「Matter」が切り拓くスマートホーム市場 日本での展開はいかに?

近年、AIIoTが急速に進化し、社会に多大な変化をもたらしています。そして、私たちがその恩恵をより身近に体験できる技術のひとつに、スマートホームがあります。

 

家の中はもちろん、外出先からでもAI搭載の家電やIoTデバイスの手軽な制御を可能にするスマートホームの導入は、

私生活における快適性・エネルギー効率・セキュリティの安全性などを大きく向上させます。

 

そんなスマートホームの利便性をより高め、さらなる普及の足がかりにもなると期待されているのが、2022年に登場したオープンソースの相互運用規格「Matter」です。

これまでのスマートホームデバイスは基本的に、個々に対応するアプリやサービスの利用が必要でした。

しかしMatterは多様なメーカーのスマートホームデバイスに対応できるため、ユーザーの手間が大幅に軽減されるなどのメリットがあります。

 

今回は、国内外におけるスマートホームやMatterの最新事情に詳しい、X-HEMISTRY株式会社の新貝 文将(しんがい ふみまさ)氏(以下、新貝)にお話を伺いました。

 

■ X-HEMISTRY株式会社とは?

国内はもちろん、海外も含めた最新動向やビジネスモデルの成功事例を熟知している、日本随一のスマートホームプロ集団。Matterを策定した標準化団体である、CSAConnectivity Standards Alliance)にも加盟している。代表の新貝氏は、長年にわたって日本人をほとんど見かけない海外のスマートホーム関連カンファレンスにも参加して情報収集を続けたり、海外企業を含めた多くの関連企業とコミュニケーションを形成したりしている。

「みんなでパズルをつくる」ように拡がる、Matter

――最初に、Matterの特長やメリットを教えてください。

 

新貝:まず、皆さんがお持ちのスマートフォン、つまりiPhoneAndroidが標準でMatterに対応していることです。AppleGoogleが標準化に寄与していることのメリットがここにあります。加えて、セットアップが非常に簡単なことが挙げられます。日本の家電メーカーはごく一部を除いて、「お客様がせっかくコネクティッド家電を購入しても、つなげてもらえないことが多い」と言っています。それを解決できるのがMatterです。

 

Matterはユーザーが家電などの購入後に電源を入れると、スマートフォンに「新しいデバイスが見つかりました」と表示され、それをスキャンすればすぐに接続できます。これまでの無線規格と比べると、つなげてもらえる確率はかなり高いでしょう。またセキュリティ対策が仕様に含まれていることも、特長のひとつですね。

Matterは、プロダクトアウトではなく、マーケットドリブンな仕様化のアプローチを実施するようなチームで規格された
出典:X-HEMISTRY社の作成資料(2023年11月8日に利用)

Matterは、このように3つのサブワーキンググループによるプロセスを経て仕様が決まります。

まずMPSG(マーケティングアンドプロダクトサブワーキンググループ)が、利用者視点でユースケースなどを仕様化します。

そして次に、TSG(テクニカルサブワーキンググループ)がそれを実現させるための技術的な仕様化を行います。

最後に、CSG(サーティフィケーションサブワーキンググループ)が認証を取るためのテスト仕様や相互接続テストを行います。ユーザードリブンな視点で仕様を決まっていると言えますね。

 

左の方がサイクルのようになっており、ウォーターフォール的に落ちていきはするのですが、後工程で出てきたフィードバックは反映されるので、アジャイル的とも言えます。

 

私は海外で定期的に開催されてるCSA主催のメンバーカンファレンスなどにも参加しているのですが、AppleAmazonGoogleSamsungといった企業がユーザーファーストな製品を作るために、フラットに議論をしています。

 

 

 

――そうしてベンダーロックインがなくなり、利便性が上がることが、スマートホームの普及にも一役買っているのですね。

 

新貝:はい。もちろん参画している企業は、「自社のモノが売れてほしい」という気持ちもあると思いますが、カンファレンスの様子を見ていると、どの企業も「まずマーケットが広がってほしい」という気持ちの方がより強いように見えます。

 

