前回の記事で、車載製品をあつかうメーカーには“FPGAの導入”も検討材料の一つとして持つことをおすすめしていることを紹介しました。

 車載製品におけるトレンドから、OEMの要求を実現するにはSoCCPUといった従来の半導体では対応が難しくなると予想しています。

一方で、トレンドが加速すればするほど、FPGAを導入することでメリットが出るケースは増えていきます。


上記記事の解説にて、FPGAの導入によるメリットの可能性をご理解いただけたと思います。

しかしながら、メリットがあったとしてもF「PGAの導入が本当に現実的なのか?疑問に感じている方もおられるのではないでしょうか。

お客様のなかには、FPGAは「非常に高額」「量産には向かない」「消費電力が高すぎる」などのマイナスな認識をお持ちの方も少なくありません。

ところが、近年FPGAのデメリットと導入におけるハードルは、実のところかなり改善されています。車載製品においても導入は十分に現実的です。

今回の記事では、お客様からよく聞く“FPGAの古い認識”に対して、“現状を解説”します。
「導入検討が現実的に可能か?」の判断材料になさってください。

FPGAのマイナス面は過去のものになりつつある

1.価格が高すぎる半導体

FPGAは高額であるというのが、デメリットとして真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。
SoCやCPUといった従来の半導体が1個あたり数百円ほどなのに対し、FPGAは数万円以上すると思われているお客様もいらっしゃる印象です。
しかしながら、近年はスマートフォンや家電を中心にあらゆる分野の製品にFPGAが広がり、市場に出回る量が増えたことから昔に比べて単価は
大きく下がっています。
従来の半導体と比べての価格差は縮まってきていますので、たとえ単価自体が多少高くても“FPGAの柔軟性”を活かしてトータルの設計開発費を
抑えられる可能性が十分に出てきているのです。例えば、今までは車のモデルごとに違う半導体を使っており、それぞれに基板開発・改版が必要
だったとします。
FPGAを導入すればモデルが違っても同じFPGAを使用できますので、基板開発・改版が一度で済みます。結果、“トータルで見たときのコスト” は、
従来の半導体を使っていたときよりも、むしろ抑えられたというケースも十分ありえるのです。
このように“FPGAは” 導入が現実的でないほど高額というケースは、少なくなりつつあります。

2.量産には向かない評価用の半導体

FPGAは「回路データを書き換えられる」という特長から、実現したい機能を事前検証する際にも適している半導体です。
例えば、OEMからの要求を実現できる最適な部品を選ぶために、「どのような半導体の回路で実現できるか」繰り返し試すといった使い方ができます。
車載業界においては特にFPGAは評価用というイメージが強い印象があり、量産には向かないと考えているお客様が多いと感じています。
柔軟性を活かして繰り返し検証ができるが、その分、単価も消費電力も高いので量産には使いにくいと考えておられるのではないでしょうか。
確かに、前述の通りFPGAは、もともと非常に高額な半導体でした。柔軟性という特長も量産には必要なかったでしょう。
一般的にもFPGAは量産に使うような半導体ではなく、高単価かつ少量生産の産業機器や通信機器に使われていたぐらいでした。
しかし、近年はFPGAの価格が大きく下がっています。また、トレンドから「FPGAの書き換え可能」という特長が求められつつもあるのです。
例えば、市場の変化や他社との差別化のため、カスタマイズやモデルチェンジが頻繁に行われるようになってきています。
それらにスピード感を持って対応する必要がありますが、ASICでは書き換えができないため、市場の変化への対応ができません。
仕様に沿ったASICをゼロから数年かけて設計するほどの時間的余裕がないケースが増えていくことが考えられます。

今の時代、FPGAは評価用に適しているのはもちろん、“スピード感ある開発設計” が求められるトレンドから、書き換え可能という特長が量産としても
メリットが大きいケースは増えていくでしょう。

