
車両電動化における高電圧化 および 絶縁システムの必要性
自動車に使用されるインバーター回路を例に挙げますが、DCをACに変換する回路になり、DC(1次側)から制御信号を送り、MOSFET、IGBT、SiCなどのスイッチ回路の先にAC(2次側)を出力するような回路では絶縁が必要になるケースが多くあります。
昨今の電動化に伴い、駆動モーターなどに求められる電力[W]が高くなってきています。
電力を稼ぐための手法の一つに高電圧化があげられ、制御信号の送信側となる1次側は低電圧、スイッチ回路を含めた駆動用電圧/電流が印加される2次側は高電圧の構成がとられます。
この扱う電圧が異なる1次側と2次側を絶縁することで以下のメリットが得られます。
① 安全性の確保
高電圧が印加される回路が絶縁されているため、制御信号を送る回路を高電圧系から分離することが可能です。
安全性を考慮してアプリケーション、高電圧が何Vかによって絶縁グレードが安全基準として異なるケースもあります。
その安全基準を満たせば信頼性の観点でもメリットになります。
② GNDループの分割が可能
1次側(低電圧)と2次側(高電圧)のGNDは共有されないため、GNDループを独立したものにできます。
これにより、1次側の制御信号を送信する回路を、誤動作の要因となるノイズ発生源となる2次側の回路から分離することが可能です。
絶縁が用いられる高電圧アプリケーション例
➀OBC/DCDC
➁PTCヒーター
③電動コンプレッサー
④トラクションインバーター
・EV2輪
・EV4輪、BEV4輪、HEV4輪
・電動CAV関連(商用車、建機、農機等)
⑤その他モーター駆動用インバーター
・電動ポンプ
・電動ファン 等
Infineon電流センサーのメリット
コアレス電流センサーのメリット
Infineon製の電流センサーはコアレス方式になっており、且つ絶縁された状態で電流検出が可能のため、コアレス方式そのもののメリット+絶縁機構の簡略化のメリットの2つのメリットがあります。
その他の電流検出方式としてシャント抵抗式、コア有り方式がありますが、コアレス方式との比較を下記図にて示します。

方式 |
メリット |
デメリット |
コアレス |
省サイズ可能(磁気コア不要のため) 低発熱 絶縁設計の簡略化が可能 バスバー、基板上両方の電流検出が可能 |
機構設計が複雑になるケースあり |
コア有り |
低発熱 絶縁設計の簡略化が可能 |
サイズ大、重量多 磁気コア自体の特性も加味する必要あり バスバーのみ電流検出可能 |
シャント抵抗 |
市場実績豊富 |
シャント抵抗に電流を流すため、発熱を考慮した熱設計が必要 バスバー使用不可絶縁デバイスによる信号伝達が必要 |
Infineon独自の製品コンセプトによるメリット
ラインナップ全体として差動検出方式のため外乱ノイズ耐性があります。
したがって、ノイズ除去用の磁気シールドが不要であることと集磁コアが不要のためサイズと重量の削減に大きく貢献できること、更には機構設計の自由度が高くセンサー搭載位置等の融通が利くことがメリットとなります。
コアレス電流センサーと他の電流検出のタイプとの比較、および差動検出等の特徴をまとめたページもございますので、ぜひご確認ください。
絶縁された状態の電流検出
Infineon製の電流センサーの特徴として、絶縁された状態で電流検出が可能、という点が挙げられます。
被測定電流経路をパッケージに内部に流すタイプとパッケージ外部に流れる電流を検知するタイプで絶縁の考え方は異なりますが、下記にて複数タイプある電流経路と電流センサーICのマウント方法についてご紹介します。
電流レンジ別マウント方法
マウント方法が複数あるとご説明しましたが、これは測定電流の電流レンジによって分かれております。

① iCR PCB上に "はんだ付け"
電流レンジ:~120A
概要:パッケージ内部に電流を流し、電流を検知する方法
絶縁:パッケージ内部で、電流が流れる箇所から絶縁された箇所にホール素子が配置
提案可能パッケージ:TISON-8
② eCR PCB上に "はんだ付け"
電流レンジ:~200A
概要:センサーをPCB上に"はんだ付け"し、そのPCB内に流れる電流を検知する方法
絶縁:PCBに"はんだ付け"する端子のうち電流経路の上側にくる端子は、
センサーとしての機能に不要な端子になっており、センサー固定用としてのものになります。
電流経路からはずれている端子が入力、出力端子になっているため絶縁測定が可能になります。
提案可能パッケージ:TDSO-16
③ eCR バスバー平行
電流レンジ:~400A
概要:センサー外側にあるバスバーに流れる電流を検知する方法
バスバーとセンサーの位置関係は平行に配置
絶縁:機構上、センサーとバスバーの間に空間距離あり
提案可能パッケージ:TDSO-16/VSON-6
④ eCR バスバー垂直
電流レンジ:400A~
概要:センサー外側にバスバーに対し、センサーをバスバーに垂直に挿入する方法
絶縁:機構上、センサーとバスバーの間に空間距離あり
提案可能パッケージ:VSON-6
※iCR…パッケージ内部に電流を流し、電流を検出する方式
※eCR…パッケージ外部に流れる電流を検出する方式
電流検出に必要な機構設計
先述の内容で4タイプのマウント方法をご紹介しましたが、それぞれ別記事でご紹介している通り、外乱ノイズ耐性を上げるため差動で電流検出を行っています。
そのため磁気シールド等も不要なのですが、これを実現するために一部のマウント方法においては、機構設計を追加で行っていただく必要がございます。
eCR PCB上に "はんだ付け"
下図はパッケージ外部の電流検出でPCB上に "はんだ付け"するタイプの一例になります。
上半分の赤い部分が被測定電流経路になり、図の下部分にある赤い細い線が、信号線です。
被測定電流経路に黒いスリットがありますが、こちらを追加いただくことにより電流がカーブし(黄色矢印)図の垂直方向に磁界が発生し、直上のIC内にあるホール素子で検出する形になります。