たとえば、レゴを思い浮かべてもらいたいのですが、レゴはオープンな規格ではないものの、決まったルールの中で作られています。昔はレゴのパーツも種類は多くありませんでしたが、いまは無数のパーツで色々なものを表現できるようになりました。仮にレゴがオープンな規格だとすれば、いろいろなメーカーがレゴのパーツを作成できるようになります。このようにルールを決めて「みんなでルールを決めて、各社が特長のあるパズルを作っていこう」というのが、Matterだと私は思っています。

 

「どういった特長のあるパーツを作るのか」というのが各ハードウェア企業の役目ですが、プラットフォーマーは主にソフトウェアの領域で競争していきます。組み上げたレゴを動かせるとすると、ソフトウェアでAIを活用してどのように動かしていくか、というイメージです。

 

今後、Matterというインフラが広がっていくと、色々なものがつながります。そのときに「集めたデータでどういった予測をするか」「どういった情報を提供するのか」といったことも、ポイントになってくると思います。

X-HEMISTRY株式会社 CEO 新貝 文将氏
▲X-HEMISTRY株式会社 CEO 新貝 文将氏。

――Matterの登場により、不動産に関わる事業の戦略にはどのような変化がありましたか?

 

新貝:たとえばアメリカでは、新築の住宅にスマートホームを標準搭載する流れが加速しています。そのため23年後、あるいはもっと早く、Matterが備わっている住宅も出てくると思っています。おそらく、後からの追加や変更がしにくい家電などはビルトインにしておき、必要なものは居住者が自分で買ってきてDIYをしてください、という世界観になるのではないかと。

 

――アメリカでは売り手が最初から照明やエアコンなどのスマートホーム家電を導入することで、

住宅の最終販売価格を3~5%引き上げられるというデータもあるようです。こういったことは、日本でも起こり得ますか?

 

新貝:そうですね。アメリカではスマートホーム化をしておくと物件価値が高まるので、賃貸でも賃料を上げられます。この話を日本ですると、「アメリカならでは」という反応をする方もいるのですが、自分が物件を探すときを想像してみれば納得がいくと思います。たとえば床暖房やオートロックを求めている方は、それが備わっていれば、疑問を感じることなくそのぶん多めに家賃を払いますよね。そこにスマートロックなどのスマートデバイスが加わっただけの話です。

 

――確かに、今後は「スマートホーム対応」という観点で、不動産に新たな価値が生まれそうです。

それ以外では、Matterが市場に与えるインパクトにはどのようなものが考えられますか?

 

新貝:一言で言えば、ブランディングですね。

たとえば昔はWi-FiBluetoothのロゴは一般的には認知されていなかったけど、現在はほとんどの方がロゴを見ただけでわかりますよね。「このマークがついているものはインターネットやスマートフォンにつながるんだな」という具合に。Matterはいわば、その家版です。

Matterロゴは、スマートホーム対応であることの指標となっていく
出典:X-HEMISTRY社の作成資料(一部を抜粋。2023年11月8日に利用)

おそらくCSAのメンバーも、ユーザーにそのように扱ってもらえるように、意識して作ったのではないかと思います。少し時間はかかるかもしれませんが、23年スパンで見ると、Wi-FiBluetoothと同じ流れをたどることになるでしょう。

海外先行のスマートホーム導入、日本の課題と打開策は?

――スマートホームの普及率は、どのぐらいなのですか?

 

新貝:スマートホームデバイスの導入までを含めた数値にはなりますが、比較的進んでいるアメリカで41%ぐらいなので、まだまだ関心の低い層も多いのが現状です。ちなみにスマートホームデバイスの購入層は、だいたい20代中盤~40代中盤がスイートスポットと言われています。私たちは色々な日本企業のお客様を支援していますが、「やらないと未来がない」という熱量を持って取り組まれているのは、やはりそのぐらいの年代の方が多いですね。

 

現在の日本の住宅設備は20年前と比べても大差ありませんが、かつては着実に進化していました。たとえば床暖房や食洗機、トイレのウォシュレットなども今でこそ当たり前のように搭載されていますが、黎明期は「光熱費が高くなる、ストーブで事足りる」とか「床下で水が漏れたり、壊れたらどうするんだ」などと言われていたわけです。

 

それにパンデミック前と今の常識も、すでにもう全然違いますよね。「リモートワークなんてありえない!」なんて言っていたのに、普通にできている企業もたくさんあります。その時々の常識というものはあると思うのですが、いま私たちが常識だと思っていることは本当に一時的な価値観でしかなくて、常に変わっていくものなのだと思っています。

 

――日本におけるスマートホーム事業化の現状や、今後の変遷についてはどのように考えていますか?

