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FPGAより手軽にAI推論を試せるMCUプラットフォームとは?

近年、AI技術の進化に伴い、エッジデバイスでのAI推論が注目を集めています。従来、こうした処理を実現するためにはFPGAField Programmable Gate Array)がよく利用されてきました。しかし、FPGAは柔軟性が高い反面、開発環境の複雑さやコスト面でハードルが高いという課題があります。

そこで、より手軽にAI推論を試せる選択肢として注目されているのがMCUMicro Controller Unit)ベースのプラットフォームです。

なぜMCUなのか?

MCUは、組込み機器やIoTデバイスで広く使われている低消費電力のプロセッサーです。近年では、AI推論に特化した機能を備えたMCUが登場し、以下のようなメリットを提供しています。

 ・ 開発の容易さ
   MCUはC言語やRTOSなど、既存の組込み開発環境で利用可能です。ハードウェア記述言語を学ぶ必要がありません。

 ・ 低コスト・低消費電力
   部品コストが安く、消費電力も抑えられるため、バッテリー駆動のIoT機器に最適です。

 ・ AIライブラリの充実
   TensorFlow Lite for MicrocontrollersやCMSIS-NNなど、MCU向けのAI推論ライブラリーが整備されており、学習済みモデルを簡単に移植できます。

具体的なユースケース例

AI推論を活用したMCUプラットフォームは、さまざまな分野で実用的なソリューションを提供できます。具体的なユースケースについてご紹介いたします。 

 ・ 食品認識レジ
   カメラで商品をリアルタイムに判別し、レジ業務を効率化します。人手不足対策や業務の加速に貢献します。

 ・ 物流・荷物の仕分け
   AIとカメラを組み合わせて荷物を自動分類します。倉庫や配送センターでの作業効率を大幅に向上させます。

 ・ 交通モニタリングカメラ
  道路や交差点に設置されたカメラで、AIが車両や歩行者の動きを検知します。渋滞や危険行動をリアルタイムで検出し、交通管理や安全対策に活用できます。

 

これらは、最新の高性能MCUとAI推論ライブラリを組み合わせることで、低消費電力かつリアルタイム処理を実現できる代表的なアプリケーションです。

画像制作者:ルネサスエレクトロニクス株式会社様、制作方法:Microsoft 365 Copilot によるAI作成画像

AI推論を試すためのステップ

MCUプラットフォームでAI推論を体験するのは、意外と簡単です。ここでは、Renesasの最新評価ボード EK-RA8P1 を例に、具体的な手順を紹介します。

1. 評価ボードを入手する

Renesasサイトから EK-RA8P1評価ボード を購入します。このボードは、LCD拡張ボードやカメラ拡張ボードもセットになっているので、AI(人工知能)、IoT、画像認識、音声認識、リアルタイム解析などのアプリケーション開発に最適です。
特に、RA8P1はRenesas初のAIアクセラレータ Ethos-U55 NPU を搭載しているので、MCUで本格的なAI推論を実現できます。

2. 開発環境をセットアップする

評価ボードEK-RA8P1が届いたら、PC側の開発環境を準備し、評価ボードへの書き込みを行います。


必要な開発環境
 • e² studio:Renesas公式の統合開発環境(IDE)
 • Flexible Software Package(FSP):マイコンが動作するための各種ドライバをまとめたソフトウェアパッケージ

 

簡単なセットアップ手順
 1. e² studioとFSPをインストール
  FSPプラットフォームインストーラのダウンロードサイト:Flexible Software Package (FSP) | Renesas ルネサス
  ※e² studioとFSPを一緒にダウンロードできます

 
 2. サンプルプログラムをe2-studioにダウンロード
  (以下GIFでは、AI Navigatorを使用し、Image classificationをダウンロードする方法を説明しています)

 3. 評価ボードをセットアップ
  ① LCD拡張ボードとカメラ拡張ボードをメインボードに取り付けます
  ② EK-RA8P1ボードとPCをUSB-Cケーブルで接続します

 
 4. 評価ボードに書き込む
  「ボード上で実行」⇀「AIを実行」をクリックします ※完了に数分かかります

AI Navigatorとは?
Renesasが提供する統合開発環境e² studio向けのプラグイン群で、組込みAIシステム開発を効率化するためのツールセットです。

3. AI推論を動かしてみる

RA8P1評価ボード向けに、以下のAIサンプルプログラムが用意されています。詳細は以下リンク(GitHub)をご確認ください。

なお、どちらもAI Navigatorを使用することで、e2-studioへ直接ダウンロードすることができます。

これだけで、AIのサンプルプログラムがすぐに動かせます。初めての方でも1時間程度で試すことができます。

 

画像分類 (Image classification): カメラに映った物体をAIが判定

検出 (Face detection): 人の顔をリアルタイムで検出

まとめ

FPGAは高い柔軟性と性能を誇りますが、開発難易度やコストの面で敷居が高いのが現実です。一方、MCUプラットフォームは、既存の組込み開発スキルを活かしながら、低コストでAI推論を試せる魅力的な選択肢です。IoTやエッジAIの普及に伴い、MCUによるAI推論は今後ますます重要な役割を果たすでしょう。

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