電流検出は設計の「見えないボトルネック」
モーター制御、バッテリー管理、EV充電器、太陽光インバータなど、電力機器の設計に欠かせないのが電流センサーです。
電力制御・保護・モニタリングの要となるこのコンポーネントは、製品性能に直結する重要な役割を担っています。
実際、電動化や省エネルギー化の進展を背景に、電流センサー市場は年々拡大しています。
DATA BRIGE社の調査によると、世界の電流センサー市場規模は2024年に36億5,000万米ドルと評価されており、2032年までに124億6,000万米ドルに達すると予測されています(※1)。
※1出典:DATA BRIGE「世界の電流センサー市場の規模、シェア、トレンド分析レポート – 業界の概要と2032年までの予測」
世界の電流センサー市場の規模、シェア、トレンド分析レポート – 業界の概要と2032年までの予測
しかし、設計現場では次のような声が後を絶ちません。
・電流センサーの選定が難しい
・ノイズや発熱に悩まされる
・過電流検出が間に合わない
実は、電流検出は設計の中でも課題が見えにくく、かつ製品性能を左右する「見えないボトルネック」になっているのです。
電流検出方式の比較
設計における最適な電流センサーを選ぶには、まず方式ごとの特長を理解することが欠かせません。電流検出には、主に3つの方式があります。
どの方式を選ぶかによって、検出精度・応答速度・発熱・絶縁構造・サイズなど、設計全体のバランスが大きく変わります。
そのため、用途や設計環境に応じて最適な方式を選定することが重要です。
1. シャント抵抗方式
被測定経路にシャント抵抗を配置し、シャント抵抗の両端の電圧を読み取ることで電流量を検出します。
2. 電磁式コア有り方式
磁気コアを用いて被測定経路の周囲に発生する磁力を集磁し、電流センサー内部の磁気センサーで電流量を検出します。
3. 電磁式コアレス方式
磁気コアを使用せず、基板上の電流パスやバスバーを流れる電流をIC内に引き込み、電流センサー内部の磁気センサーで電流量を検出します。
各方式のメリット・デメリット比較
ここでは、発熱・サイズ・絶縁・検出精度・実装性などの観点から、各方式の特長を整理します。
各方式のイメージ図
| 方式 | メリット | デメリット |
| シャント抵抗 | ・構造がシンプルで実績が豊富 ・部品単価が低く、コストを抑えやすい ・低電圧・小電流用途では高い測定精度が得やすい |
・通電損失による発熱が避けられず、熱設計・放熱対策が必要 ・大電流時は抵抗値の低減と精度確保の両立が難しい ・高電圧系では絶縁アンプやアイソレーターが必須となり、部品点数と設計工数が増加 ・ノイズ耐性が低く、スイッチング電源やインバータ用途ではレイアウト依存性が高い ・バスバーや非接触での電流検出ができない |
| 磁気式コア有り | ・非接触測定のため通電損失がなく、低発熱 ・電気的絶縁が容易で高電圧系に適用しやすい ・大電流の検出に対応しやすい |
・磁気コアを含むためサイズ・体積が大きくなりやすい ・磁気コアのばらつきや温度特性を考慮した設計が必要 ・外部磁界の影響を受けやすく、配置制約が生じる ・主にバスバー電流検出用途に限られるケースが多い |
| 磁気式コアレス | ・磁気コア不要により小型・省スペース化が可能 ・非接触測定で通電損失がなく、低発熱 ・電気的絶縁が容易で高電圧系に適用しやすい ・バスバー・基板配線の両方で電流検出が可能 ・磁気ヒステリシスがなく、温度・経年による影響を抑えやすい |
・磁界検出位置やレイアウト設計に一定の配慮が必要 |
このように各方式にはそれぞれ特長があり、どの方式を選ぶかは設計条件や優先すべき要素によって変わります。
設計者が抱える電流検出の課題とは?
電流センサーは製品性能を左右する重要部品である一方、設計者を悩ませる要素も多い分野です。
・選定が難しい
電流センサーには複数の方式があり、用途や環境に応じた選定が必要です。しかし、情報が断片的で、どれが最適か判断しづらいという声が多くあります。
・ノイズ対策が難しい
高周波環境や大電流を扱う設計では、ノイズによる誤検出が発生しやすく、制御の不安定化や誤動作につながります。
・発熱・絶縁設計が複雑
シャント抵抗方式では発熱が避けられず、熱対策や絶縁設計が必要になります。これが設計の複雑化や部品点数の増加を招きます。
・過電流検出が遅い
保護回路として機能するには、過電流を瞬時に検出する必要があります。応答が遅れると、回路や部品の破損リスクが高まります。
・実装の自由度が低い
サイズや形状の制約が大きいセンサーでは、基板レイアウトや筐体設計に制限が生じ、設計の自由度が損なわれます。
コアレス電流センサーがもたらす設計の自由
従来のシャント抵抗方式や磁気コア方式では、発熱・絶縁・実装レイアウトなど多くの制約がありました。
そこで磁気コアを使わずに電流を検出するコアレス電流センサーが登場し、これまでの制約を打破する選択肢として注目されています。
・ノイズに強い
差動測定に対応するタイプでは、外乱磁場をキャンセルし、安定した検出が可能。高周波環境でも誤検出を防ぎます。
・発熱が少ない
電流が直接センサーを通らないため、発熱がほぼなく、熱設計がシンプルになります。
・絶縁が容易
磁気検出による非接触方式のため、絶縁設計が簡素化され、安全性も向上。
・実装の自由度が高い
小型で薄型のセンサーが多く、バスバーや基板上の電流パスに柔軟に対応可能。設計の自由度が大幅に向上します。
・過電流検出にも対応
高速応答が可能な製品もあり、保護回路としての役割も果たせます。
このような特長から、コアレス電流センサーは次のような課題を抱える設計者に特におすすめです。
- 電源回路やモーター制御でノイズに悩んでいる
- EV充電器やインバータで高精度な電流検出が必要
- 絶縁設計や熱対策が必要
- 基板設計の自由度をもっと高めたい
- 過電流保護を実装したい
もっと詳しく知りたい、コアレス電流センサー
本記事では代表的な電流検出方式とそれぞれの特長・課題を整理しました。
次の記事ではInfineon社のコアレス電流センサーを取り上げ、検出原理(差動測定)・実装のポイント・製品ラインナップなど、設計に役立つ実践的な情報をご紹介しています。
設計の最適化を目指す方は、ぜひご覧ください。