【Inter BEE 2025】出展レポート コンテンツ制作のDX実現のための映像伝送システムの構築
2025年11月19 ~ 21日に幕張メッセで、国内最大級の放送・映像業界イベントInter BEE 2025が開催され、3日間で34,000名以上が来場されました。
マクニカは今回のInterBEE 2025で、特別展示「IP Pavilion」と個別ブースで出展しましたので、当日の展示内容をご紹介します。
1. IP Pavilionにおける拠点間のリアルタイム映像伝送
1-1. JPEG XS圧縮による拠点間のリアルタイム映像伝送@IP Pavilion
IP Pavilionでは、大阪・東京・幕張の3拠点を次世代ネットワーク回線で接続し、高画質かつ低遅延な映像のリアルタイム伝送の実用性を検証しました。
特に拠点間通信をおこなう際に、従来のST 2110 -20による非圧縮映像を用いると、1つの映像伝送をおこなうだけでも通信帯域幅が膨大になってしまう欠点があります。
そこで、通信帯域幅を大幅に削減できるJPEG XSによる映像圧縮技術を利用し、ST 2110 -22による映像伝送を試みました。
弊社製品のMEP100 *1 は、東京拠点(スカパーJSAT東陽町)内で流れるST 2110 -20の非圧縮映像4本をJPEG XS方式で圧縮し、ST 2110 -22で幕張へ映像を伝送するコンバーター機能として活用しました。
*1:MEP100は、主要なSMPTE規格やNMOS規格に対応したSmartNICであり、FPGA内でプロトコル処理やJPEG XSのエンコード・デコードをおこなう機能を保有。
上の図は、IP Pavilion全体のシステム構成図です。
マクニカはスカパーJSAT東陽町のAサブに位置しており、Aサブ内の映像をJPEG XSで圧縮し、幕張メッセ側にリアルタイムで映像伝送しております。
下の図は、MEP100周辺の映像伝送の概要図です。
SMPTEのプロトコル解析とJPEG XSのエンコード・デコードをFPGA内で処理するため、サーバー内のCPUやGPUに負荷がかからないようになっています。
また、JPEG XSで圧縮することで通信帯域幅を削減しつつ、視覚的には画質の差が判別できないレベルの高画質な映像を伝送することができます。
スカパーJSAT 東陽町 Cisco® N6 サーバーのシステム構成概要
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項目 |
内容 |
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サーバー |
Cisco® UCS C220 M6 |
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PCIe |
Macnica MEP100 (100G SmartNIC) |
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入力映像 |
ST 2110-20 (非圧縮) × 4本 |
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出力映像 |
ST 2110-22 (JPEG XS) × 4本 |
1-2. 拠点間の映像伝送の様子
MEP100 内でJPEG XSによる圧縮をおこなうことにより、圧縮前と圧縮後で視覚的に画質の差を感じないようにしながら、データ量の圧縮に成功しました。
また、生成された4本の ST 2110-22 ストリームは、幕張メッセへ安定して伝送されました。
この結果より、MEP100 をゲートウェイとして利用することで、専用線のような広帯域保証がないネットワーク環境下でも、放送品質のリモートプロダクションが可能であることが実証されました。
こちらの画像・動画は、実際にスカパーJSAT東陽町から幕張メッセへ伝送された映像の様子になります。
矢印元の映像をJPEG XSに圧縮して、伝送しています。
2. 個別ブースにおけるマルビュー展示
2-1. 個別ブースの展示コンセプト
IP Pavilionの展示では、JPEG XSを用いた拠点間のリアルタイム映像伝送をおこないました。
個別ブースでは、「ローコスト且つ柔軟な機器構成を実現するマクニカトータルソリューション」をテーマに、ホワイトボックススイッチ・光トランシーバー・MEP100 による映像伝送とマルチビュー表示を展示しました。
今回の展示で用いた各機器と役割の概要は下記になります。
マクニカブース展示 システム構成概要
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分類 |
製品・メーカー |
役割 |
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サーバー |
自作PC(Xeon 4509Y) |
ST 2110映像受信、映像のマルチビュー化 |
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スイッチ |
UfiSpace® (ホワイトボックススイッチ) S9510-30XC |
ネットワークのルーティング |
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光トランシーバー |
Coherent® (旧Finisar®) SFP+ / QSFP+ |
機器間のネットワーク接続 |
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映像ソース |
カメラ映像、ファイルソース |
ST 2110 映像出力(1080p, 59.94Hz:計4本) |
2-2. 映像のマルチビュー化の様子
MEP100 は内部に FPGA を搭載しているため、SMPTE規格のプロトコル処理の際にCPU負荷をかけずにFPGA内で処理をおこないます。
また、4つの映像のマルチビュー化をおこなう際に使うリソースは、CPU・GPUを選択可能であるため、サーバーの内部構成を柔軟にカスタマイズできます。
本展示では、ST 2110 出力対応カメラやファイルソースから受信した異なる4つの映像ストリームを、MEP100 内部で1つの映像に合成し、マルチビュー化してリアルタイム出力しました。
これにより、SMPTE規格による映像伝送の際に高価な専用機材を用いずに、ローコスト且つ汎用機器を用いた柔軟なシステム構築が可能であることをお見せしました。
4. おわりに
今回の Inter BEE 2025 では、IP Pavilion における「JPEG XS を活用した拠点間のリアルタイム映像伝送」と、マクニカブースにおける「汎用機器を組み合わせた柔軟な映像伝送システム」の2点を展示しました。
MEP100 は、SMPTE規格のプロトコル処理やJPEG XSのエンコード・デコードを1枚のカード内でおこなうため、CPUやGPU負荷を軽減することができます。
なお、今回MEP100で扱ったストリーム数は計4本が最大でしたが、MEP100は1080p、1080iの場合は最大32本を同時に取り扱うことが可能です。
SMPTE規格による映像伝送のシステム構築に関してご検討の際は、ぜひ弊社までお問い合わせください。