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はじめに

半導体デバイスや電子機器の設計に携わる技術者にとって、ESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)対策は避けて通れない重要テーマです。特に「電子機器のESD保護はHBM ±2kVで十分なのか?」という疑問は多くの設計者から寄せられます。

本記事では、この疑問に答えるために、製造現場および実使用環境で適用される2つのESD試験モデル —HBM(Human Body Model)とIEC 61000-4-2— を比較しながら、必要な保護レベルについて解説します。

静電気放電(ESD)とは?

静電気が帯電した物体が別の物体に近づいたり接触したりすることで電荷が移動し、短時間に大電流が流れる現象がESDです。この高速・高エネルギーの過渡現象はICに深刻なダメージを与える可能性があります。ESDは製造工程(加工、組立、テスト、パッケージング)だけでなく、ユーザーが実際に機器を使う場面でも発生します。

部品レベルのESD試験:HBM(Human Body Model)

HBMは、帯電した人体がICに触れた際のESDを模擬する部品レベルの試験で、最も広く使用されています。試験規格は JEDEC JESD22-A114Eです。

■HBMの試験条件
 ・100pFコンデンサーを使用
 ・1,500Ω抵抗を介して放電
 ・試験電圧:±1kV〜±8kV
 ・立ち上がり時間:5〜10ns
 ・減衰時間:約150ns
 ・HBMは“管理された製造工程でのESD環境”を対象とした試験であり、製造ラインでICがESDに耐えられるかを確認

システムレベルのESD試験:IEC 61000-4-2

 IEC 61000-4-2は、実際のユーザー環境で機器が受けるESDを模擬するためのシステムレベル試験です。

■IEC 61000-4-2の試験条件
 ・150pFコンデンサー
 ・330Ω抵抗を介して放電
 ・立ち上がり時間:0.7〜1ns
 ・30ns付近に第2ピークを持つ波形
 ・試験は正負それぞれ最低10回
 ・HBMよりもはるかに高いピーク電流と高速な立ち上がりを持つのが特徴

■試験レベル(接触放電)

IEC61000-4-2(Contact)

Test Voltage

Level 1

2kV

Level 2

4kV

Level 3

6kV

Level 4

8kV

HBM ±2kVは十分か?ピーク電流で比較

HBMとIEC 61000-4-2では、同じ電圧でもピーク電流が大きく異なります。
■±2kV~±8kVにおけるピーク電流比較

IEC Level(Contact)

Test Voltage (kV)

Component-Level HBM Ipp (A)

System-Level IEC610004-2 Ipp (A)

1

2

1.33

7.5

2

4

2.67

15.0

3

6

4.00

22.5

4

8

5.33

30.0

 IECのピーク電流はHBMの 5.6倍以上 です。さらに、±8kVのHBM試験(5.33A)よりも、±2kVのIEC試験(7.5A)の方が大きいことも分かります。
つまり、HBMで±8kVに合格したICでも、IEC ±2kVで破壊される可能性があります。

左図は、±8kV条件で得られるIEC 61000-4-2とHBMの電流波形を並べて比較したものです。 この図から読み取れるように、IEC 61000-4-2のパルスは立ち上がりが非常に鋭く、最初の電流ピークは1nsにも満たない時間で到達します。それに対し、HBMではピークに達するまで5〜10nsほど要し、初期の電流量も比較的控えめです。

さらに、IECの波形では2つ目の電流ピークが約18A前後に達し、HBMで見られるピーク値よりも大幅に大きくなります。総合的に見ると、IEC 61000-4-2のパルスは、HBMに比べて立ち上がりの速さ・電流値・放出されるエネルギー量のすべてが大きく、ICに与える負荷は格段に厳しいものとなります。そのため、システム全体をESDから保護するには、高エネルギーの急峻なパルスを低インピーダンスで受け止められるESD保護素子を組み込むことが不可欠になります。

なぜシステムレベルの保護が必要なのか?

・HBMは主に工場内でのESD環境を想定
・IEC 61000-4-2はユーザーが操作する実環境を再現
・スマートフォン・家電・産機など、あらゆる製品がESDの脅威にさらされる
・半導体微細化によりICはさらにESDに弱くなっている
したがって、製品を市場に出す際にはシステムレベルでのESD対策が不可欠となります。

解決策:システムレベルのESDを吸収するTVS保護素子

セムテック(Semtech)は、高性能で信頼性の高いTVS(Transient Voltage Suppressor)製品のトップメーカーです。TVSは高速で大きなエネルギーを吸収し、ICをESDやEOSから保護します。

「車載用TVS、産業機器用TVS、民生用TVS」など、幅広いアプリケーションに対応したラインアップがあります。

まとめ

・HBM ±2kVは製造工程向けであり、実環境の保護レベルとしては不十分
・システムレベルのIEC 61000-4-2は、HBMより過酷で、電子機器の実使用に必須の試験
・市場での信頼性を確保するには、TVSなどのシステムレベルESD保護が必要

今後の製品設計においては、HBMの数値だけでなく、IECレベルでの保護を前提とした設計が重要になります。セムテックの保護製品ラインアップの詳細については、マクニカまでお問い合わせいただければと思います。

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