エッジAI向け新プロセッサー「AM62Aシリーズ」

Texas Instruments社(以下、TI社)は数多くのマイコン、プロセッサー製品を提供しています。その中でも今回はArm® Cortex®-A53を搭載した最新のプロセッサーである「AM62Aシリーズ」を紹介します。

本製品はSitara™プロセッサーというシリーズに分類されます。低消費でありながらカメラベースの画像処理と、物体検出や物体認識などのエッジAI機能を組み合わせているため、さまざまな分析機能を備えたHMI(ヒューマンマシンインタフェース)デバイスの開発を実現します。

本製品に興味がある方はページ下部よりお気軽にお問い合わせください。

AM62Aシリーズの特徴

AM62Aシリーズ ブロック図
※ブロック図をクリックするとTI社のサイトが開きます。

AM62Ax機能ブロック図
出典 – Texas Instruments AM62Ax Sitara™ Processors datasheet
https://www.ti.com/jp/lit/ds/symlink/am62a7.pdf

AM62Aシリーズは、1~2台のカメラを必要とするビジョンアプリケーション向けに設計されています。H.264/H.265Vビデオコーデック、RGB-IRをサポートするイメージセンサープロセッサー(ISP)、AIアクセラレーターを内蔵しており、さまざまなビジョンアプリケーションに適しています。

本製品の特徴や実際の使用例を紹介しますので、右の機能ブロック図と合わせてご参照ください。

ビジョンアプリケーションでのユースケース

アプリケーションの要件などはユースケースによって異なります。ビジョンアプリケーションでは、ビデオデータのアップリンクや、適切なイメージセンサーを選択する必要があります。

内蔵のH.264/H.265エンコード/デコーダは最大4K@60fpsの高性能なエンコード/デコード機能を提供し、H.265エンコードされたクリップをネットワーク経由でアップリンクすることが可能です。 また、内蔵のISPは最大8メガピクセルの解像度のセンサーに対応し、デノイズ、デモザイク、欠陥画素補正、ゲインおよびホワイトバランスなどの画像処理機能の実行が可能となり、さまざまなイメージセンサーを選択できます。

以下の表で、AM62Aシリーズを使用した際のアプリケーション例と、必要なスペックのユースケースを紹介します。

アプリケーション例

解像度

フレームレート
[FPS]

カメラ
シャッタータイプ

監視カメラ

2~8メガピクセル

10~30

ローリング

マシンビジョン

5メガピクセル以上

60~

グローバル

インフラカメラ

1~5メガピクセル

5~15

グローバル

ドライブレコーダー

2~5メガピクセル

15~30

グローバル / ローリング

スポーツカメラ

2~8メガピクセル

60~

ローリング

バーコードリーダー

1~5メガピクセル

10~30

ローリング

低消費電力で動作可能なAIアクセラレーター

ディープラーニング・アクセラレーターが内蔵されている点が本製品の大きな特長です。TI社のC7x DSPとカスタムのマトリックス・マルチプライ・アクセラレーター(MMA)を統合したものが用いられており、ニューラルネットワーク(NN)、特にビジョンAIで一般的な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)での性能が大幅に向上しています。C7x DSPと、MMAを使用し、最大1GHzで動作させた場合、2TOPSの最大演算性能となります。

また、消費電力は室温においては全負荷で2W未満、125°Cで5W未満となり、コストと電力に制約のあるアプリケーションで使用することが可能です。

 

TI社よりエッジAI向けの各種ツールも用意されていますので、ご興味のある方は以下の記事を合わせてご参照下さい。

How to simplify your embedded edge AI application development

実際のアプリケーション例

上記で紹介した機能を活用した実際のアプリケーション例について、いくつかご紹介します。

ビデオドアベル

ビデオドアベルやホームセキュリティーシステムでは、盗難や人物確認に対する応答性が重要となります。そのため、リアルタイムのビデオデータをローカルで解析することで、誤検知を減らし、より速く、より確実に応答する必要があります。しかし、電力とサイズの制約からAI処理性能が制限され、リアルタイム応答性が犠牲になっていました。

AM62Axは18×18mmのパッケージで、前述のとおりビデオドアベルに必要な性能を実現しているため、より高いレベルの人および物体検出を実装することができます。

スマートリテール

スマートリテールは、顧客が購入商品を選択し、レジで支払いをすることなく店を出るという、新しいショッピングスタイルです。

このアプリケーションのシステムは、物体検出から派生したAIモデルとバーコードスキャナーを利用して、お客様が買い物かごに商品を入れ、最終的に店を出るときに購入する商品を識別します。

スマートリテールアプリケーションでは、ローカルでデータを処理することにより、取引中の応答時間を短縮、データセキュリティを向上させることができます。ローカルでAIモデルを実行することで、クラウドリソースへのネットワーク接続が不要な為(データが外部に送信されない為)、外部からの不正アクセスに対するセキュリティを向上することが出来ます。

ビデオドアベルと同様に電力消費は主要な設計課題です。AM62Axを使用することで消費電力を抑えながら、果物や野菜の分類、異常検出、方向検出、バーコード識別が可能です。

開発環境

ハードウェア評価環境(EVM)

AM62Aの評価ボードがリリースされております。

SK-AM62A-LP

ソフトウェア評価環境(SDK)

専用SDK(Software Development Kit)が提供されております。

PROCESSOR-SDK-AM62A

 

また、ソフトウェア開発者向けの専用ページも用意されているため、初めての方でもスムーズに評価を開始することができます。

Academy for AM62Ax (8.6.0.0 v1)

 

まとめ

「AM62Aシリーズ」は、1~2台のカメラを必要とするビジョンアプリケーション向けに設計されています。低消費でありながらカメラベースの画像処理と、物体検出や物体認識などのエッジAI機能を組み合わせており、さまざまな分析機能を備えたHMI(ヒューマンマシンインタフェース)デバイスの開発を実現します。

お問い合わせ

「AM62Aシリーズ」について、ご不明な点がございましたら以下よりお問い合わせください。当社製品担当者より折り返しご連絡させていただきます。

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