ガスセンサーで正しくCO2濃度測定はできる!?

はじめに

私たちは普段、呼吸を行う事で二酸化炭素(CO2)を吐き出しています。また、化石燃料等を燃焼させる事でもCO2は発生しています。大量の化石燃料を消費し、沢山のCO2を排出してきたことにより、増加したCO2は温室効果ガスの1種としても知られています。近年、世界的にこのCO2濃度の測定を求められることが増えてきています。

温室効果ガスとされるCO2は、一見、人体に対して影響が少ない様に見えますが、濃度が高くなることで、疲労感の増加、集中力の低下、眠気や頭痛などと言った症状を訴える人が増加するという研究報告もあります。こう言った研究報告を基に、室内空気質のモニタリングをおこない、人体への影響を抑える動きも出てきています。

また、最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生により三密回避が求められています。感染症防止対策の一つとして換気の悪い密閉空間の改善が挙げられますが、換気が十分におこなわれているかを確認するための方法として、経済産業省よりCO2濃度指標が設けられています。この指標を満たしているかの判断はCO2濃度測定器が必要となります。

本記事では、近年需要が高まっている室内CO2濃度測定器に用いられるセンサーの仕組みを説明し、正しく測定する方法を説明します。

CO2センサーの仕組み

一般的な半導体式CO2センサーは大きく2種類の方式があります。

1つはNDIR(Non Dispersive InfraRed:非分散型赤外線吸収)方式、もう一方は光音響(Photoacoustic)方式です。両方の方式は、CO2分子が特定の波長光を吸収する原理を利用した光学式の検出方式となります。

NDIR方式の主な方法では、リファレンス光を通す経路とCO2に吸収させる光の経路の2経路を用い、それぞれの経路の光量差を求めることで、CO2濃度を算出します。光学ビーム経路の確保が必要であり、感度と経路長が比例するため、感度に伴い、センサーサイズが大きくなってしまうことがデメリットとなります。

一方、光音響方式では、CO2分子が特定の波長光(4.26um波長)を吸収した際にエネルギーが高まり、CO2分子が振動する原理を用い、CO分子の振動を高性能マイクで音として拾うことで、CO2濃度を算出します。光学的な経路の確保が不要ですが、半導体部品で実現する技術が確立されておらず、今までは実験室等で用いられる計測機器のみで使用されていた技術でした。この度、半導体センサーとして実現する技術が確立され、NDIR方式よりも小型サイズでCO2センシングを可能にすることができました。

両方式共にCO2を直接検出しているため、正しくCO2濃度測定が可能となっています。

[NDIR方式]

[光音響方式]

ガスセンサーの仕組み

CO2センサーの様に、ガスを検出できる半導体式ガスセンサーがあります。主な測定方式は、MOX(金属酸化物)方式と呼ばれるもので、加熱されたMOXが水素分子等の揮発性有機化合物(VOC)と反応する事で抵抗値が変化し、その抵抗値の変化を基にガス濃度を算出します。

このセンサーではガス種の判別はできず、VOC全般に反応します。そしてVOCに反応するこのガスセンサーがCO2センサーとして使われているケースもあります。VOCもCO2も同じくガスでありますが、ガス種を判別することができないため、このセンサーでCO2濃度を算出している場合、CO2を正しく検出しているか判断することはできません。

CO2濃度とCO2 equivalentの違い

上記で述べた様に、ガスセンサーの中にはCO2濃度測定ができるものとして、CO2 equivalent(CO2 eq)方式というものを謳っているセンサーがあります。

CO2 eqとは、H2濃度に基づきCO2濃度を推定したCO2濃度測定方式となります。
CO2センサーの仕組み」の項で説明した様に、CO2センサーは直接CO2分子を測定しているため、正しく濃度測定が可能です。

一方、CO2 eqでは、H2に基づいてCO2濃度を推定する方式のため、周囲のH2VOCに含まれるH2に反応してしまいます。周囲にVOCがある環境ではガスセンサーはVOCに含まれるH2からCO2濃度を推定するため、高濃度VOC環境下では実際にはCO2が低濃度にも関わらず、CO2濃度が高いとセンサーが誤認識してしまうことになります。

まとめ

市場には、CO2を直接測定するCO2センサーと、疑似的にCO2を測定するガスセンサーがあり、CO2濃度測定をおこなうためのセンサーを選ぶ際に必ず確認する必要があるものが測定方式です。正しくCO2濃度測定ができるセンサーは光学式(NDIRや光音響方式)のセンサーであり、MOX方式のガスセンサーではH2濃度からCO2濃度を換算しているため、CO2濃度を正しく測定することができません。

  

経済産業省からも「二酸化炭素濃度測定器の選定等に関するガイドライン」が交付されておりますので、参考にしてみてください。
経済産業省:https://www.meti.go.jp/press/2021/11/20211101002/20211101002.html

また、SENSIRION社では、CO2濃度測定を行うためのセンサーとして、NDIR方式のSCD30、半導体CO2センサーとして小型化に成功した光音響方式のSCD40と言った、CO2センサーを提供しています。これらのセンサーでは、CO2濃度測定に必要な自動自己校正の機能の他に強制校正機能も有しており、より短時間に簡単に校正点を決めて、CO2濃度測定を実施することが可能とです。

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