はじめに
スマートセンシングを実現するためにエッジAIセンサーは欠かせません。
しかし、狭い場所でのスマートセンシングを実現する場合、センサー部とエッジAIプロセス部を分けてつなげようとすると複数のセンサーを取り付けるため、配線が複雑になってしまいます。
配線を取り外し無線化するために、電池で駆動するようにすると、ボードの消費電力が非常に重要な課題となってしまいます。
業界で最も低消費電力のBLE(Bluetooth® Low Energy) SoCであるオンセミ社のRSL10はArm® Cortex®-M3プロセッサーを内蔵しています。
RSL10 SIP(System-in-Package)はそのRSL10とアンテナ(※)、その他周辺受動部品をワンパッケージ化した製品です。
RSL10センサー開発キットはRSL10 SIPと3軸加速度センサー、3軸ジャイロスコープ、気圧、湿度、温度センサー、デジタルマイクロフォンを搭載したIoTアプリケーション開発キットです。
(※) 国際無線規制(CE, IC, KC, MIC, FCC)に認定
今回はこのRSL10センサー開発キットを使って3軸加速度センサー、3軸ジャイロセンサーのセンシングデータをRSL10 SIP内部でエッジAI処理をしてBLEで送信するBLEエッジAIセンサー基板の構成方法を紹介します。
使用機器および開発ツール
RSL10センサー開発キット(RSL10-SENSE-DB-GEVK)
基板上のBosch社BHI160低消費電力センサーハブの加速度、ジャイロセンシングデータを読み取り、RSL10 SIP評価ボードにBluetooth®でセンシングデータを送信します。
RSL10センサー開発キットにはその他センサー機能が搭載されていますが、今回のデモンストレーションでは使用しません。
RSL10-SIP-001-GEVB
RSL10 SIP評価ボード。RSL10センサー開発キットから送信されたセンシングデータを受信してPCへ渡すコミュニケーションリンクとして機能します。
また、RSL10センサー開発キットのRSL10 SIPフラッシュ書き込みとしても使用できます。
onsemi IDE
Eclipse®ベースの統合開発環境です。
SensiML社Analyticsツールキット
最適化されたAI IoTセンサー認識コードを作成します。今回はデモンストレーション用として無償のCommunityプランでライブラリーの作成をおこないます。
RSL10 USBドングルおよびBLE Explorerを使用して動作させてみた
準備
RSL10 USBドングル(RSL10-USB001GEVK)は汎用的なセントラルデバイスとして機能し、周辺ペリフェラルのスキャン、接続などの評価が可能です。RSL10センサー開発キットで推論結果情報を確認するために使用します。
センシングデータの学習
RSL10センサー開発キットページ (*)からRSL10 SensiML Edge AI Software Packageをダウンロードし、ON Semiconductor IDEにCMSISパックをインポートします。
インストールしたCMSISパックからRSL10-SIP-001-GEVBにはRsl10_ble_linkをビルドしフラッシュに書き込み、RSL10センサー開発キットにはRsl10_data_collectionをビルドしフラッシュに書き込みます。
両方のボードをリセットするとRSL10-SIP-001-GEVBとRSL10センサー開発キット間で接続が確立します。
その後、SensiML社Analyticsツールキットの『Data Capture Lab』を用いてセンサーデータを収集およびラベリングをおこないます。
今回はRSL10センサー開発キットで円(Circle)を描いたときと三角(Triangle)を描いたときを判断する推論エンジンを検討します
Data Capture Labで収集し、ラベリングしたデータを基にSensiML™ Analytics Studioを用いて推論エンジンライブラリーを生成します。
推論エンジンライブラリーのRSL10センサー開発キットへの適用
RSL10 SensiML Edge AI Software PackageのRsl10_data_collectionに含まれるソースコードファイルをSensiML™ Analytics Studioで生成したファイルに置き換えます。SensiML™ Analytics Studioで生成されたファイルから、Classification=1のときに円(Circle)を意味し、Classification=2のときに三角(Triangle)であることが読み取れます。
これから、今回のデモンストレーション機ではClassification=1の時に”Circle”、Classification=2の時に”Triangle”というデータをBLEで送信するようにコードを修正しました。特に送信データを変更する必要がなければコードの修正は必要ありません。
RSL10センサー開発キットのデモンストレーション動作確認
BLE Explorerを起動し、RSL10 USBドングル経由で『Sensor_Peripheral_Server』と接続しDiscover Servicesタブをクリックし受信データを表示します。RSL10センサー開発キットで円、三角を描き、その結果がBLE Explorerの画面に表示されることが確認できました。
最後に
オンセミ社RSL10は業界で最も低い消費電力のBLE SoCですが、エッジAIプロセスを組み込んで低消費電力BLEエッジAIセンサー基板を構成することができました。今回はデモンストレーションとしてわかりやすいように円(Circle)、三角(Triangle)を識別するコードを作成しました。今回ご紹介した開発環境を用いることで、動きや音、産業機器の振動解析センサーデバイスをご検討いただくことが容易におこなえます。
なお、今回のデモンストレーション機は最終量産アプリケーションを想定したものではありません。最終量産アプリケーションへ適用されるさいは、十分に評価・検討ください。
お問い合わせ
今回紹介した製品および評価にご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。