 

通信線から電源供給が可能

 DQ線を経由して、スレーブに小電力を供給できるため、スレーブ側の電源検討の手間が省けます。

 

セキュリティ管理が可能

 すべてのデバイスが識別IDを持ち、高レベルのセキュリティを実装できます。

1-Wireインターフェース

1-Wireデバイスは、いずれも64-bitの固有の登録番号を持ちます。そのうち48-bitがユニークなシリアルナンバーとなっているため、約280兆個までセキュリティIDの振分けが可能となっています。

 

IP保護からIoTセキュリティまで、40億台以上のハードウェアセキュリティデバイスを販売しているアナログ・デバイセズの保有技術「1-Wire」で、堅牢なセキュリティ機能を実現できます。

1-Wireのセキュリティ製品「iButton」とは

1-Wireインターフェースで、特に注目されているデバイスの1つが「iButton」です。固有のIDを持つICチップを、厚さ16mmのステンレススチール缶にパッケージング。組込みの手間をかけることなく、どこにでも簡単に取付けて利用できるようにしています。

 

パッケージの耐久性が非常に高く、屋内外を問わず、ほぼどこにでも装着できます。落下、摩擦、衝撃のある厳しい環境でも、繰り返し書き込みや読み取りが可能です。10年間の耐久性が実用試験で検証されています。

 

缶には「リッド」と呼ばれるデータ接点と「ベース」と呼ばれる接地接点があり、2つの接点に接触させることで、1-Wireプロトコルを通してiButtonデバイスと通信できます 。

 

例えば、次のように活用されています。

・ドアノブ、鍵、キーホルダーなどに装着し、建物や部屋への入退室認証をおこなう

・時計、指輪などの手回り品に装着し、設備、自動車、PC、各種機器などのアクセス認証をおこなう

・温度管理が求められる薬剤や検体などに同梱し、輸送中の温度変化を記録するデータロガーとして利用する

 

ユニークなパッケージのiButtonを活用して、開発コスト、運用コストを大幅に低減したアプリケーションを実現できます。ぜひご検討ください。

iButtonパッケージ
iButtonパッケージ
iButton内のチップはステンレススチールによって保護
iButton内のチップはステンレススチールによって保護

1-Wire技術を使ったその他の製品ラインナップ

1-Wire技術は、セキュリティIC以外にも、変換IC、温度センサー、メモリーICなどに使われています。

 

「従来のI2CインターフェースやSPIインターフェースから省線化を図りたい」「認証系のメモリー機能を少ない通信線で実現したい」「温度監視用のデバイスを探している」といったユースケースでも、1-Wireデバイスのラインナップをご活用いただけます。

1-WireのセキュリティIC以外の製品群

変換(ブリッジ)

DS28E18
DS28E18

温度センサー

DS18B20
DS18B20

温度センサー「DS18B20」に急冷スプレーをかけて検証

この動画では、1-Wire製品の1つである温度センサー「DS18B20」に急冷スプレーをかけて動作を確認しています。
1-Wireの機能メリットもまとめてご紹介しています。ぜひご覧ください。

今回はセキュリティ実装に適した1線式の通信インターフェース「1-Wire」を紹介しました。

1-Wireデバイスを活用して、さまざまな製品に、シンプルで堅牢なセキュリティ機能を実装できます。

ご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

アプリケーション例

・ホームオートメーション

・医療現場でのディスポーサブル機器

・プリンターカートリッジ、トナー

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