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SiCとは?
SiCは既に広く認知されてきているので、ここでは一から説明せず簡単に触れたいと思います。SiCはSilicon Carbideの略で、日本語で言うと炭化ケイ素と呼ばれ、シリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物です。SiCはワイドバンドギャップ半導体の一つであり、バンドギャップは従来の半導体の原料となっているシリコン(Si)の3倍とも言れております。SiCに加え、次によく耳にするようになっているGaN(窒化ガリウム)もワイドバンドギャップ半導体の一種です。
では、バンドギャップが大きいとどんな利点があるのか、なぜSiCが注目されているのか、その辺りに触れていきたいと思います。
なぜSiCが注目されているのか
昨今、世界的にカーボンニュートラルの目標を掲げ、国として、一企業としても脱炭素に向けて活動していることもあり、自動車業界においては各カーメーカーがいつからガソリン車の新規販売を中止する、いつから新規販売車は全てxEVへ切り替える等、具体的な時期も踏まえて将来のビジョンを明確にしている状況です。
*xEV=ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)を指す
そうなると、とても重要になってくるのがxEVのバッテリーの高電圧化に対応できるパワー半導体です。従来のSiのパワー半導体でもxEVの基幹であるインバーターやモーターの駆動はもちろん可能ではありますが、バッテリー電圧の高電圧化、出力の大きいモーター駆動に必要な高電流、電力変換効率の向上、走行距離を伸ばすといったところにおいて、Siでは追いつかない部分も出てきています。
そこで注目されているのがSiCです。前段でSiCはバンドギャップがSiに比べて3倍も大きいという点を挙げていますが、バンドギャップが大きいとどういう利点があるのでしょうか。
バンドギャップは、「電子が存在できない領域の幅」と定義されますが、半導体の場合には「価電子帯の上部から伝導帯の下部までのエネルギーの差」と言われます。SiCのウエハが適用されているパワー半導体の主な役割は「電力変換」であるため、自動車を動かすようなインバーターやモーターの駆動にあたり、いかに「変換効率」を向上するかが極めて重要です。従って、導通損失とスイッチング損失を低減することが、パワー半導体の開発において肝になってくるポイントとなります。
また、電気自動車の急速充電時間を大幅に短縮するためには、パワー半導体の更なる高耐圧化と高電流化が必要になりますが、SiCは高いブレークダウン電圧を持っているためパワー半導体そのものの耐圧を上げることができ、それに伴い大電流が流せるようになります。更に、SiCなどを含むワイドバンドギャップ半導体はSiよりも熱伝導度(Thermal conductivity)が高いため放熱しやすいため、変換効率の向上のみならず、冷却機能の小型軽量化も可能です。EV車の一回の充電に対する走行可能距離は車体の重量が大きく影響してくるため、そういった点でも大きく貢献します。
SiとSiCの特性比較
一般的な比較として、バンドギャップ、ブレークダウン電圧、熱伝導率、動作温度についてSiとSiCを比較したグラフです。見ての通り、全ての項目にて優れた特性が見られます。その他にも、Siに比べSiCでは以下の特徴と利点があります。
- 薄いドリフト層
- 低いスイッチング損失
- 高いスイッチング周波数
- 速いスイッチングスピード
- 小さいゲートチャージ
- 小さい静電容量

SiCの用途と利点
上段でも説明した通りSiCには様々な利点がありますが、その利点が実際の車載システムにおいてどのようなメリットを与えてくれるのでしょうか。実際にいくつもメリットがありますが、特に大きく3つの利点があると考えています。
①高効率化
②電力密度の向上
③システムコストの低減
特に、①と②に関係してくる点について、SiCは高いブレークダウン電圧を持っているためパワー半導体そのものの耐圧を上げることができ、従来のSiのMOSFETやIGBTで実現していた800V辺りまでの耐圧を、SiCでは1200Vまで上げることができます。実際、車載充電器アプリケーションのPFC部にて、スイッチングデバイスを同じ使用数にてSiの650V耐圧IGBTを使用した場合と、SiCの1200V耐圧MOSFETを使用した場合を比較した際、平均のエネルギー損失をSiに比べてSiCでは50%下げられたという結果もあります。
また、③のシステムコストの低減については、まだSiCはSiに比べて価格が高いという点はありますが、例としてインバーターアプリケーションにおけるシステムコストを比較した場合、以下のようなデータも出てきています。特にEV車のバッテリーの価格は車体の最低35%を占めるとも言われているため、いかにバッテリーセルにかかるシステムコストを抑えるかが肝になっており、SiCを採用することにより電力密度が上がり効率も向上し、トータルのシステムコストを抑えることが可能になります。現状、SiCのパワー半導体単体ではSiの物と比較した場合は高価になっていますが、システムレベルで考えた時に費用対効果を発揮できるのがSiCです。

この大きな3つの利点が最終的に、自動車の肝となるパワートレインのコストとそれに伴うパワー半導体のサイズと重さを低減し、同じ走行距離範囲でバッテリー容量の節約につながります。
SiとSiCの使い分け
以下の分布図は一般的なxEVで想定されるアプリケーションにおいて、どのあたりのパワー半導体が使われるケースが多いかを示したものとなります。従来、出力が大きいものはIGBT、高いスイッチング周波数を求められるものはSi MOSFETと使い分けられていましたが、出力も大きく且つ高いスイッチング周波数を求められる場合はSiCが検討されることが増えています。

インフィニオン社では、低耐圧から高耐圧までのSi MOSFETの幅広いラインナップに加え、ディスクリート及びモジュールタイプのIGBTも多くの車載実績がありますが、近年の更なる自動車のxEV化の加速に伴いSiC MOSFETのラインナップを多く増やしており、長年の研究開発で培ったトレンチテクノロジーを駆使し、業界クラス最高のパフォーマンスと高品質を提供します。
インフィニオン社製 車載SiCの特徴
- 卓越したゲート酸化膜の信頼性
- クラス最高のスイッチング損失と導通損失
- IGBT互換の駆動(+18V)
- 閾値電圧Vth>4V
- 高い短絡耐性とアバランシェ耐性
- 自社工場での安定した生産と供給
- AEC‐Q101を超える信頼性試験の実施
- 複数のパッケージ展開
インフィニオン社製 車載SiC MOSFETのラインナップ
インフィニオン社では、750V耐圧と1200V耐圧のSiC MOSFET、および1200V耐圧のSiC MOSFET パワーモジュールを、さまざまなパッケージと構成にてご用意しております。
各ラインナップは以下のページよりご確認ください。
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