様々な分野で広がるワイヤレス充電

今日ではスマートフォン用のワイヤレス充電器が広く普及し、その市場規模も急激に増加しています。ワイヤレス充電を利用することで、より素早く、また給電口のインターフェースを考慮することなく充電することが可能となります。すでにワイヤレス充電は身近になっていますが、ウェアラブル端末やIoT機器、美容家電など、様々な製品分野においても今後さらなる拡大が予想されます。

本記事では、ワイヤレス充電の規格である「Qi」(チー)と、Qi v1.3以降の15W給電対応ワイヤレス充電に必須の認証ソリューションをご紹介します。

ワイヤレス充電が使用される場面

ワイヤレス充電で注目される規格 ~Qi~

Qi(チー)はワイヤレス充電の国際標準規格であり、WPC(Wireless Power Consortium)という、国際標準規格団体によって策定されています。
現在は主にスマートフォンの充電に使用されていますが、今後は様々なデバイスがQiに対応すると言われています。

Qiは2010年7月にQi v1.0がリリースされ、今日ではQi v2.0(Qi2)が最新です。Qiのバージョンの変遷は以下の通りです。

Qi v1.2

2015年10月にリリースされたQi v1.2にて、それまで5Wだった電力の上限が15Wまで拡張され、デバイスの充電がより高速で行えるようになりました。
加えて、デバイスとQi対応充電器が直接触れていなくても充電することが可能となったため、充電器の埋め込みなどが可能になりました。

15W給電のためには、給電側、受電側ともにEPP(Extended Power Profile)と呼ばれるプロファイルをサポートしている必要があります。

Qi v1.3 

2021年1月リリースのQi v1.3では、給電の上限は15Wのままですが、15Wの給電の際に事故防止のためハードウェアチップでの認証が必須になりました。

15W給電のためには、給電側に対して受電側が認証を行う必要があます。認証ができない場合は、ワイヤレス電力伝送レベルを5W給電へ落とすか、そもそも充電を受け付けません。

Qi2 - 現在の最新規格 -

WPCは2023年後半に、次世代のQi規格としてQi2(チー・ツー)を導入する予定です。

メインとなる技術の1つとして、磁力で充電位置を合わせる「Magnetic Power Profile」があります。これはAppleの「MagSafe」技術を用いており、充電効率の改善が期待されます。また、従来の平面同士以外の充電方式にも対応することが見込まれています。

現在時点で15Wの上限は据え置きですが、今後はさらに高出力である50Wの仕様も策定していくことが予定されています。

2024年1月追記)2023年11月にQi2が正式に公表され、対応充電器もリリースされてきています。

Qiの15W給電に準拠するために必要なこと

Qi v1.3以降の15W給電に対応するためには、「Product Unit Certificates」と呼ばれる公開鍵証明書をEPP対応充電器に含める必要があります。

15W給電対応のワイヤレス充電器を製造する場合、製造メーカーは”Qi Authentication Agreement for a Manufacturer”に署名し、CAサービスプロバイダーよりProduct Unit Certificatesを取得する必要があります。なお、署名はWPCメンバーのみ行うことが可能です。

加えて認証プロセスを保護するために、セキュリティ認証を受けたハードウェアチップの使用が義務付けられています。 また、鍵や証明書はセキュリティ認証を受けた製造環境でプロビジョニングすることが義務付けられています。

Qiに関するご質問や相談はコチラからお問い合わせください。

Qi 15W給電対応ためのハードウェア認証IC

Product Unit Certificatesを提供できるCAサービスプロバイダーであり、セキュリティICチップのリーディングカンパニーである、Infineon社が、Qi 15W給電対応ワイヤレス充電向けに提供している認証ソリューション「OPTIGA™ Trust Charge」をご紹介します。

OPTIGA™ Trust Charge

OPTIGA™ Trust Chargeは、セキュリティに特化したセキュア・エレメントと呼ばれるマイコンで、コモンクライテリア (Common Criteria) EAL6+の認証を受けています。またInfineon社は、WPCで指定された証明書や鍵の個別化や実装を、外部機関からセキュアであると認証された環境でOPTIGA™ Trust Chargに行うことができます。

さらに給電側のためのソフトウェアライブラリーも含んだターンキーソリューションとして提供可能です。




OPTIGA™ Trust Chargeの主な特徴は以下の通りです。

  • 最大10kByteのユーザーメモリー
  • USON10-2 パッケージ (3×3mm)
  • I2Cインターフェース
  • ECDSA P-256認証
  • NIST P-256, SHA-2 暗号化
  • - 20 ~ 85 °C / - 40 ~ 105 °Cの温度範囲

OPTIGA™ Trust Charge Auto

最大15Wの車載ワイヤレス充電用に最適化されたソリューションです。このソリューションは、AEC Q100 自動車認定も提供します。これにより、車載ワイヤレス充電器のメーカーは、最新の Qi 仕様に準拠した充電器を開発できます。

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