"電圧制御型発振器" と "デジタル制御型発振器" の比較
これまで発振器の周波数チューニングを要するアプリケーションで、皆様はどんな発振器を使ってきましたか?
恐らく、電圧制御型発振器、いわゆるVCXO(もしくは、VC-TCXO)を使ってきたのではないでしょうか。
この “VCXO以外” にも、「デジタル入力による周波数チューニングをする方法」があります。
本記事では、「デジタル制御型発振器=DCXO」と表現し、そのメリットを解説しつつ、SiTimeのDCXO(DC-TCXO)ラインナップを掘り下げてご紹介します。
メリットその1 / 部点数の削除が可能
「デジタル制御型発振器=DCXO」は、VCXOと比べ、システム上にDA 変換や他の電圧制御用のアナログソースを用意する必要がありません。
部品点数、コストを低減することが可能となります。
メリットその2 / ノイズ影響の削減
電圧ラインの基板のノイズによる周波数シフトも解消可能となります。
VCXO の電圧ピンを駆動するために使用されるアナログ信号は、非常にノイズに敏感です。
ノイズカップリングの影響を受けやすい可能性があります。
デジタル入力による周波数制御は、I2Cなどのデジタルインターフェースを介して実行されるため、アナログノイズカップリングの影響を受けません。
メリットその3 / 幅広いプルレンジ
特にこれは、“SiTimeのMEMSベースのDCXO” に言えることなのですが、
小数点フィードバック分周器を介してデジタル制御を行うため、
水晶製品のように振動子に制約されたプルレンジよりも、幅広く用意が可能です。
SiTimeのDC-TCXOの「Digitally Controlled Oscillator モード」を実際に触ってみる
概要
SiTime の ”Elite Platform™ Super-TCXO™ シリーズ” は、単なるDCXOではなく、TCXOレベルの精度を兼ね備えています。
周波数調整の方法として、電圧制御とデジタル制御の両方を用意しています。
ここからは、I2C インターフェースを介したデジタル入力をサポートする、これらの超高精度TCXO の 「DCO モード」 (Digitally Controlled Oscillator モード)
を深掘りします。DCO モードを使用すると、指定されたプルレンジ内で出力周波数を継続的にプル可能です。
プルレンジは、±6.25 ppm~ ±3200 ppm の 16 のプルレンジオプションのいずれかにで変更可能です。
また、DCO モードでは、お客様はデバイスのレジスタへの書き込みを通じ、出力イネーブル (OE) 状態を制御できます 。(対応オプションを選択する必要あり)
主な製品ラインナップ
こちらからご確認いただけます。
評価ボードのお問い合わせも以下から可能です。
デジタル制御の詳細
オーダー時に指定された、デフォルトの動作周波数(とプルレンジ)にてDCXOは起動します。
ICの起動後、対応する制御レジスタへのデジタルインターフェースによる書込みにより、プルレンジと出力周波数の両方を制御できます。
プルレンジは、Peak to Peak 偏差の半分、となります。
(たとえば、200ppm Peak to Peak の場合、その半分である ±100 ppmになります)
また、デジタルプルレンジ コントロールレジスタ (Reg2[3:0]) にロードされる値によって特定されます。
16 のプル範囲の選択肢は、このコントロールレジスタに記録されており、範囲は ±6.25 ppm ~ ±3200 ppm です。
オーダーコード
以下は対応するプログラミングコード(注文時の型番にて指定可能です)と周波数分解能とプルレンジのプログラム値です。

周波数プルの手順
1. プルレンジ(pullRange)に対するターゲットプル値 (targetPull) の比率を計算します(計算式1)
2. ターゲットプル値の分数にfull half scale word valueを掛けて、最も近い整数に丸めます(計算式2)
3. 上の結果を 2の補数バイナリ (pullControlWordBin) に変換します
4. デバイスから Reg1 の値を読み取ります (他の設定用の制御ビットが含まれている可能性があるため)
5. 書込み用のレジスタの内容を形成します
- a. Reg0[16:0] – pullControlWordBin[15:0] (LSW)
- b. Reg1[9:0] – pullControlWordBin[25:16] (MSW)
- c. Reg1[15:10] – Do not change
6. 次のシーケンスでレジスタを書き込みます
- a. Reg0
- b. Reg1
計算式1
計算式2
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は、DCXO(デジタル制御型発振器)に着目し、SiTime製品もご紹介しました。
是非、設計時に迷われた際には、お気軽にお問い合わせください。