さまざまな分野でAIを活用した組み込み事例が増えています。その中でも、画像を用いたAIアプリケーションは特に注目されており、エッジ端末での高付加処理に伴う消費電力の増加が課題となっています。Synaptics社のLow-Power Edge AI Soc “Katana”は特に画像のAI処理に優れており、入退室検知や室内における人数計測・位置検知、人の転倒検知といった処理に適しています。

また、これらの用途に最適な処理性能を持ちながら、使用環境によっては単3電池2本で1年以上動作することが期待できる低消費電力デバイスであり、幅広いEdge AIのニーズを取り込むことが可能です。

 

今回は、2022年9月に開催されたSynaptics社の製品責任者であるAnanda Roy氏による限定オンラインセミナーの内容をご紹介します。

Low-Power Edge AI Computer Visionとは

コンピュータービジョンと聞くと、解像度の高い画像を処理するための高いコンピューター性能や、それを実現するためのクラウドの活用が頭に浮かぶかもしれません。しかし、人やモノの検知画像分類モノの追跡人物の姿勢推定は、低消費電力でEdge側での推論が可能であり、クラウドへのアップロードが必要ないためプライバシーの観点からも利点があります。

例えば、人や人数の検知、転倒検知、デジタル/アナログメーターの読み取りなどは、10fps以下の低フレームレート、画像解像度はVGA/QVGA、モノクロ/グレースケールで実現することができます。また、AIモデルのサイズは2MB以下、処理速度は10GOPS以下で推論時の消費電力は100mW以下で実現できます。

Low-Power Edge AI Computer Visionとは
Low-Power Edge AI Computer Visionとは

Low-Power Edge AIが求められている市場

Edge AIを既設環境へ追加する場合や屋外などの電力供給が困難な場所へ設置する場合は、電池の使用が考えられます。ただし、メンテナンス性を考慮すると、電池交換の頻度は少ないことが望まれます。

Katanaは以下のようなニーズを元に開発されました。

 

・電池駆動で2年程度は動作できる

・装置を小型化したい

・容易に開発、設置できる

・柔軟で複数のAIドメインをサポート(※)

 ※Katanaは画像以外にも、音声、温度、圧力、PIRなど、さまざまなセンシングに対応することができます。

Low-Power Edge AIが求められている市場
Low-Power Edge AIが求められている市場

デバイスの特長

Katanaは低消費電力、マルチコアSoC、システムインテグレーションの容易さが特長のデバイスです。

 

低消費:アクティブ時は1mW/MHz以下、アイドル時は800uW以下、ディープスリープ時は100uW以下

マルチコアSoC:画像/音声AIに特化したNPUARM M33とテンシリカHiFi3、先進的なDSP x2

システムインテグレーションの容易さ:完全なソフトウェアツール群(SDK)AIコンパイラーと開発プラットホーム、Wireless Connectivityソリューションの提供など

デバイスの特長
デバイスの特長

Katanaの内部ブロック図

Katanaの内部には6つのコアがあり、具体的には、AIのアクセラレーターであるNPU(Neural Network Processing Unit)コア x2、時系列分析用の先進的なDSPコア x2、アプリケーションソフトウェアを実行するARM M33コア、オーディオ処理向けHiFi3テンシリカDSPです。

また、2MBのオンチップメモリーと、カメラやマイク、PIRセンサー、加速度センサーなどを接続可能な各種デジタルインターフェース、Wi-Fi/BLEチップとの接続インターフェース、数多くのGPIOがあります。

Katanaの内部ブロック図
Katanaの内部ブロック図

想定アプリケーションとユースケースの例

想定アプリケーション

Katanaが適しているアプリケーションは以下の5分野です。

 

スマートビルディング:人数計測、スペースの最適化、施設ルール違反者の検知

自立生活支援:見守り、ウェルビーイング、特定の音(ガラスが割れる音など)の検知、音声コミュニケーション

インダストリー4.0:デジタル/アナログメーターの読み出し、予知保全、モノの追跡/監視、音や映像によるイベント検知

スマートホーム/セキュリティ:人物検知、ペットと人との区別、宅配物の検知、特定の音の検知

コンシューマエレクトロニクス:音声コントロール、音声コミュニケーション、ビジュアルによる起動、声紋認証

ターゲットアプリケーション
ターゲットアプリケーション

ユースケース ~転倒検知システム~

ここではKatanaの具体的なユースケースとして、自立生活支援を目的とした転倒検知システムを取り上げます。

 

現在、市場で提供されている転倒検知システムの中には、ウェアラブル機器によって検知するものがあります。このような方式は、人が転倒したか寝ているかの判断が難しいことや、装着のストレス、頻繁に充電が必要なこと、紛失の懸念などの課題があります。Katanaを使ったEdge AI Vision Systemでは、特別な機器を身に着ける必要がないため生活にストレスを与えません。人の存在を検知⇒音による潜在的な転倒検知⇒画像による転倒検知、の3ステップで人が転倒したと判断します。

さらに、Edge端末で処理されるため、プライバシーを確保できます。人の転倒を検出した際、スマートフォンなどに通知することができるため、速やかな対応が可能となります。

ユースケース ~転倒検知システム~
ユースケース ~転倒検知システム~

評価キット(EVK)

Synapticsは各種デモやプロトタイプの開発/デバッグのために、Katanaの評価キットを用意しています。

Katanaの評価キットは以下の通り構成されています。

 

Katana SoC モジュール (左の赤枠)Katana SoCFlashメモリー、電源IC

Connectivityモジュール (右の赤枠)SynapticsWi-Fi/BLEチップ「BCM430132

Base Board:マイク、加速度/ジャイロセンサー、照度センサー

・カメラモジュール:HiMax製「HM01B0(QVGA)

 

評価キットはプラスチックの筐体で覆われており、人の入退室を想定した頭上への設置、TVなどを想定したテーブルへの設置など異なるアプリケーションに対応できる仕様になっています。また、IoTアプリケーションを想定したバッテリー駆動が可能なキットです。

評価キット(EVK)
評価キット(EVK)

デモ動画

Katanaを用いた3種類のデモをyoutubeでも公開していますので、ぜひご覧ください。


1)人と人数の計測

https://www.youtube.com/watch?v=KRNLyhVubWE

2)デジタルメーターの読み出し

https://www.youtube.com/watch?v=cfP3HVvIZig

3)転倒検知

https://www.youtube.com/watch?v=NT0XIXVXnnc

デモ動画
デモ動画

お問い合わせはこちら

Katanaは画像のAI処理に優れており、特に入退室検知や室内における人数計測・位置検知、人の転倒検知といった処理を電池駆動(低消費)でおこなえるデバイスです。デバイスの詳細仕様やその他具体的なユースケース、Katanaの開発手順等にご興味がある方、またその他ご質問がある方は、ぜひお問い合わせください。