はじめに
近年、生成AIの急速な進化により、「AIが実世界で動く」という世界観が現実になりつつあります。
その中でも注目を集めているのが、Physical AI(フィジカルAI)です。Physical AIとは、AIがカメラやセンサーを通じて周囲の環境を理解し、ロボットなどの身体を使って実世界で行動する仕組みを指します。ヒューマノイドロボットは、まさにその代表例です。人間向けに設計された環境を活用できるため、物流、製造、点検、介護、サービス業など幅広い分野で活用が期待されています。
今回紹介するUnitree G1(以下G1)は、Unitree Robotics社が開発したヒューマノイドロボットです。比較的コンパクトなサイズでありながら、高性能なセンサー群や演算プラットフォームを搭載しており、Physical AIの開発プラットフォームとしても注目されています。
本記事では、実際にG1を開封し、
・開封
・初期セットアップ
・起動
・リモコン操作
・ダンスパフォーマンス
までを試してみました。
これからG1の導入を検討している方や、Physical AI向けロボットに興味がある方の参考になれば幸いです。
なぜ今ヒューマノイドロボットが注目されているのか?
物流倉庫、工場、オフィス、商業施設など、多くの現場は人間向けに設計されています。
車輪型ロボットの場合は環境側の変更が必要になるケースがありますが、ヒューマノイドロボットは人間と同じような構造を持つため、既存環境を活用できる可能性があります。
近年はVision Language Model(VLM)やLarge Language Model(LLM)のような生成AIの進化によって、ロボットが周囲を理解し、人間と対話しながら行動する未来も現実味を帯びてきました。そのため、ヒューマノイドロボットはPhysical AI実現の重要なプラットフォームとして注目されています。
出典:https://www.unitree.com/g1
Unitree G1とは?
G1は、Unitree Robotics社が開発したヒューマノイドロボットです。
本体サイズは全高約132cm、重量約35kgと比較的コンパクトながら、多数の関節自由度とセンサーを搭載しています。研究開発用途だけでなく、将来的な業務利用を見据えた開発プラットフォームとして設計されています。
主な仕様
出典:https://www.unitree.com/g1
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項目 |
内容 |
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サイズ(起立時) |
1320×450×200mm |
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重量 |
約35kg |
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演算モジュール |
NVIDIA® Jetson Orin™ NX |
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メモリ |
16GB |
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ストレージ |
2TB |
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センサー |
Depth Camera + 3D LiDAR |
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通信 |
Wi-Fi 6、Bluetooth® 5.2 |
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バッテリー |
9000mAh |
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連続動作時間 |
約2時間(歩行時) |
起動前準備
①開封
G1は専用ケースに収納された状態で納品されます。専用ケースはキャスター付きで移動しやすい構造です。
ケースは頑丈な構造になっており、本体や付属品が輸送時に破損しないよう工夫されています。
同梱物は以下のとおりです。
・Unitree G1本体
・Unitree R3 Controller(以下コントローラー)
・バッテリー
・充電器
・各種付属品
本体重量は約35kgあります。
マニュアルでも推奨されているように、本体を移動する際は複数人で作業することをおすすめします。
②バッテリー装着
まずは本体へバッテリーを装着します。電源ボタンが背中側になるようにします。
バッテリーはしっかり奥まで差し込む必要があります。途中までしか入っていない場合、正常に固定されません。
③アプリ準備
本体と接続するためには専用スマートフォンアプリ「Unitree Explore」を使用します。
スマートフォンへアプリをインストールし、Bluetoothを有効化した状態でG1との接続を行います。
④コントローラー接続
コントローラーの電源を投入すると本体との通信が開始されます。
正常に接続されると通信状態を示すインジケーターが有効になります。
出典:https://www.unitree.com/R3
G1を起動してみる
起動シーケンスでは複数の制御モードを経由します。
初めて操作する際は、このモードの意味を理解しておくことが重要です。
起動時のモード遷移
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モード |
概要 |
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Zero Torque Mode |
モーター非制御状態 |
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Damping Mode |
減衰制御状態 |
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Ready Mode |
起立準備状態 |
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Running Mode |
歩行可能状態 |
起動後の流れ
① 本体の電源を投入すると起動が開始されます。
② 起動完了まで約1~2分程度必要で、起動後には音声ガイダンスが再生されます。
③ 起動後、Damping Modeへ移行させます。
④ その後、Ready Modeへ移行するとロボットが自立姿勢を作り始めます。
⑤ 姿勢安定後、Running Modeになると歩行操作が可能になります。
※ 本体への電源投入から歩行可能状態になるまで2~3分程度かかります。
※仰向けや着座の状態が起き上がることも可能です。
出典:https://support.unitree.com/home/en/G1_developer/remote_control
G1の機能を試してみた!