 

新貝:日本では、スマートホームがまだガジェットとして捉えられているのかなと思っています。海外でももちろんそういった側面はありますが、日本よりはインフラ化しており、生活や物件運用上の課題の解決に使われていたりもするので、ビジネスとしても成り立っています。また、スマートホームをガジェットとしてとらえ、事業として推進している企業が日本にはまだ少ないです。

 

スマートホームに関わる海外の代表的な企業としては、アジアではSamsungLG、ヨーロッパではBOSCHSiemens AGIKEAなどが挙げられます。さらに有名どころだと、GoogleAmazonAppleといったプレイヤーもいます。またスタートアップ企業も以前より勢いを増しており、日本と比較すると桁違いのプレイヤーが存在しています。

 

スマートホームやIoTではユーザーが実際に目にする製品がハードウェア(以下、HW)なので、そのメーカーが強い領域だと誤解されがちです。しかし実際には、ソフトウェア開発が製品開発の多くを占めています。

 

このカオスマップ12個のカテゴリーに分かれていて、損保会社・スマート家電・通信事業者など、さまざまなプレイヤーが参入していることが分かります。

 

赤い点線の内側が日本のプレイヤーで、その外が海外のプレイヤーです。赤と青の間は日本にもプレゼンスがある海外プレイヤーという見方です。このカオスマップに表されているように、スマートホームには多くのカテゴリが存在し、スマートホームには幅広い業種が参入してきているため、もはや異種格闘技戦のような感じですね。

 

――日本は、企業間の連携が難しい状況にありそうです。

 

新貝:そうですね。プロダクトの作り方やアプローチもそうですし、意思決定や事業化までのスピードも、日本と海外ではまるで違います。海外は自分たちのプロダクトが色々なところでつながるようにオープン性を意識して作っていますが、日本では海外と比較して囲い込みの傾向が見られます。この辺が日本でMatterへの賛否が分かれる要因ですね。

 

――そうなると、ビジネスとしての成立に苦労する企業も多くなりますね。こういった現状に対し、X-HEMISTRYではどんな支援をしていますか?

 

新貝:事業化を検討したいという企業が着実に増えているなかで、伴走型の支援を行っています。私たちはお客様と同じ目線で事業を検討していただく必要があると考えているため、まずファーストステップでスマートホームの基礎知識、関連技術からビジネスモデルまで幅広いエデュケーションプログラムを提供しています。お客様のご都合にもよりますが、だいたい3ヶ月くらいの期間を見込んでいます。

X-HEMISTRYは皆様のプロジェクトメンバーとして併走
出典:X-HEMISTRY社の作成資料(2023年11月8日に利用)

プロジェクトメンバーの目線合わせができたら、事業検討のフェーズに移行します。

ただ私たちはお客様に、使うプロダクトも含めて「どの方向に行きましょう」という強制はしていません。進むべき方向については、お客様の事業や企業文化とのシナジーの問題があるからです。フレームワークを使ってヒアリングベースで事業方向性を絞り込んだり、PoCの設計から実行のご支援までを、さまざまな領域で行っています。また、運用できる仕組みや体制を作ることも重要なので、そういった観点でのシステム設計や組織設計もアドバイスしています。

 

――社内稟議が通りにくいなどの理由で、最初のステップをなかなか踏み出せない企業も多いのではと思います。何か対策はありますか?

