FPGAなど多くの半導体デバイスは、複数の電源を必要とします。
その際に、電源シーケンスを守ることを要求されるため、電源のオン・オフ制御ピンや出力コンデンサのディスチャージ機能が必要となる場合があります。
FPGA用電源シーケンスの注意点と便利なシーケンスICのご紹介です。
シーケンスの前に確認すること
電源シーケンスを考える前に、電源ICやモジュールの出力電圧のスルーレートの確認が重要です。
電源シーケンスは、電源投入時のラッシュカレントを抑制するために守る必要があります。しかし、電源ICの出力電圧のスルーレートが急峻な場合、ラッシュカレントが大きくなります。
最近のスイッチング・レギュレータは、ソフトスタート機能を内蔵している製品もあります。周辺部品を少なくすることができ、回路がシンプルになるメリットがあります。
しかし、FPGAやDSPはなど、負荷変動に対する応答性能を良くするためにコンデンサを多く配置している場合には、電源立ち上げ時のラッシュ・カレントが大きくなる場合があります。
ソフト・スタート内蔵のスイッチング・レギュレータでは、スルーレート制御ができないため、ラッシュ・カレントが大きくなり、電圧が単調増加しないなどの、電源立ち上げの問題が発生する可能性がるので問題が無いか十分確認が必要です。

電源シーケンスの規定
電源の出力電圧のスルーレートが問題無いことが確認できたら、次に、電源シーケンスの確認です。
FPGAの立ち上げシーケンスは、複数の電源ラインをグルーピング化してAグループ1番目、Bグループ2番め・・・・と立ち上げシーケンスが決まっています。
図2は、Intel® FPGA Stratix® Vが要求する電源シーケンスになります。
このシーケンス順を守らないと、ラッシュ・カレントが大きく流れることにより信頼性に影響をあたえるので注意が必要です。
立ち下げ時も、立ち上げ時と逆の順番で電源を落としていく必要があります。

トラッキング機能
トラッキング機能を使用すると、グルーピングした電源の出力電圧が同時に立ち上がります。
一般的に、電源ICやモジュールは型番が異なると立ち上がり電圧のスルーレートは異なります。
その結果、電源を起動する信号が同時であっても出力電圧の立ち上がりがバラバラになります。
トラッキング機能を使うことで、スルーレートが異なる電源を使用したとしても、図3のように同じスルーレートで電圧の立ち上げ・立ち下げが可能となります。

アナログ・デバイセズ社のLTC2923は、トラッキング制御を行うことが可能なICです。

シーケンス制御
FPGAは複数の電源が必要となるため、抵抗・コンデンサによるシーケンス制御の設計は非常に複雑になります。
マイコンなどを使用することで自由にシーケンス制御を行うことも可能ですが、ソフトの開発が必要になることや12Vが主電源として供給される場合、最初にマイコンのみ電源供給する回路設計が必要になりハード設計も複雑になります。
さらに、最近のFPGAやDSPは、オフ・シーケンスも求められるため、抵抗・コンデンサによる制御ではオフ・シーケンスは制御できないため、シーケンス制御を行うためのソリューションが必要です。
アナログ・デバイセズ社のPSM(Power System Management)
FPGAの電源シーケンスには、アナログ・デバイセズ社のPSMシリーズ製品LTC2977を提案します。
PSM製品は、マイコンのようにソフトウェア開発を必要としません。図5のようなGUIにより内部のEEPROMのレジスタ設定を変更することにより、簡単に電源シーケンスをカスタマイズすることが可能です。

また、LTC2977の動作可能電圧範囲は、15Vであり産業機器用途で使用されている12V電源が直接入力可能であり、マイコンのようにFPGAとは別制御の電源回路を持つ必要がありません。
これにより、FPGAが要求する電源のオン/オフ・シーケンスをシンプルな回路構成で組むことが可能になります。