
コアレス電流センサーとは?
電流センサーは、基板上の電流パスに流れる電流や、バスバーを流れる電流を検出するセンサーです。電流が流れる経路の周辺には磁場が発生するため、電流センサー内部の磁気センサーで磁気を検出し、その磁気情報を基に電流量に比例した信号をフィードバックします。この磁気を用いる電流センサーの中で、磁気コアを使用しないで検出するものをコアレス電流センサーといいます。
電流検出方式の比較
電流を検出する方式は、下記3つの方式があります。
シャント抵抗方式
被測定経路にシャント抵抗を配置し、シャント抵抗の両端の電圧を読み取ることで電流量を検出する方式です。
電磁式コア有り方式
磁気コアを用いて被測定経路の周囲に発生する磁力を集磁し、電流センサー内部の磁気センサーで電流量を検出する方式です。
電磁式コアレス方式
磁気コアを使用せず基板上の電流パスやバスバーを流れる電流をIC内に引き込み、電流センサー内部の磁気センサーで電流量を検出する方式です。
各方式の特長

方式 | メリット | デメリット |
磁気式コアレス |
・省サイズ(磁気コアが不要のため) ・低発熱 ・絶縁設計の簡略化 ・バスバー、基板上の両方の電流検出が可能 |
・機構設計が複雑 ・製品単体での価格 |
磁気式コア有り |
・低発熱 ・絶縁設計の簡略化 |
・サイズと体積の大きさ ・磁気コア自体の特性の考慮 ・バスバーの電流検出のみ可能 |
シャント抵抗 | ・市場実績豊富 |
・発熱対策 (シャント抵抗に電流を流すため、発熱を考慮した熱設計が重要) ・バスバーの電流検出ができない ・絶縁デバイスによる信号伝達が必要 |
TLI4971/TLE497* シリーズラインナップ
Infineonは、下記の民生・産機、および車載用途向けのコアレス電流センサ―を提供しております。

ラインナップは大きく、iCRタイプ(TLI4971, TLE4971, TLE4973)とeCRタイプ(TLE4972, TLE4973)に分かれます。
iCRタイプはセンサー素子と電流経路が一体化しており、電流検出のための構造がパッケージ内部で最適化されいるためコンパクトですが、eCRタイプはセンサー素子と電流経路が独立しており、電流検出のための構造について機構設計含めた検証が必要となります。
各ラインナップの詳細と、デバイス選定については下記資料をダウンロードの上、ご不明点につきましては弊社へお問い合わせください。
【初めてでも分かる】 コアレス電流センサーの特徴と実装のポイント
目次:
1.コアレス電流センサーの概要
2.コアレス電流センサーのメリット
3.電流センサーの実装方法とサポート
4.製品ラインナップ

以下は、比較的実装が簡易的である民生・産業用途向けのTLI4971シリーズについて紹介いたします。
TLI4971:3.3V駆動のコアレス電流センサー
製品特長
- 選択可能な電流検出範囲:±25A、±50A、±75A、±120A
- 3.3V駆動
- アナログ出力
- 高速測定が可能な高いバンド幅:typ.240kHz
- 2つの内蔵ホール素子により外乱に強い差動測定
- 高速かつ2系統の過電流検出機能を内蔵
- 経年および温度によらない高精度電流センス(温度センサーおよび応力センサー内蔵)
- 内蔵EEPROMによる各種パラメーターの設定が可能
ブロック図 / パッケージ

ターゲットアプリケーション
- 電動装置(最大690Vms)
- 太陽光発電インバーター
- 汎用的及びGaNベースのインバーター
- 充電器
- 電源供給装置
センシング方式

TLI4971シリーズは、パッケージ内部に2つのホール素子が内蔵されており、これらのホール素子を使用して電流値を差動で測定をおこないます。
横の図の通り、パッケージ内部の2つホール素子(黒矢印)に対し、こちらの製品はパッケージの内部に電流を流して検知するタイプで、内部では図のような電流の流れ方(赤矢印)をします。
内部で電流がカーブするためここで逆向きの磁束が発生するため(緑矢印)、この磁束をそれぞれのホール素子でセンシングする方式です。図のように被測定電流経路にスリットを入れ込むことが必要ではありますが、検討いただけやすい製品となっております。
電流値の差動測定
本製品は、差動測定をおこなうため外乱ノイズに強く、外乱ノイズを除去するためのシールドが不要になる可能性があります。
➀ 被測定電流経路の電流から、V1、V2の磁束(赤矢印)を検知します。
➁ 出力としては、V1とV2の向きが逆のため、差動によりメイン磁束の出力が得られます。
③ 外部のノイズ源となる電流経路からの磁束として、V3、V4(青矢印)が発生します。
④ V3とV4の向きが同じになるので、差動計算の際にノイズ除去が可能です。

過電流検出機構
先述の通り、本製品は過電流検出機構を内蔵しており、通常の電流測定出力よりも高速に過電流を検知し、フラグを立てる仕様になります。内部で独立した2つの過電流検知の機構があり、過電流閾値はEEPROMへのプログラミングにより、ユーザー様にて設定することが可能です。
この機能により、外部回路などで実現されている過電流検出機構をセンサーIC内部に取り込めるため、部品点数の削減、実装面積の確保に貢献することができます。
製品一覧
TLI4971シリーズは、電流検出範囲毎にランナップが分かれております。
それぞれの検出範囲の製品の中には、UL1577という絶縁耐圧試験を追加でおこなってPassしている製品もあり、絶縁耐圧に関して厳しい要求がある場合などにご検討頂ける製品も用意されております。

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