 

新貝:まずは実際に体験してもらうことが近道だと思っています。私たちはお客様に、「ラボやショールームなど、皆さんがスマートホームを気軽に体験できる場所を作ってください」といつもお伝えしています。たとえばスマートフォンなどもそうですが、触ったことのない人に口頭で良さを伝えるのって、すごく難しいですよね。でも端末を見せながら「こう使うんですよ」と実演すれば、おそらく多くの人は「おお!」と感動するはずです。プロジェクトメンバーや社員宅でのPoCも効果的です。

 

ユーザー体験やユースケースをいかにリアルに伝えるかは、とても重要なポイントです。私たちがご支援したお客様でも、経営層の方々にスマートホームの良さを伝えること苦労したケースが 当時のプロジェクトメンバーにお願いをして、その経営層の方々をお招きし実際に目の前でいろいろなものを動かす実演を行ったところ、「こういうことか!面白い!」とおっしゃっていただき、そこから話がスムーズに進むようになりました。

 

私たちはMatterに特化したレクチャーなども行っているのですが、とても需要があって、ここ1年ぐらいで多く実施してきました。

 

――経営層にスマートホームの良さを伝えるのは、やはり難しいのですね。

 

新貝:はい。経営層の方々に直接レクチャーをさせて頂く機会はなかなかないので、まずはプロジェクトメンバーの方に、「スマートホームは単なるガジェットではなくて、生活周りの課題解決ができる事業ツールですよ」ということをしっかりと理解してもらいます。

賃貸契約の手間も大幅カット スマートホームセキュリティの利点

――スマートホームでは、どんな課題解決ができるのですか?

 

新貝:現状の主なところでは、スマートホームセキュリティとスマートアパートメントが挙げられます。最近はエネルギーマネジメントのようなアクセスコントロールもありますが、一番普及しているのはスマートホームセキュリティの領域なので、ここについて詳しくお話します。

 

アメリカには日本と同じく、いわゆるホームセキュリティ事業が昔からありました。ただ普及率は20%くらいにとどまっていて、非成長産業でした。しかしその後、普段使いできる防犯システムが出てきたことによって状況が変わり、現在では普及率40%ぐらいまで伸びてきています。

 

こういったお話をすると、「それはアメリカだからでしょう? 日本は安全だからホームセキュリティプロダクトのニーズはないのでは?」とおっしゃる方もいます。でも、鍵が2つ付いているドアって実は世界で日本しかありませんし、オートロックマンションも人気だし、共用部にカメラもあります。そして、こういう物件って人気ですよね。つまり日本人の防犯意識自体は高いわけです。ちなみに、過去に実施したホームセキュリティについてのアンケートでは、2人に1人が「家や家族のことが気になる」と回答していました。

 

また日本のホームセキュリティは「警備員が家を守ります」というイメージが前面に押し出されていることが多いですが、アメリカは真逆で、クールさが強調されているのは面白い点です。また、アメリカのホームセキュリティ大手のプロモーションビデオでは、ユーザーがDIYで機器を取り付けていたりして、普段使いの雰囲気が出ています。

ホームセキュリティ vs スマートホームセキュリティ
出典:X-HEMISTRY社の作成資料(2023年11月8日に利用)

アメリカでも、かつては警備員が不在時や夜間に監視をしてくれるホームセキュリティが主流ではありました。しかしスマホを使ったモニタリングはできず、初期費用も高く、ランニングコストもかかります。そのため富裕層しか利用できず、普及率が20%にとどまっていたのです。ちなみに日本は安全だからという理由もありますが、日々の生活の中で使えるサービスという感覚が得られにくいサービスがほとんどのため、現在でも3%程度しか普及しいていません。

 

一方で、スマートフォンを利用したホームセキュリティはデバイスも多いので常に家とつながっている安心感があります。それに機能拡張もできますし、ソフトウェアのアップデートも可能です。これまでのホームセキュリティとは刺さる層がまったく違いますが、「これにだったらお金を払う」という人は多いと思います。これはガジェットではありませんし、家や家族のことが気になるという課題を解決していますよね。これが、現在のホームセキュリティの世界観です。

 

――アメリカでホームセキュリティの需要が伸びたのは、スマートフォンの普及が進んだのが背景ですか?

