世界人口は2030年に85億人になるといわれています。農林水産省の飲食料市場規模の推計によると、2030年の世界における飲食料市場規模は、1,360兆円となります。これは、2015年(890兆円)と比較すると約1.5倍の数値です。
これらの人口増加、食料需要の増加に応えるためには、農業従事者だけでなく第2次、第3次産業までを含めた様々な業界が連携し、生産性の高い持続可能な農業と飲食関連産業の実現を目指していくことが求められています。
その解決方法として、今、食と農における技術革新 ”フード・アグリテック”が期待されています。
2030年を見据えた食と農における5つの課題
課題(1)農業における人手不足・後継者不足
少子高齢化による生産人口の縮小に加え、農業に対して抱く3kのイメージ(キツい・汚い・危険)、どうやって始めればいいかわからない、採算が取れるのか不安といった様々な要因で、農業従事者の数が増えないという問題があります。
また、農業における資金・資材調達手段が限られていることも要因になりかねません。
課題(2)育成ノウハウの偏り
農作物の安定生産、大量生産、品質保証は、熟練者の経験・ノウハウによって担保されています。このノウハウは、データ化・言語化されていないケースが多いのが実情です。
農業の新規参入者にとって、このノウハウの習得は非常に高い障壁となります。
課題(3)食料自給率低下・フードロスの増大
農水省は、カロリーベースの食料自給率を37.17%(2020年)→45%(2030年)に高める目標を掲げました。
食料自給率の低下は、地球温暖化や人手不足によりかつての食物輸出国が輸入国へと転じたり、世界情勢に起因する貿易規制により食料の流通量が減ったりすることで、安定した食料供給が困難になるなどのリスクが指摘されています。
また一方で、生産・輸入した食料も消費までの各工程でロスが発生しております。日本政府は、食品関連事業者及び家庭から排出される食品ロスについて、2000年度比で2030年度までに半減させることとしています。
課題(4)気候変動
露地栽培においては気温、日照変動の制御が不可能なため、気候によって収穫量が大きく変わります。
さらに、品種によっては特定地域の露地栽培にのみ依存しているケースもあり、風害・水害によるリスクが大きくなります。
課題(5)カーボンニュートラル実現に向けた化石燃料・化学肥料の削減
2050年カーボンニュートラル実現に向けて日本政府は2030年までに温室効果ガス排出46%削減を目標に掲げています。また、化学農薬に関しては50%削減、化学肥料に関しては30%削減という目標があります。
さらに、地政学的リスクやそれに伴う金融市場の変化等によって、石油・ガスなどエネルギーの入手性の問題が発生することでコストが高騰するリスクがあります。
効率的にエネルギーを使用し、化学肥料を減らすことが、カーボンニュートラル・コスト増の両面に貢献する重要な施策となります。
マクニカのフード・アグリテックソリューション
私たちは、これらの社会課題を踏まえ、「持続可能な地球環境を創る」を自社のマテリアリティ(重要課題)の一つとして据え、未来においても持続的・安定的な食料供給が行われる社会の実現のために貢献していきたいと考えています。
今まで最先端の半導体やIT商材の提供を通じた、産業と技術革新の基盤の創造範囲を更に拡げ、今後フード・アグリテック事業を通じ、生産基盤の強化による食料の安定供給を実現していきます。
AI・ロボティクスによる作業の効率化
-
AIを用いたノウハウの数値化
センサーによるデータ収集をもとにAIが分析を行うことで、今まで熟練者の経験に頼っていた育成ノウハウを誰でもすぐに実践できるようになります。
-
作業の効率化、自動収穫
収穫用ロボットやエクソスケルトンなど、労働力不足を補うためのロボティクスを提供します。
食料の安定供給と適量発注
-
AI/IoTを駆使したスマート農場
センサー、LED、AI、ロボット、クラウドサービスといった各テクノロジーを融合し、高効率で大量生産可能なスマート農場を実現、安定した予測可能な生産ができるソリューションを提供します。
-
メニュー販売量に合わせた食材の適正発注量の予測
AIを活用した販売予測を行い、フードロスの削減と販売機会の最小化を両立するソリューションを提供します。
再生可能資源を活用した循環型社会
-
高効率エネルギーを用いた生産
再生可能エネルギーの運用コストや電力使用量を大幅に削減することが可能なソリューションを提供します。
-
食品残渣処理による循環
農業生産から流通・加工・販売までの各工程で出た食品残渣を乾燥・バイオ等の処理を行い、肥料や飼料へ有効活用できるソリューションを提供します。
現在提供可能なソリューション
"食"と"農"の記憶を未来へつなげる FOOD AGRI TECH INCUBATION BASE
Food Agri Tech Incubation Baseとは、食と農の記憶を未来につなげるべく、事業や企業の枠を超えて新しい価値を生み出すオープンイノベーション空間です。
新横浜駅徒歩10分の、マクニカ本社オフィス横に立地しています。
新規就農検討者向けのわさび植物工場視察、社外パートナー企業向けの環境制御型農業をテーマとしたPoCを実施することが可能です。
Food Agri Tech Incubation Base周辺にはウッドデッキを設けており、カジュアルな打ち合わせやパーティの実施、地域との交流活動が可能です。
幻のわさびを守るコンテナ型植物工場 - 環境制御型農業による農業DX-
海外で本わさびの需要が増加する一方で国内でのわさび生産量は年々減少傾向にあり、わさびのアウトバウンドはおろか国内では市場価格の高騰が続いています。
本記事では、わさび栽培の問題を解決し豊かな食文化を未来へつなげるべく、先端技術を活用することで、省力化・精密化・高品質化を目指す「環境制御型農業」を40フィートのコンテナ内に実現した小規模な植物工場である「わさび栽培モジュール」について紹介します。
農業DXでお困りごとを改善します!施設園芸農業向けプラットフォームサービス
センサープラットフォームを主軸に収穫量想定や労務サポートおよび見える化、必要人員の予測、最適配置、事業者の育成ノウハウの数値モデル化を含めた経済合理性についてご提案します。
新規参入でも玄人同等の作物育成が出来るように育成コンサルタントまで実施します