リモコン操作を試してみた
Running Modeではコントローラーによる歩行操作が可能です。
ジョイスティックを使い、
・前進
・後退
・左右旋回
を操作できます。ゲームコントローラーに近い印象です。
急激な入力を与えるのではなく、コントローラーを少しずつ操作するとロボットがスムーズに動作します。
操作中は転倒しないか不安になる瞬間もありますが、実際には非常に安定しており、軽く押しても転倒することはありませんでした。
本体にはIMU(慣性計測装置)が搭載されており、常に姿勢や重心の変化を検知しながら制御を行っています。
歩行中や停止時にもバランスを維持する様子から、ヒューマノイドロボットに求められる姿勢制御技術の高さを感じました。
一方で、足裏は樹脂製で硬いため、オフィス環境では想像以上に足音が響いてしまいました。
ジェスチャー操作を試してみた
G1は歩行だけでなく、さまざまなジェスチャーも実行できます。実際に試してみたのは、Wave Hand・Handshake などのモーションです。コントローラーから決められた入力をすることでモーションを実行します。単なるロボットアームではなく、ヒューマノイドロボットらしい表現力を感じることができます。展示会や来客デモ用途でも活用が期待できます。
ダンスモードを試してみた
ダンスモードでは歩行モードとは異なるパフォーマンス用モーションを実行でき、腕だけではなく腰や脚も連動しながら全身で動作していることが分かります。特に注目すべき点は、片足に重心を寄せながらバランスを維持していることです。本体に搭載されたIMUを活用しながら、リアルタイムに姿勢制御を行っているため、ダイナミックな動作でも安定感があります。
操作してわかった注意点
緊急停止を確認
ロボットを安全に運用するためには、緊急時の操作方法を最初に確認しておくことが重要です。
特にDamping Modeへの移行方法は事前に確認しておくことをおすすめします。
Climb Modeに注意
意図せずClimb Modeへ移行すると、ジョイスティックを操作していなくても脚が動き続けることがあります。初めて見ると故障したようにも見えますが、Climb Modeが有効になっている可能性があります。その場合は「START」を2回押して脚を停止、その後Running Modeへ戻してください。
動作エリアを十分確保する
ダンスやジェスチャーを実行する際は、周囲に十分なスペースを確保してください。
初めて触る人向けトラブルシューティング
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事象 |
確認ポイント |
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Running Modeにならない |
Ready Modeへ移行してから実施 |
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脚が不自然に動く |
Climb Mode確認 |
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すぐ停止したい① |
「L2+B」を5秒長押しDamping Mode実施 |
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すぐ停止したい② |
「START」を2回押し |
技術者視点で見たG1の魅力
G1の最大の魅力は、デモンストレーション用ロボットではなく、Physical AIの開発プラットフォームとして活用できる点にあります。
特に演算基盤としてNVIDIA Jetson Orin NXを搭載していることは大きな特長です。これにより、エッジAI推論やロボット制御を1台のプラットフォーム上で実現できます。
SDKも提供されており、アプリケーション開発が可能です。
昨今、マクニカでもPhysical AI分野において
・NVIDIA Isaac Sim™ を活用したシミュレーション環境構築
・テレオペレーションによる実ロボットデータ収集
・ROS 2を活用したロボットアプリケーション開発
・AIによる自律行動制御
といった技術領域の検証を進めています。
Physical AI市場が拡大する中で、G1はこうした技術を実機で検証するためのプラットフォームとして高い有用性があります。
まとめ
今回は、G1の開封から初期セットアップ、起動、リモコン操作、ダンスパフォーマンスまでを実際に検証しました。
ヒューマノイドロボットというと、「研究用途のロボット」や「将来の技術」という印象を持つ方も多いかもしれません。しかし実際に触れてみると、歩行やジェスチャーといった基本動作の完成度は高く、人型ロボット技術の進化を肌で感じることができました。特に印象的だったのは、本体に搭載されたIMUによる姿勢制御です。歩行時やダンス時には常にバランスを取り続けており、軽く押した程度では転倒することなく姿勢を維持していました。これまで私が持っていたロボットのイメージとは異なり、ヒューマノイドロボット技術の成熟を感じることができました。
マクニカでは今後も、Physical AIやロボティクス分野に関する技術検証や情報発信を継続していきます。
本記事が、Unitree G1やヒューマノイドロボットに興味をお持ちの方、そしてPhysical AI活用の第一歩を検討されている方の参考になれば幸いです。