eCR PCB上に "はんだ付け"レイアウト例
eCR バスバー平行
下図はパッケージ外部の電流検出で、バスバーに対しセンサー基板が平行に配置されるタイプのレイアウト例および検出機構の模式図になります。
上記PCBに "はんだ付け"タイプと同様に、バスバーに電流をカーブさせるためのスリットを追加していただく必要があります。
上記タイプも同様ですが、この2つのスリットはIC内部にホール素子が2つあるので、それぞれに垂直な磁束が入るようにするためです。

eCR バスバー平行タイプのレイアウト例 および検出機構
eCR バスバー垂直
下図はパッケージ外部の電流検出で、バスバーに対し垂直にセンサーを挿入するタイプのレイアウト例および検出機構の模式図になります。
こちらのタイプは、下右図のようにバスバーの中心にセンサー挿入用の穴をあけて頂き、
バスバーの周りに発生する楕円状の磁界をパッケージ内部の2つのホール素子に入り込むような構造になっております。

eCR バスバー垂直タイプのレイアウト例 および検出機構
機構設計時のサポート
先述した通り、バスバーやPCBなどの電流経路にスリットを入れていただく必要があり、それにより電流経路の抵抗も少し増えてしまいますが、スリットの幅や位置、バスバーの厚みなどに応じて磁束密度がどのようになるか、電流経路の抵抗値増加量などもシミュレーションに検証することが可能です。
InfineonのWebページに機構設計のシミュレーションツールもありますので、ぜひご活用ください。
もちろん、絶縁のための必要検証事項等についてもご相談いただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
評価ボード
パッケージの内部を流れる電流を検出するタイプ(iCR)や、パッケージ外部の電流を検出するタイプ(eCR)、それぞれの構成の評価ボードを取り揃えております。
こちらは下記「電流センサー 製品ページ」リンク内に資料等も格納されておりますので、ご確認ください。
評価ボードとしては、センサーに内蔵されているEEPROMの設定を、ご評価環境で任意に書き換えていただくためのプログラマーキットと、実際にセンサーが搭載されたボードがございます。
センサーの機能として、ゲイン設定や過電流の閾値設定を任意に変えていただけるため、ぜひプログラマーキットもご活用ください。
センサー搭載ボードは、ハーネス等をつなげるだけで電流検出が可能になるので、性能評価の手間をより省略することができます。
評価ボード外観 |
評価ボード |
Status: active and preferred -TLE4972 EVAL VER BAR is a current measurement evaluation tool capable to |
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Status: active and preferred -TLE4972 EVAL VER BAR is a current measurement evaluation tool capable to |
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Status: active and preferred -TLE4972 EVAL LAT BAR is a current measurement evaluation tool capable to |
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Status: active and preferred -TLE4972 EVAL STD PCB is current measurement evaluation tool capable to |
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-TLE4972 EVAL STD PCB is current measurement evaluation tool capable to |
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Status: active and preferred -TLI4971 EVAL 120A is current measurement evaluation tool capable to |
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Status: active and preferred -XENSIV™ magnetic current sensor TLI4971-A120T |
新製品 TLE4972:3.3V駆動のコアレス電流センサー(車載規格対応品)
これまでご紹介した検出タイプのうち、パッケージ外部の電流を検出するタイプとしてリリースされた新製品「TLE4972」を最後にご紹介いたします。
【製品特徴】
●幅広い測定範囲:0 to 31mT(0A to 2000A)
●3.3V動作電圧
●アナログ出力(シングルエンド、準/完全差動出力)
●高速測定が可能な高いバンド幅(typ. 210kHz)
●2つの内蔵ホール素子により外乱に強い差動測定
●高速かつ2系統の過電流検出機能を内蔵
●経年および温度によらない高精度電流センス
-温度センサーおよび応力センサー内蔵
●内蔵EEPROMによる各種パラメータの設定が可能
●ISO26262準拠:ASIL-B対応可能
Macnica-Mouserで購入
お問い合わせ/お見積もり
本製品以外にも各種センサー製品および、その他製品群取り扱いございますので、下記リンクもご参照ください。