 

新貝:そうですね。アメリカでスマートホームセキュリティが台頭してきたのは、2010年ごろからです。黎明期には、日本でいう警備会社や、ケーブル通信事業者が参入してきました。ちょうどiPhoneAndroidが登場した直後ぐらいで、スマートフォンを使って家と繋がっている感覚を得ることができるインタラクティブなサービスが作られ始めました。

 

そのあと大手も参入し始め、多くの広告を流し始めたことなどから、スマートホームセキュリティの認知度は高まっていきました。2010年は、ホームセキュリティにとって特に象徴的な年だと言えますね。

 

さらに2014年頃にはAmazonGoogleAppleなども参入し、やがて店頭に商品が並ぶと、それらがどんどん売れていきました。するとそれを見ていた住宅メーカーたちは、「これは標準化しないといけないのでは?」と、スマートホームセキュリティを標準実装し始めました。また2019年ごろからは、集合住宅メーカーもそこに加わっています。先ほどもお話したように、スマートホームを導入すると物件の価値が上がるため、管理会社にもメリットがあるのです。

 

――アメリカでは、スマートアパートメントも当たり前のようになっているのですね。

 

新貝:そうですね。機能としては、スマートロック・空調・照明・インターホンなどが中心です。またスマートアパートメントには、契約時に顧客と管理会社の双方にとって利点があります。たとえば日本の内覧の場合、まず物件サイトで物件を探して、見たい物件があったらアポイントをとって、管理会社が大家さんに許可をとって、約束した日に営業マンについてきてもらって……と、部屋にたどり着くまでにかなり多くの手順を踏まなければなりません。

 

これがスマートホーム化されると、入居者は自分のスマートフォンがそのまま鍵になるので、すぐに内覧ができます。しかも、本来同行している営業マンからプレッシャーを受けることもありません。エアコンや照明も自由に点けられますし、むしろ夏場であれば到着前にエアコンを先に点けておけば、快適な内覧が可能です。消し忘れがあっても、管理会社側が遠隔で簡単に操作できるので問題ありません。

 

何より鍵を受け取らなくてもよいことで、入居者が部屋を気に入ってくれれば、場合によっては即日入居ができるかもしれません。すると空室の期間が大幅に短くなり、営業コストも削減できます。おまけにスマート化されていることで物件の価値も上がっていますし、今後の若者世代はこういった物件を探す可能性も高いと思います。このように、スマートホームを課題解決ができるものと捉えると、企業の経営層の方々も含め、色々なメリットを感じていただけるのではないでしょうか。

 

ソリューション化することで買う側のモチベーションは高くなり、そうなると連鎖的に事業化する側のモチベーションも高くなります。私たちは、その流れを創り出すための取り組みをご支援しているというわけです。

Matterは近い将来に普及できるか?

――いろいろなお話を伺ってきましたが、Matterは世界中で、5年以内に普及すると思いますか? また、別の規格が出てくる可能性についてはいかがでしょう?

 

新貝:日本も含めて、確実に普及していると思います。たとえばiPhoneや折りたたみスマートフォンも、初登場時には物議を醸しました。しかし技術は進化するもので、34年も経てば一般的に普及もしますし、初期は使いにくかったものであっても、普通に使えるレベルになります。あとはネットワークカメラに対応してくると、高齢者の見守りなどの幅広い用途にも対応できるので、より普及率が高まると考えています。

 

Matterの別規格が出てくることは、ないと思います。Matterに対抗しようという団体が出てきたとしても、ユースケースやセキュリティなど色々なことを考えながら、結局Matterと同じような動きをしなければならないからです。それに、なによりも賛同してくれるスマートホームにコミットしている主要企業や人を集めることも難しいと思います。この分野ではメーカーに賛同してもらうことが何よりも重要なので、そこでつまずいてしまうと厳しいですね。

 

――X-HEMISTRYとして、今後はどのようにビジネスを進めていきたいですか?

 

新貝:私たちは、日本ではもっともスマートホームの経験とノウハウを持っているコンサルタントであると考えていますので、これからも海外で一次情報を収集しつつ、それらをアップデートしながら展開していきたいです。

 

スマートホームの事業化を検討されている方は、「スマートホームって何?」「どんなビジネスモデルがあるのか」といったところも含めて、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。