前回は、熱電対、RTD、サーミスタの特性について、ご紹介しました。第2回では、半導体温度センサについてご紹介します。
温度センサの種類と特性 シリーズ
第1回 熱電対、RTD、サーミスタの特性
第2回 半導体温度センサとは
第3回 半導体温度センサの利用例
半導体温度センサとは
代表的な半導体温度センサとして「Siダイオード」が挙げられます。SiダイオードのVf(順方向電圧)には-2mV/℃の温度係数があり、温度が上がるほどVfは下がります。ダイオードの両端の電圧を測定することで温度が測定できます。

SiダイオードはPNPトランジスタでも代用することができます。その場合は、エミッタとベース間の電圧を測定します。ダイオードのVfは流す電流値に依存するため、精度が高い定電流源が必要です。この測定方法は、プロセッサやASIC等のIC内部の温度測定に多く使用されています。

半導体温度センサの種類
半導体温度センサには、温度の表し方が大きく分けてアナログとデジタルの2種類があります。アナログは、温度を電圧で出力し、デジタルは”0”と”1”の2値で出力します。また、「設定値に対し、温度が高ければ”1(High)”、低ければ”0(Low)”」を出力するスイッチ型もあります。
アナログ出力タイプ
アナログ出力は、高精度定電流源とSiダイオードが一体型となっており、Vfをそのまま出力します。このタイプは、RTCからの置き換えで利用されることが多いです。RTCを使っているところに使用することで、AFE部分の変更は従来と変わりなく使用できます。

デジタル出力タイプ
デジタル出力は、温度検出から温度データの出力(通信)までを1素子で賄える為、機器の小型化やコストの低減が可能です。

スイッチ出力タイプ
スイッチ出力は、危険温度に関するトリップ用として利用されることが多いタイプです。例えば、ADCなどを用いて温度の絶対値を測る必要は無いけど、ある温度になったら止めたい場合はスイッチタイプを使います。
また、出力がHorLなので、ADCやI2CではなくGPIOで受けられるので、設計上の制約がありません。

RTDと半導体温度センサの比較表
RTDの代表的な白金抵抗(以降Pt100)、サーミスタ、半導体温度センサを比較してみましょう。
サーミスタ | Pt100 | 半導体温度センサ | |
温度範囲 | -100°C to +500°C | -240°C to 700°C | -55°C to +150°C |
精度 | 低 | 高 | 高/中 |
線形性 | 低 | 中 | 高 |
周辺回路 | 多 | 多 | 不要/少 |
回路コスト | 高価 | 高価 | 安価 |
半導体温度センサの精度は、Pt100には及ばないものの、サーミスタよりは格段に優れています。高精度基準電圧源やAFE(オペアンプ、A/Dコンバータ)等が省けるため、周辺回路や価格を鑑みても、回路全体のコストは半導体温度センサが最も安価になります。
医療機器にも用いられる高精度の半導体温度センサ
Texas Instruments社(以降TI社)の半導体温度センサの中から、おすすめできる3種類を紹介します。
LMT70 | TMP116 | TMP117 | |
出力方式 | アナログ | I2C, SMBus, 2-Wire | |
Supply Range | 2.5V to 5.5V | 1.9V to 5.5V | 1.8V to 5.5V |
I2Cアドレスバリエーション | -- | 4 | |
精度,誤差 | 0.13°C(20°C to 42°C) 0.20°C(-20°C to 90°C) 0.36°C(-55°C to 150°C) |
0.10°C(30°C to 45°C) 0.20°C(-55°C to 125°C) |
0.10°C(-20°C to 50°C) 0.15°C(-40°C to 70°C) 0.20°C(-40°C to 100°C) 0.25°C(-55°C to 125°C) 0.30°C(-55°C to 150°C) |
分解能 | -5.18 mV/°C | 16-Bit | |
静的動作電流 | 12uA | 4.5uA | |
シャットダウン電流 | 50nA | 500nA | |
パッケージ | WCSP 0.8mmx0.8mm | WSON 2.0mm x 2.0mm |
どちらもJISが定めるPt100の規格内には収まっているため、Pt100と同程度の精度となっています。LMT70は非常に小さなパッケージで、チップ型サーミスタから置き換えても実装面積に影響を与えません。
TMP116は4通りのアドレスに設定できるため、 I2Cバス上に最大4個まで接続できます。また、TMP117はその精度の高さから、ASTM E1112(臨床温度測定仕様)及びISO 80601-2-56(医用電気機器-第2-56部:体温測定用の臨床温度計の基礎安全及び基本性能の個別要求事項)に準拠しています。
半導体温度センサの利用例を知りたい方は第3回をご覧ください
今回は半導体温度センサが、コスト面でも制度面でもRTDの良いとこどりだということをご紹介しました。
次回は半導体温度センサの利用例について紹介します。
第3回 半導体温度センサの利用例 に続く
また、今回ご紹介した製品のお見積りや、置き換えに関するご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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