Microchip社 不揮発性 FPGAの特徴 ~低消費電力編~

Microchip 社 不揮発性 FPGAの特徴である【低消費電力】について、3回に分けてご紹介していきたいと思います。

第1回では、Microchip社 不揮発性 FPGA が【なぜ低消費電力か?】について説明していきたいと思います。

低消費電力のメリット

FPGAと発熱が切り離せない問題になっている今、低消費電力FPGAの需要が高まってきています。

FPGAの消費電力が小さいことで下記のようなメリットがあります。

  • 熱設計問題の解決
  • ヒートシンクやファンなどのBOMコスト削減
  • 消費電力削減による電源周りのBOMコスト削減

 

Microchip社のFPGAを使用する上でのメリットのうち、最大のメリットが低消費電力になります。

これからMicrochip社のFPGAがなぜ低消費電力なのかについてご紹介していきたいと思います。

なぜ低消費電力なのか

Microchip 社 FPGAが低消費電力である主な理由として下記の2点が挙げられます。

 

1. Flashベーステクノロジーによる低消費電力化

2. Transceiverの最適化

 

まずは、1. から説明していきます。

 

1. Flashベーステクノロジーによる低消費電力化

はじめに、PLDは以下のテクノロジーに大別されます。

 

a. アンチヒューズ

b. 紫外線消去型 (EPROM)

c. 電気的消去型ROM (EEPROM、Flashメモリ等)

d. スタティックメモリ(SRAM)

 

c、dは現在のFPGAで広く利用されているプログラミング・テクノロジーになります。

次にFPGAの配線テクノロジーの比較を下記に示します。

図1 FPGA配線テクノロジーの比較
図1 FPGA配線テクノロジーの比較

SRAMは揮発性になるので、外付けコンフィギュレーションROMからのプログラミングが必要になります。SRAMベースFPGAとFlashベースFPGAでは、セルの構造の違いから後者の方が消費電力は低くなります。それぞれ、セルの構造がどの様に違うのか?競合SRAMセルとMicrochip社のFlashセルを比較してみます。

図2 競合SRAMセルとMicrochip Flashセルの比較
図2 競合SRAMセルとMicrochip Flashセルの比較

SRAMセルの構造を見ていただくと分かるように、1つのSRAMセルを構成するのに、6つのトランジスタを使用しています。それに比べてFlashセルは1つのトランジスタで構成されています。SRAMセルの各トランジスタの漏れ電流は、Flashセルの6倍以上となり、製造プロセスによる漏れ電流の違いも含め、結果として非常に高いスタティックの消費電力となります。これが、SRAMベースFPGAとの違いであり、FlashベースFPGAが低消費電力である大きな理由の一つになります。

 

ここで、「あれ?Microchip社以外のベンダーでもFlashベースのFPGAを持っているじゃないか」と思った方もいるかもしれません。その通りです。Microchip社以外のベンダーでもFlashベースFPGAは存在します。

 

しかし、FPGA内の構造が異なります。下記にFlashベースFPGAの構造比較を示します。

図3  FlashベースFPGAの構造比較
図3  FlashベースFPGAの構造比較

上記のように、他社のFlashベースFPGAではコンフィギュレーション用のメモリはFlashなのですが、論理セル / 配線の記憶素子についてはSRAMなのです。それと比較し、Microchip社のFPGAは、論理セル / 配線の記憶素子がFlashになっており、コンフィギュレーション用のメモリは不要となります。

 

先ほども述べましたが、SRAMセルとFlashセルでは消費電力に大きな差があります。同じFlashベースFPGAでもMicrochip社のFPGAの方がより低消費電力を実現できます。

 

さらに、コンフィギュレーションが必要ないことから、下記のメリットも得られます。

  • 高速起動
  • 突入電流の削減
  • コンフィギュレーション中の消費電力削減

 

下記にSRAMベースとFlashベースでの、電源投入後における立ち上がり時間と消費電力を図で示します。

図4 電源投入後における立ち上がり時間と消費電力の比較
図4 電源投入後における立ち上がり時間と消費電力の比較

SRAMベースに比べてFlashベースでは、電源投入時に発生する突入電流を削減でき、コンフィギュレーションが不必要なので高速起動を行うことができます。

 

続いて、2.についてですが、これは非常にシンプルです。

2. Transceiverの最適化

他社FPGAは、High end品で設計されたTransceiverをMidrange品にも使用しているため、高速な周波数帯をサポートするようにTransceiverは設計されています。つまり、Midrange品で使用する周波数帯においても電力を大量に消費してしまいます。

 

それに比べてMicrochip社のFPGAは、Midrange品で使用する周波数帯にTransceiverが最適化されています。例えば、Microchip社最新のミッドレンジFPGAであるPolarFireで見ると、Transceiverは最高周波数12.7Gbps動作に合わせて最適化され、低消費電力を実現しています。

 

百聞は一見にしかず。

ここまでご紹介した内容について、実際はどうなのか確認するために、消費電力を比較したグラフを下記に示します。

図5 消費電力比較 ※競合ミッドレンジFPGAと比較(同規模のデバイス)
図5 消費電力比較 ※競合ミッドレンジFPGAと比較(同規模のデバイス)

上記の通り、Microchip社のFPGAは他社と比較して最大50%ほど消費電力を削減することができます。Microchip社のFPGAは他社と比較してスタティック、Transceiver消費電力が圧倒的に低いことがわかります。

まとめ

Microchip社のFPGAが低消費電力な理由としては、下記になります。

 

1. Flashベーステクノロジーによる低消費電力化

  • スタティック消費電力が限りなく小さい
  • コンフィギュレーションROMが不要なことによる、突入電流の削減

 

2. Transceiverの最適化

 

さらに、低消費電力ということは、下記のメリットが得られます。

  • 熱設計問題の解決。熱にシビアな環境、また小型の密閉筐体内では威力を発揮!
  • ヒートシンクやファンなどのBOMコスト削減
  • 消費電力削減による電源周りのBOMコスト削減

 

以上、【なぜ低消費電力なのか】でした。