SiCの物理特性がパワー半導体の高性能化に貢献

シリコンカーバイド(SiC)は、シリコン(Si)と炭素(C)の化合物からなる半導体物質で、ワイドバンドギャップ半導体と言われ、Siよりも絶縁破壊電界が大きい、飽和ドリフト速度が大きいなど、パワーエレクトロニクスにおいて優れた半導体の性質を持つものです。近年パワー半導体として技術開発と量産が進み、身近なものになりました。

1. シリコンカーバイドの物性

バンドギャップとは何でしょうか。バンドギャップとは、原子の価電子帯の電子が伝導帯へ飛び移る(励起する)のに必要なエネルギーで表したもので、伝導帯に移った電子は電気を流す役目になります。価電子帯と伝導帯の間は禁制帯と呼ばれ、そのエネルギー幅をバンドギャップと言います。バンドギャップが大きいと電気伝導のためによりエネルギーが要り、デバイスに適用した場合には高温でも漏れ電流が起こりにくいことに繋がります。
SiCは半導体物質として、

・バンドギャップが大きい

・原子間の結合が強い

・絶縁破壊電界が大きい

・飽和ドリフト速度が大きい

・熱伝導性が高い

といった特性を持ち、これらにより高速で高耐圧のパワー半導体が実現されています。

 

バンドギャップは、シリコン(Si)で約1.12[eV]、シリコンカーバイド(SiC)で約3.26[eV]、この値の差がバンドギャップが広いの意味です。

2. シリコンカーバイドを用いたパワーMOSFETの場合

パワーデバイスの耐圧は、絶縁破壊電界と厚みにより決まります。絶縁破壊電界が大きいと高い電界でも破壊しにくいため、耐圧確保に必要なウエハーの厚みを薄くできます。パワーMOSFETではウエハーの厚みが薄ければオン抵抗は小さくなりますから、この特徴をパワーMOSFETに応用した場合、高い耐圧と低いオン抵抗を両立できます。パワーMOSFETの低オン抵抗は、導通損失の改善とデバイスの温度上昇抑制に効果的です。

一般にパワーMOSFETの耐圧とオン抵抗は相反関係にあり、これはSiCでも同様なのですが、SiCの場合は高い耐圧域で低いオン抵抗を実現できることが大きな特徴です。飽和ドリフト速度は、高電界での電子の速度であり、SiCパワーMOSFETでは高速スイッチングが可能になるため、アプリケーション回路の周波数を高くするにつながります。

このように、SiCパワーMOSFETは、高電圧、高電力アプリケーションにおいて優れた性能を発揮するデバイスです。

3. まとめ

従来のSi製品との比較を以下の表にまとめました。

もはや従来のパワー半導体だけですべてをカバーできそうもありません。脱炭素、CO2削減といった社会課題にパワーエレクトロニクスは高効率で向き合う時代になりました。パワー半導体は多様化し、低損失・小型・軽量を実現できるSiCパワー半導体は多くの分野へ広がると期待されています。

Microchip社(マイクロチップ)では、700V, 1200V, 1700Vの耐圧で、MOSFETとSBDのディスクリート及び、パワーモジュールまでSiCパワーデバイス製品を幅広く取り揃えております。中でもパワーモジュール製品では各耐圧、トポロジーで多くの品種をご用意しています。

 

高耐圧(650V~1700V)を想定したおよその特徴を表にまとめています。Si MOSFETは耐圧の低いデバイスでは導通損失の低いものもあります。

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