2021年9月30日、10月1日に開催したオンラインセミナー「Ethernet L2スイッチ設計セミナー 基礎知識編・応用編」で多くのご質問を頂き、その中からお客様からよく頂くご質問を厳選し回答をご紹介します。
ネットワーク製品において採用が進んでいるL2スイッチですが、そもそもどのような製品なのか、設計はどこから手を付けたらよいのか、迷われている方は多くいらっしゃいます。当日のセミナーでは、設計に携わる方に向けてL2スイッチの基礎知識はもちろん、活用していただきたい便利な機能などの応用まで、2日間にわたり以下のようなアジェンダでご説明しました。
【Day1 基礎知識編】
L2スイッチの基礎知識
ー導入(L2 Switchとは何?、ユースケース、基本動作PHYと比較)
ー構成(インターフェース、制御ライン、内蔵PHY有無)、ソフト処理ではなくハード処理をおこなう(遅延が少なくフルワイヤー)
L2スイッチのよく使う機能紹介
ーVLAN(Port Base VLAN、Tag VLAN、Wtag VLAN)
ーL2 Forwarding(ATUの流れ)
ーQoS(Igress Rate Limiting、Egress Sahping、Queue Control)
【Day2 応用編】
L2スイッチの応用機能紹介
ーCut through
ーTCAM(IPアドレスでの処理)
ー選定のポイント
ー内蔵マイコンソリューション(マイコンのあるメリット)
こちらのオンラインセミナーを見逃した方のためにオンデマンド動画をご用意しています。ページ最下部よりご覧ください。
基礎知識編
MACインターフェース、Lineインターフェースの意味合いを詳しく教えていただきたいです。
MACインターフェースは物理層のPHYの機能を内蔵していないデジタルのインターフェースとなり、CPUや物理層のPHY Device含めた他のDeviceと接続するとが可能なインターフェイス(SGMII, RGMII, USXGMIIなど)を指します。
Lineインターフェースは物理層のPHYの機能を内蔵したインターフェイス(Copper:1000Base-T, Fiber : 1000Base-Xなど)を指します。
Multi castを受けてMACアドレステーブルに一部のDAがない場合、floodingとなるのでしょうか?
MACアドレステーブルにDAがない場合、該当パケットはfloodingされます。
QoSですが、単純に優先度順に送信されるのか、それもとリングバッファの割り当て比率を変えているのでしょうか?
スケジューリングの設定によります。Strictスケジューリングであれば、高優先⇒低優先の順でパケット送信されます。
Weighted round robinという機能をサポートしているスイッチであれば、優先度の比率を調整することも可能です。
MACアドレステーブルはL2スイッチごとに作成するのでしょうか。スイッチ間で共有化したりするのでしょうか?
装置仕様に依存しますが、個別にテーブルを持つことも他スイッチと共有することも、スイッチの設定によって可能な認識です。
L2スイッチに接続されたデバイスはIPアドレスを認識せず、他のデバイスをどのように認識するのでしょうか?MACアドレスでしょうか?
L2スイッチで構築されたLANであっても、接続されたデバイス・機器はARP(Address Resolution Protocol)を用いて最終的に送り先のMACアドレスを知ることができます。
L2スイッチはMACアドレスとポート番号を紐づけたMACアドレステーブルを参照してパケットをスイッチングします。
IPパケット中のTOSフィールドは、当然L2スイッチでは参照されないという理解で良いでしょうか?
スイッチの設定次第で、TOS/COSフィールドを参照可能です。
MACインターフェースに互換性はありますか?例えばRGMII対応のデバイスとMII対応のデバイスは接続可能ですか?
接続不可です。同じMACインターフェース同士で接続ください。 ただし、RGMIIインターフェースを持つデバイスであればMIIインターフェースも対応しているケースが多いです。
QoSについて、Priorityはサービスごとにどのように設定すればよいでしょうか?