3.消費電力があまりにも高い半導体

FPGAは消費電力が高すぎるという認識も、多くのお客様が持っていると感じます。

特に近年は、SDGsやカーボンニュートラルの観点から、消費電力の低い半導体の使用を求められる傾向にあります。

FPGAは消費電力が高いと思っているお客様にとっては、ますます検討が遠のく状況にあるように思います。

確かに、FPGAはその柔軟性から、どうしてもSoCやCPUといった従来の半導体より消費電力は高くなります。

しかし、FPGAのプロセス進化と技術革新により、バッテリーで駆動するようなスマートフォン、腕時計の量産製品にもFPGAが採用される時代に
なってきています。

従来の半導体に比べるとまだ消費電力は高いものの、導入検討に値するレベルの低消費電力化を実現できる可能性は十分にあるのです。

実際、マクニカでもFPGAの柔軟性というメリットを上手く活用することで、従来の半導体と比べて変わらないほどの消費電力を実現できた
ケースがあります。

4.なにより設計開発のハードルが非常に高い

これまでの解説で、近年FPGAのデメリットが改善されてきており、むしろメリット面が大きくなってきていることをご理解いただけたと思います。
しかし、実際に導入するとなると、設計開発が大きなハードルだと思われるのではないでしょうか。
確かに、FPGAの設計開発では、FPGA専用の言語を使う必要があることからもハードルはどうしても高くなってしまいます。
自社に設計開発の経験があるスタッフがいないケースがほとんどでしょうから、「開発フローも、開発期間もわからない」という状態からのスタートに
なります。
そこで近年は、開発・設計経験のないメーカーでも導入しやすいよう、パートナー会社で設計開発から検証までできる体制が整えられています。
マクニカでも、「ご要望をパワーポイント1枚程度にまとめていただくだけで」最適な設計開発をご提案し、検証までさせていただきます。
お客様の方では、「通常のハードウェア設計をするだけで」 FPGAを導入できます。

また費用面においても、ASICの初期投資に比べると、FPGAの外部委託開発費は圧倒的に安く済みます。
SoCの外部委託費と比べても、安く抑えられる可能性が十分にあるほどです。
実際にお客様から「SoCの外部委託費より格段に安い」と言われるほど、安くなったケースもあります。
さらに、FPGAは “同じ基板を転用する”などでトータルコストを安く抑えたり、さまざまな工夫ができる柔軟性の高さもメリットです。

FPGAを活用したコストメリットの検討も、マクニカでご提案させていただきますのでご安心ください。
FPGAに詳しいスタッフがいないメーカーにおいても、“設計開発のハードルもかなり低くなっている” のがFPGAの現状です。

ADAS・インフォテインメントなどで活用が進む

FPGAのデメリットや導入ハードルは改善されつつあり、トレンドからメリットも大きいため、車載製品での導入はすでに増加の傾向にあります。

実際に、どのような場面でFPGAが使われているのかイメージしていただけるよう、マクニカで提案させていただいた例を3つ紹介します。

・ADAS(先進運転支援システム)の例 [1]

複数のカメラのセンサーから出力された情報をFPGAで一つにまとめ、SoCへ送る方法を提案しました。

 

・インフォテインメントの例 [2]

SoCから出力されたデータをFPGAで分岐させ、3つのディスプレイに映像信号を出力する方法を提案しました。

 

・インフォテインメントの例 [3]

SoCから出力されたデータをFPGAで受け、FPGAでローカルディミングの処理と画像処理を並列して行い、ディスプレイに映像信号を出力する方法を提案しました。

いずれも柔軟性の高さを活かしてトータルの費用や電力を抑えられるよう検討させていただいております。

ぜひ、FPGAの現状を理解したうえで、“FPGAの導入”もご検討の際の選択肢の一つとしてご検討ください。

車載製品においてメリットが出やすい FPGA 「ネクサス」シリーズご紹介

最後に、マクニカが “車載製品” においておすすめする“FPGA”「ネクサスシリーズ」をご紹介します。
車載製品においてメリットが出やすいFPGAはいくつかありますが、そのなかでも特に優れた半導体の一つです。

特長1. AEC-Q100 ISO 26262認証済み

車載グレードに対応したFPGAは、デバイスとして “AEC-Q100の認証が完了” しています。
また、FPGAを設計する際に使用するツールのソフトウエアは、“ISO26262” の認証を受けたものを提供可能なため、デバイス・ソフトウェアともに “車載品質に準拠” したものを
使用できます。 

特長2 低消費電力

ネクサスシリーズには低消費電力を可能にする “FD-SOI” が採用されています。
高性能かつ小規模ロジックで他のFPGAに比べ消費電力が低く、小型パッケージなのも特長です。


「当ネクサスシリーズ」を紹介している記事もありますので、合わせて以下をご参照ください。

まとめ

今回の記事では、お客様からよく聞く、FPGAに対する下記4つの認識に対して現状をお伝えしました。

   1.価格が高すぎる半導体

   2.量産には向かない評価用の半導体

   3.消費電力があまりにも高い半導体

   4なにより設計開発のハードルが非常に高い

“FPGA” の単価は以前に比べて大きく下がっています。そのため、評価用はもちろん量産としてもメリットのあるケースが出てきています。
柔軟性を活かし、スピード感を持ってトレンドに対応できますので、今後ますます求められる場面は増えていくでしょう。
また、消費電力についても、従来に比べて下がっている傾向にあります。
設計開発についても、現在はパートナー会社で設計開発から検証までできる体制が整えられています。

このように、FPGAのデメリットや導入ハードルは改善されつつあります。ぜひ、FPGAの現状を把握したうえで、FPGAの導入も検討材料の一つとしてお持ちください。

 

本記事に関してご質問がありましたら、以下よりお問い合わせください。