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はじめに

放送機器では、長年にわたり実績を積み重ねてきたクロック構成が現在も広く採用されています。

過去の設計ノウハウが蓄積された信頼性の高い構成である一方、その中には登場から20年以上が経過したICが使用され続けているケースもあります。

この20年の間にクロックICは大きく進化し、性能の向上だけでなく、従来は外付け部品や複数のICで実現していた機能を1つのデバイスに集約できるようになってきました。

本記事では、従来のクロック構成をそのまま置き換えるのではなく、構成そのものを見直すことで、部品点数や実装面積、コストの削減につなげる新しい構成例をご紹介します。

放送機器で求められるクロック要件

放送機器では、映像や音声を正確なタイミングで処理するため、複数のクロックが使用されています。

たとえば映像系では、SDIなどの映像インターフェースに対応したビデオクロックが必要となるほか、

FPGAやSoC、各種インターフェース向けのシステムクロック、さらにはオーディオ処理用のクロックなど、用途に応じて異なる周波数のクロックが求められます。

また、単に必要な周波数のクロックを生成すればよいわけではありません。

放送機器では、外部から入力されるリファレンス信号に同期してシステム全体を動作させるGenlock(ゲンロック)が重要になります。

そのためクロック回路には、主に以下のような役割が求められます。

・外部リファレンス信号への同期
・映像処理に必要なビデオクロックの生成
・オーディオクロックの生成
・FPGA/SoCなどに必要な各種クロックの生成
・低ジッタなクロックの供給

こうした複数の要求を満たすため、同期処理、クロック生成、ジッタ低減、クロック分配といった機能を複数のデバイスで構成する設計が採用されてきました。

長年の実績を持つ堅実な構成である一方、これらの役割を改めて整理することで、クロック回路全体をよりシンプルにできる余地があります。

従来型のクロック構成を例に、どのような点が回路規模や部品点数の増加につながっているのかを見ていきます。

従来構成

クロック機能の集約という新しい考え方

近年のクロックデバイスは高機能化が進み、従来は複数のICや外付け部品で実現していた機能を、より少ないデバイスに集約できるようになっています。

今回ご紹介するのは、既存デバイスを単純に1対1で置き換える方法ではありません。

クロック構成そのものを見直し、必要な機能を集約することで、よりシンプルな構成を実現するアプローチです。

これにより、

・IC・周辺部品の削減
・基板実装面積の削減
・BOMコストの削減
・クロック回路のシンプル化

といったメリットが期待できます。

次に、従来構成と今回の提案構成を比較してみます。

提案構成

提案のキーとなるクロックデバイス 「Si5345」

今回のクロック構成の中心となるのが、スカイワークス社のSi5345です。

Si5345は、ジッタ低減とクロック生成機能を備え、最大10系統のクロック出力に対応しています。

入力周波数は8 kHzから対応しており、低い周波数のリファレンスクロックを入力できます。

任意周波数のクロック生成に対応しているため、放送機器で使用される74.25 MHz、148.5 MHz、297 MHz、

27 MHzなどのビデオクロックや、24.576 MHzのオーディオクロック、さらに周辺デバイスが必要とするクロックを1つのデバイスから生成する構成を検討できます。

Si5345の差動出力は最大1,028 MHz、LVCMOS出力は最大250 MHzに対応します。

また、入力クロックを喪失した際にもクロック出力を維持するHoldover機能や、出力周波数をデジタル制御するDCO(Digitally Controlled Oscillator)機能も備えています。

これらの機能を活用することで、従来は複数のクロックICや外付け部品で実現していた機能を集約し、よりシンプルなクロック構成を検討できます。

機能集約によって得られるメリット

クロック構成を見直し、これまで複数のデバイスで実現していた機能を集約することで、以下のような効果が期待できます。

部品点数の削減

クロック生成、ジッタ低減、クロック分配などの機能を集約することで、ICや外付け部品の削減、クロックツリーを単純化することができます。

実装面積の削減

部品点数を減らすことで、クロック回路が占める基板面積を抑え、基板設計の自由度を高めることができます。

BOMコストの削減

ICだけでなく、VCXOや周辺部品、電源回路まで含めて構成を見直すことで、トータルBOMコストの削減が期待できます。

どのような放送機器に適用できる?

このようなクロック構成の見直しは、複数の映像・システムクロックを必要とするさまざまな放送・映像機器で検討できます。

たとえば、

・放送用カメラ
・ビデオスイッチャー
・映像コンバーター
・エンコーダー/デコーダー
・SDI関連機器
・FPGAを中心とした映像処理機器

などが考えられます。

特に、既存製品のリニューアルや次世代機の開発など、クロック回路を見直すタイミングでは、

従来構成をそのまま踏襲するだけでなく、機能集約という観点から再検討してみる価値があります。

まとめ

放送機器で長年採用されてきたクロック構成は、豊富な採用実績と設計ノウハウを持つ堅実な構成です。

一方、この20年間でクロックデバイスも進化し、従来は複数のICや外付け部品で実現していた機能を、より少ないデバイスへ集約できるようになってきました。

重要なのは、既存デバイスを単純に1対1で置き換えることではありません。

クロック構成そのものを見直すことで、必要な機能を維持しながら、部品点数・実装面積・BOMコストの削減を目指す。

長年使われてきたクロック回路だからこそ、次世代製品の開発を機に、一度その構成を見直してみてはいかがでしょうか。

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