高精度の“周波数温度特性”を求める製品に搭載される“TCXO”
TCXO は、“温度補償型発振器”とも呼ばれ、周波数の温度特性を補正するための「温度補償回路を内蔵したタイプの発振器」です。
お客様の開発する最終製品、実装基板において、優れた周波数温度特性※をクロックに求める際に、使用されます。
※周波数温度特性とは、「周りの温度変動に対してどれだけ周波数が変化してしまうか」を表したクロックにおける非常に重要な性能指標です。
今や電子機器に欠かせないクロックですが、周辺の温度変化が起こるとそのクロック周波数がズレることがあり、
最悪の場合、電子機器のシステムが動作しないなどの不具合を起こします。
TCXOは、温度変化による周波数のズレ(変化)が起きた際に、迅速に、元の周波数へ補正をかけることができる性能を持つことから、
そういった高精度の周波数温度特性が求められる、以下のようなアプリケーションに搭載されます。
SPXO(汎用パッケージ発振器)の周波数温度特性では物足りない際に、ぜひ選びたい発振器です。
【TCXOが搭載される主なアプリケーション】
・携帯電話(小型のTCXO/いわゆる、モバイルTCXOという種類)
・GPS、Wi-Fi、BLEなどの無線モジュール(小型のTCXO)
・無線
・放送機器
・医療機器
※参考情報:SiTime の高精度TCXOのラインナップ
TCXOを選定する際の4つのポイント
「温度変化による周波数のズレをできるだけ抑えたい」方が、TCXOを選定する際にどういったポイントを押さえておけばよいのでしょうか?
それでは、「押さえておきたいポイントを4つ」ご説明していきます。
ポイント① 周波数偏差
データシート上で保証されている周波数偏差の数値は、「基準の周波数が動作条件等によってどれだけズレるか」を表しており、ほとんどの場合単位はppm(ピーピーエム)で表現されます。ppmはparts per millionの略で、“100万分のいくつ”かを表しています。
“周波数許容偏差”とも表現しますが、常温偏差を含む場合もあるので、比較する際には各製品のデータシートの各条件をきちんと確認して選定することが重要です。
ポイント② 周波数エージング
“長期周波数安定度”とも表現します。こちらは「定義された温度で、各期間単位(1日、30日、1年、など)における周波数が、どのくらいズレるのか」を表しています。
こちらも各データシートに記載された条件・定義を事前に確認したうえで比較検討することが必要です。
ポイント③ 周波数温度特性
「温度変化によるズレが少ない」のがTCXOの特長ともいえますが、やはり製品によってその性能は異なります。そのため、実際の最終製品(アプリケーション)の使用環境を想定し、見極める必要があります。
データシートに記載されている温度特性だけで判断するのではなく、実際の周辺温度に近付けた評価も必要です。
SiTime のTCXOは、振動子と温度センサーが物理的に非常に近いため、振動子の温度変化に対して非常に速く周波数の補正をかけることができます。(温度補償をする)
一方水晶発振器は、振動子よりも先に熱くなるPCBに近い箇所の発振回路に温度補償の機能を持たせています。
振動子とも物理的に離れているため、MEMS発振器と比べるとやや周波数温度特性の性能は劣ります。

ポイント④ 位相雑音
ハードウェアシステムの基準信号として使うためには、低位相雑音性能が求められます。
また、クロック信号の「ズレ」「ゆらぎ」を表現する位相ジッターの性能も、注目するべきポイントです。
こちらもお客様の方で測定環境を用意する必要がありますが、SiTime では 各評価ツールも充実しておりますので、
お困りの際にはこういったメーカー側で用意をしている評価ツール、評価キット(DK)を活用いただくのも有効です。
SiTimeのTCXOのラインナップ
SiTimeのTCXOのラインナップは下記の通りです。
なお、コチラ の動画にて、SiTimeのMEMS発振器 TCXOと 水晶発振器 TCXOの特性比較を分かりやすく解説しています。
(Youtubeが開きます。各テストを実施しており、同じ基板に実装された両製品の温度特性、耐振動衝撃性能、電源ノイズ耐性などをご覧いただけます)
型名 | 周波数 | 周波数偏差(ppm) | 出力形式 | パッケージサイズ |
SiT5155 | 12 種類から選択 |
±0.5 |
LVCMOS Clipped sinewave |
5.0x3.2 |
SiT5156 | 1~60MHz |
±0.5 ±1 ±2.5 |
LVCMOS Clipped sinewave |
5.0x3.2 |
SiT5157 |
1~220MHz |
±0.5 ±1 ±2.5 |
LVCMOS |
5.0x3.2 |
SiT5356/SiT5357 |
SiT5356:1~60MHz SiT5357:60~220MHz |
±0.1 ±0.2 ±0.25 |
SiT5356: LVCMOS Clipped sinewave SiT5357: LVCMOS |
5.0x3.2 |
SiT5358/SiT5359 |
SiT5358:1~60MHz SiT5359:60~220MHz |
±0.05 |
SiT5358: LVCMOS Clipped sinewave SiT5359: LVCMOS |
5.0x3.2 |
SiT5376/SiT5377 |
SiT5376:1~60MHz SiT5377:60~220MHz |
±0.1 ±0.2 ±0.25 |
SiT5376: LVCMOS Clipped sinewave SiT5377: LVCMOS |
5.0x3.5 |
SiT5501/SiT5503 |
60~220MHz |
SiT5501: ±0.01 (±10 ppb) ±0.02 (±20 ppb) SiT5503: ±0.005 (±5 ppb) |
LVCMOS Clipped sinewave |
7.0x5.0 |