L2スイッチでは、ポート単位、MACアドレス単位やパケット単位(TOS/COS/PCP)など、Priorityを参照するための様々な設定があります。
どちらのPriorityを参照すべきかは、開発するアプリケーションに最適な方法をご選択ください。
VLANタグを入れた場合、MTUが変わってしまうのでしょうか?
はい、ご認識の通りです。一般的なイーサネットフレームの最大サイズは1518 bytesですが、VLAN tag挿入時1522 bytesになります。
L2スイッチはどのようにTSN対応すればよろしいでしょうか?
TSNは複数の規格をまとめた総称のため、始めにどの規格を満たすべきかをご確認ください。
規格によっては、外部CPUやソフトウェアが必要な場合がありますので、
L2スイッチ、CPU、ソフトウェア含めて、どのデバイスでどの機能を実現するかなどをご検討いただければと思います。
応用編
FCSに入っているデータは単純なチェックサムなどでしょうか?
はい、ご認識の通りです。
Store and ForwardではFCSエラーの際に、L2スイッチで破棄するとのことですが、破棄せずに転送などできたりしますでしょうか?
一般的なスイッチであれば、FCSエラーはMAC層でチェックするため、FCSエラーのあるパケットは、受信時に破棄されます。
なお、FCSエラーチェックを外す機能を持つスイッチもあります。
FIFOだとなぜ異なる速度リンク間で転送できないのでしょうか?リオーダーを許容できないということでしょうか?
一般的にFIFOでは大容量領域を確保していないため、通常100M⇔1Gなど速度差があるケースでは対応できません。
Store and Forward、 Cut throughは一般的に設定変更できるものでしょうか?
はい、一般的な機能のため、Cut throughに対応したスイッチは多くリリースされています。
世の中のスイッチでほとんどがStore and forwardかと思いますが、Cut throughのスイッチはどのようなアプリケーションで使われるのでしょうか?
パケットによってレイテンシに差が出ると問題になるようなリアルタイム性が求められるアプリケーションに使用されます。
なぜ産業用途ではデイジーチェーンが一般的なのでしょうか?
工場ラインで使用されることが多く、ラインが数百メートルに及ぶことが多いため、そのようなケースでは、デイジーチェーンでネットワークを構築することが多いです。
L2スイッチにTCAMはいつ頃から実装されるようになったのでしょうか?
L2スイッチは1990年頃に普及し、当時はTCAMがMACテーブルに使用されていました。
その後、安価なSRAMベースで実現できる方法が開発され、エンタープライズやSOHOなどのネットワークでは、TCAMではなく、SRAMベースのL2スイッチへ移行した経緯があります。
キャリアネットワークやデータセンターなどで使用される大型のL2スイッチでは、TCAMは使用され続けています。
ただし、昨今、エンタープライズやインダストリアルなどのマーケットにおいても、ユーザー定義型もしくは特殊な要求仕様が増加したため、10年程前から小型のL2スイッチでもTCAMをサポートする製品が増えてきています。
L2スイッチインターフェースのさらなる高速化(25G対応など)の展望など教えていただきたいです。
大容量通信が要求されるデータセンター・キャリア向けのDeviceであれば既に25G,100G,400Gなどのインターフェースに対応しています。
マイコン内蔵スイッチICのご紹介がありましたが、PHY ICも内蔵されているモデルもありますでしょうか?(「スイッチIC(マイコン内蔵)→トランス→RJ-45」と接続できるようなもの)
はい、ございます。Marvell社の多くのL2スイッチはマイコンおよびPHYを内蔵しています。
FCSエラーがないにも関わらず、パケットが壊れるケースもあるのでしょうか?
パケットが伝送路上でビット化けを起こしたケースであれば必ずFCSエラーになります。
セミナーを振り返りたい方にはオンデマンド動画もあります。
質疑応答の一部を厳選しご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。セミナー本編はオンデマンド動画も準備しています。ぜひ今後の参考にしていただければ幸いです。