ボディーダイオードとは

縦構造プレーナのNch-MOSFET(以下MOSFET)で、ソース側にあるPとドリフト層のNの間でダイオードが構成されます。これをボディーダイオードと呼び、方向はソース→ドレインの向きに順方向です。寄生ダイオードとも呼ばれ、基本的にMOSFETがスイッチ動作するには関係ないものですが、今ではボディーダイオード特性も規定したMOSFETが多くなっています。

例えば、インバーター回路などで還流ダイオードが要る場合があります。還流ダイオードとは、インダクタンス成分に残った電流をダイオードで還流させて消費させるものです。回路の負荷にインダクタンスがある場合、MOSFETがオンからオフへ切り替わっても、インダクタンスの電流はすぐに切り替わりません。切り替わる間はMOSFETに逆並列に入れた還流ダイオードを使って電流を流すことで、インダクタンスに蓄積されたエネルギも出力でき、MOSFETにかかるサージも低減させられます。

この場合にMOSFETのソースードレイン間に還流ダイオードが必要になりますが、ここをボディダイオードで代用する場合があります。ダイオードの損失で重要なのが順方向(VF)と逆回復時間(Trr)ですが、ボディダイオードの特性が良ければ外付けは不要となり回路小型化に役立ちます。

SiC-MOSFETのボディーダイオード

SiC-MOSFETもSi-MOSFETでも、PN接合のボディダイオードが存在します。SiCはワイドバンドギャップなので、ボディーダイオードの順方向電圧(VF)は4V程度で導通損となりますが、回路動作上で、ボディダイオードの導通期間が短い場合は大きな影響はありません。SiC-MOSFETのボディダイオードでは、Siよりも少数キヤリアのライフタイムが短いため、逆回復時間が小さくなり、逆回復損失は小さく抑えられています。

より小さな順方向電圧や逆回復時間を求めて、ディスクリートのSiC-SBDを外付けで使用する場合もありますが、損失低減効果は回路や動作条件などによっても変わってきます。

 

逆回復時間(Trr)は何に依存するか

PN接合ダイオードの逆回復時間は、基本的には少数キャリアのライフタイム(寿命)に依っていて、SiCでもここは同じですが、SiCは少数キヤリア寿命がSiよりも短いので逆回復時間も短くなります。他にも逆回復時間(Trr)は、電流や温度といった条件でも変わります。

逆方向電流の時間に対する変化の傾き(di/dt)が大きい、素子温度が高くなる、あるいは順電流が大きくなると、逆回復時間(Trr)は大きくなる傾向があります。

 

Microchip社のSiC-MOSFETには、一例として以下のようなTrrを持った製品があります。

Vdss / Rdson ==> Trr

1200V / 80mΩ ==> 34nS

1200V / 17mΩ ==> 40nS

700V / 60mΩ ==> 25nS

700V / 15mΩ ==> 38nS

 

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