導入
生成AI技術にも、高速光トランシーバーが貢献しています。ただ、光トランシーバーの高速化に伴い、AIトレーニング・GPUクラウドネットワークの消費電力は増加しています。それにより、電力逼迫、発熱、冷却機構による機器の大型化といった課題があります。
それらの課題解決方法の1つとして、Linear Pluggable Optics(LPO)が省エネ・高速光トランシーバーとして現在注目されています。
本記事ではLPOについて紹介します。
Linear Pluggable Optics(LPO)とは?
LPOを紹介する前に、従来の高速光トランシーバーの動作を図1で説明します。
(1)従来の高速光トランシーバーは、ホストから送信された電気信号を受信した後、光トランシーバー内のDSPと呼ばれる信号処理ICで信号処理しています。具体的には、DSPが受信するまでに乱れた電気信号の波形を整える、といった処理を行います。
(2)DSPで信号処理された後、光電変換し、光信号が送信されます。
(3)同様に、光トランシーバーが受信した光信号を光電変換した後、信号はDSPで信号処理を行います。
(4)信号処理後、電気信号をホストに送信します。

図1
続いて、LPOを以下の図2を参考にし、説明します。
まずLPOには、DSPが搭載されておりません。そのためLPOは、ホストから送信された電気信号を受信した後、その信号を光信号に変換し、送信します。
同様に、LPOが受信した光信号は光電変換され、その電気信号をホストに送信します。

図2
つまり、LPOは信号の光電変換に際して、信号処理しない光トランシーバーです。一方で、信号処理無しでは、高速信号の通信に影響を及ぼす可能性があります。そのため、全ての信号処理をホストで行います。
以上がLPOの紹介です。続いてLPOのメリット・デメリットを紹介します。
Linear Pluggable Opticsのメリット
- 低消費電力:信号処理しないため、信号処理ICの消費電力が削減されます。
- 低発熱:消費電力が低いため、光トランシーバーの発熱も低下します。
- 低遅延:信号処理しないため、遅延が少ないです。
Linear Pluggable Opticsのデメリット
- ホスト依存・問題の切り分け:ホストの信号処理性能が十分でない場合、リンク品質が低下する可能性があります。また、問題が発生した場合に、その原因がホストにあるのか、LPOにあるのか、の特定が難しくなります。
- 伝送距離:信号処理しないため、従来の光トランシーバーと比べて、最大伝送距離が短くなります。
Linear Pluggable Opticsの動作デモ
Coherent社の2x400G DR4 LPO(開発中)を用いて、BERを測定する動作デモをJANOG55で実施しました。その動作デモについて紹介します。
使用機器
・2x400G DR4 OSFP LPO
・専用評価ボード(EVB)
・光ファイバー(SMF、MPO12コネクタ、長さ1m)
・専用GUIインストール済みのPC

図3
上記図のように、1つのLPOが1つの専用評価ボードに接続され、それぞれのLPOが光ファイバーで接続された系になっています。
専用評価ボードには、100Gbps/laneの信号生成器(PPG:Pulse Patten Generator)と受信器(ED:Error Detector)が搭載されています。この評価ボードと専用GUI用いて、Bit Error Rate(BER)を測定しました。

(実機の様子)
以下の表がBER測定結果です。100Gbps/laneの高速信号で適用されるFECのFEC limitが2.4E-4であることを考慮すると、通信に影響のないBERと考えます。
Ch |
LPO_1 |
LPO_2 |
1 |
6.16E-9 |
1.24E-9 |
2 |
1.34E-8 |
1.66E-9 |
3 |
1.68E-8 |
5.47E-9 |
4 |
1.37E-8 |
1.88E-8 |
5 |
5.23E-9 |
6.91E-10 |
6 |
4.21E-8 |
1.92E-8 |
7 |
7.32E-9 |
3.33E-9 |
8 |
2.75E-8 |
2.57E-8 |
※テストパターンはPRBS31を使用
まとめ
Linear Pluggable Optics(LPO)は、低消費電力、低遅延、低発熱という特徴を持つ光トランシーバーです。そのため、AIトレーニングやGPUクラウドのデータセンターにおいて、省エネ・高速光トランシーバーとして、注目されています。