近年、AIの飛躍的な技術進歩により、IoTデバイスに高度なAIを実装したエッジコンピューティングの活用事例が様々な業界や企業より報告されています。マクニカでも、NVIDIA社提供のAI開発プラットフォームで圧倒的な使いやすさを誇るJetsonを活用したAIエッジコンピューティングの実証実験を試みるお客様より、「実際の現場へデバイスを設置した後に運用時の管理やソフトウェアの更新を行う方法がないか?」 という相談を多く頂きます。

 

本稿では下記のような情報を集めている方に、事前に知っておいて頂きたい課題と解決策についてご紹介させて頂きます。

・NVIDIA® Jetsonを活用したAI IoT運用システムを構築したいと考えている方

・遠隔地でPoCを実施したいと考えている方

高性能AIエッジコンピューティングの普及に伴う運用面の課題

Jetsonのような高性能なエッジデバイスは、Deep Learning技術を活用した画像解析アプリケーションを作る事ができますが、そこには様々なソフトウェアの組み込みが行われ、結果としてシステムは複雑になります。システムが複雑化する事により、ソフトウェアの更新や修正なども頻繁に実施される事になりますが、遠隔地や人の出入りのできない場所に組み込まれるエッジデバイスへの対応は、手間が掛かり時間を要します。また、AIアプリケーションでは技術の進歩が速く、モデルの更新や新しい技術の導入など、システムを長期で運用するためにもソフトウェアデファインドで更新できる仕組みが求められています。そういった背景から高性能なエッジコンピューティングにおける管理運用システムの重要性が益々増してきております。

スマートシティーの先駆け、台湾のAI交通監視で抱える課題

スマートシティーの事例の一つが道路での交通量調査や危険行為の検知です。高性能なエッジデバイスであるJetsonは監視カメラなどの画像情報を通して、車両分類、ナンバープレート検知、侵入禁止エリアへの侵入検知など高度なAIアプリケーションを動作させています。 具体的な事例の一つとして、台湾で稼働しているインテリジェントな交通監視システムがあげられます。台湾の高速道路や信号機の近くに設置されたJetson内蔵エッジAIデバイスにより、車両タイプと運航経路の情報を収集し、交通量をリアルタイムに把握する事で推奨ルートの探索などに活用されています。

一方で、AIエッジデバイスの普及に伴い、運用面での課題がクローズアップされてきました。

道路などに多く設置されたデバイスに問題が起きた場合に、システム運用のトラブル対応と保守のために現場に出向く必要がでてきます。オンサイトでのテクニカルサポートは1回の訪問だけでも10万円以上かかるケースもあります。それにも関わらず、大抵の保守サポートでは再起動のみで回復する事があります。台湾の高速道路ではこういった問題に備えるため、Jetson製品にも活用できるAllxon社のリモートデバイス管理サービスを活用しています。

解決策① “Jetsonに対応”が安心のリモートデバイス管理サービス

エッジデバイスのリモート管理運用システムは、様々な企業やクラウドベンダーから提供されており、Jetsonと連携できる仕組みも多くあります。しかし、どのサービスにも一長一短があります。お客様のご要望に応じてマクニカでは様々な実現方法を提案可能ですが、今回はシステム構築・保守が不要のAllxon社のSaaSソリューションをご紹介させて頂きます。

Jetsonを含むエッジデバイスの遠隔管理運用が可能な事、またデバイスのインターフェースやOSの差分を吸収して大量デバイスの導入でも管理を簡略化できる事が最大のメリットと言えます。さらに実証実験の1台からでも遠隔監視システムを使用可能で、1台当たりの価格も年間数千円と低コスト設定であるため、誰でも気軽に導入ができます。低コストながら、台湾政府の厳しいシステム要求もクリアし、専門の情報セキュリティー会社と契約し最高レベルのセキュリティーを担保したサービスとなります。

Jetsonリモートデバイス管理システムの実現方法
Jetsonリモートデバイス管理システムの実現方法

解決策② すぐに使えるJetson AI Box製品も登場

産業PC最大手のアドバンテック社では、Allxon社と提携し、多様な環境で大規模なエッジAIリモート管理を実現するAI BOXの販売を開始しました。NVIDIA Jetson Xavier NXを備えたAI BOXは工業向けデザインと多様なインターフェースを特長としています。さらにAllxon社のエージェントをプリインストールした状態で出荷される製品ラインナップがあり、産業用AI BOXとしてお客様にてAIアプリケーションを実装すれば、Allxon社のサービスをすぐに活用する事が可能です。対応デバイスは下記の通りです。また、製品ラインナップの拡充も予定しております。(2020年9月時点)

アドバンテック社AIBOX製品
アドバンテック社AIBOX製品

Jetsonでリモートデバイス管理を試してみよう

リモートデバイス管理の構成例は以下の通りです。

リモートデバイス管理構成例
リモートデバイス管理構成例

エッジデバイスの接続はたったの2STEPのみ

管理サーバー側とエッジデバイスの接続方法は2STEPで完了します。

 

STEP1 エッジAIデバイス(Jetson)にAllxon社のエージェントソフトをインストール (アドバンテック社製品はインストール済み)

STEP2 管理サーバー側にエッジデバイスのシリアルナンバーなどの情報を登録

 

これでリモートデバイス管理の準備は完了です。

ダッシュボード画面(接続してるデバイス全体の状態把握が可能)
ダッシュボード画面(接続してるデバイス全体の状態把握が可能)
登録されているデバイス情報
登録されているデバイス情報

Jetsonでリモートアップデートを試してみよう

Allxon社のリモート管理システムを活用する事で、登録されているデバイスに対してファームウェアの一括アップデートや、アップデート時間の指定、アップデート状況の確認が可能です。

アップデートもたったの2STEPのみ

アップデートの実施は2STEPで完了します。

 

STEP1 更新したいファイルをAllxon ポータルに登録

アップデートのためのアプリケーション登録画面
アップデートのためのアプリケーション登録画面

STEP2 更新日時や対象グループを選択し、配布を実行

配布を実行
配布を実行

ご興味をお持ちいただけた方は、今すぐお問い合わせください

本記事ではJetsonのリモート運用管理方法についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。要点をまとめます。

・Jetson内蔵エッジAIデバイスの実運用にはリモート管理システムが必須

・SaaSを活用すると、管理サーバー側のシステム構築不要でリモート管理システムの使用が可能

・アドバンテック社のAI BOX製品にはリモート管理システムのソフトウェアが内蔵されており、いま直ぐに使用可能

 

マクニカでは、長年にわたるJetsonのサポート実績とハードウェア、ソフトウェアに関する高い技術力により、エッジコンピューティングを導入検討されるお客様に対して運用後のデバイス管理・保守までを見据えたトータルソリューションとしてワンストップでご提供します。詳細情報をご希望の方はぜひ下記よりお問い合わせください。