Microchip 社 不揮発性 FPGAの特徴である【ソフトエラー(SEU)耐性】について、3回に分けてご紹介していきたいと思います。
第2回は、【FlashROMとFlashベースFPGAの違い】によるソフトエラー(SEU)耐性についてご説明します。
FlashROMの特徴
FlashROMは広く汎用的なストレージとして利用されており、一般的になっています。FlashROMはFlashセルそのものに値を格納しデータを保持しています。この項ではFlashROMの方式や構造を簡潔にまとめてみました。
フローティング・ゲート方式 / チャージ・トラップ方式
- フローティング方式は、SiO2(二酸化ケイ素)に挟まれたPolySi(ポリシリコン)膜に電荷をチャージすることによってデータを保持します。
- チャージ・トラップ方式は、フローティング方式のPolySiをSiN(シリコンナイトライド)に置き換え、SiNの電化捕獲セルに電荷を蓄える方式です。
SLC、MLC、TLC、QLC
- SLC (Single Level Cell)は、1セルあたりのビット数が1ビット、Hi or Lowで2値を表します。
- MLC (Multi Level Cell / MLC-2)は、1セルあたりのビット数が2ビット、11~00の4値を表します。
- TLC (Triple Level Cell / MLC-3)は、1セルあたりのビット数が3ビット、111~000の8値を表します。
- QLC (Quad Level Cell / MLC-4)は、1セルあたりのビット数が4ビット、1111~0000の16値を表します。
NOR型 / NAND型
NOR型は、全てのセルがビット線とソース線に接続されます。一般的にシリアルFlashとよばれ、高い信頼性が求められるアプリケーションで使用されるこが多いと思います。しかし、半導体プロセスの微細化にともないソフトエラーなどが無視できないレベルに達したため、現在ではNOR型FlashでもECC(エラー訂正)の利用が必要と言われています。NAND型と比較しReadが高速な一方、大容量に向かない、Writeが遅いなどがデメリットになります。
NAND型は、ページ数分のセルが直列に接続されます。一般的にUSBメモリーやSSD、携帯電話などのモバイル機器などの記憶装置として使用されることが多いと思います。NOR型と比較し大容量、低コストと言われている一方、記憶内容の保持期間が短く、劣化が進み易いというデメリットが知られています。

図1 NOR型とNAND型
FlashFPGAの特徴
ここではFlashベースFPGAの構造をご紹介します。
FPGAのFlashセルは一般的なフラッシュ・メモリーのFlashセルとは異なり、配線構造のスイッチとして機能します。図2にMicrochip FPGAのFlashセル構造の代表例を示します。構造的にはいわゆる2TタイプのFlash構造になっており、フローティング・ゲートを共有し物理的な大きさも兼ね備えています。“Sense”側のFlashセルはプログラム(ライト)の役割を担います。一方、“Switch”側のFlashセルは論理動作(配線スイッチ)の役割を担っています。

図2 FlashベースFPGAのセル構造
次にFlashベースFPGAのFlashセルとFPGAのロジックセル(論理セル)の関連性をご説明します。図3のようにMicrochip社のFlashベースFPGAは他社SRAMベースFPGAと異なり、配線構造の交点が直接Flashセルになっています。

図3 FPGAの構造
FlashROMとFlashベースFPGAの違い
ここまでFlashROMやFlashベースFPGAの構造や方式を解説してきましたが、FlashROMとFlashベースFPGAの違いを整理したいと思います。それぞれの違いを簡潔にまとめると、
- 構造の違い:NOR型やNAND型のFlashROMとは構造が異なる。
- 方式の違い:Flash ベースFPGAでは、例えば2T Flashセルなどの採用でチャージされる電荷が多いなど、独自の造り込みがされている。
これらの違いから、FlashベースFPGAのSEU耐性が高いことがわかると思います。
SEU耐性
ここまでFlashROMやFlashベースFPGAの構造や方式を解説してきましたが、それぞれのテクノロジーがSEUに対しどのような耐性をそなえているか表1のようにまとめてみます。Microchip社FPGAではSEUに対し高い耐性を備えています。一方、SRAMベースFPGAではSEUによる影響を受けやすい構造であるといえます。FlashROMのNOR型は古いプロセス技術でSEU耐性が高いと言われていましたが、微細化の進んだプロセスではSEUが無視できない領域に入りECCを搭載するなど対策を施しSEU耐性を維持しています。NAND型では、一般的にソフトエラーが起こることを前提にECCの搭載やソフトウェアでの対策などを盛り込むことが前提になっていると考えられます。
テクノロジー |
SEU |
Flash ベース FPGA |
未検出 |
SRAM ベース FPGA |
検出 |
NAND (MLC) |
脆弱 |
NAND (SLC) |
未検出 |
NOR |
未検出 |
表1 SEU耐性
まとめ
FlashROMとFlashベースFPGAの違いは理解いただけましたでしょうか?
それぞれの違いを簡潔にまとめると、
- 構造の違い
- 方式の違い
これらの違いから、FlashベースFPGAのSEU耐性が高いことがわかると思います。
以上、【FlashROMとFlashベースFPGAの違い】でした。
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